「バズる新食品」の作り方教えます、消費者需要駆動型の商品開発を伝える「フーマー X アクセラレータ」

冒頭解説:
近年、アリババグループはデータ活用による消費者需要で駆動する商品開発を推進してきた。販売データ分析などから「どのような消費者が何を求めているのか?」という消費者インサイトを把握し、それをもとに新たな商品を作り出すという構想だ。まず衣料品や化粧品などで活用されてきた手法を食品業界で広く共有しようという試み、「フーマーX アクセラレータ」が発表された。


中国のマーラー(四川料理に代表される辛さと四川山椒の味)好きが大注目している調味料があります。涼拌口水雞(鳥肉の冷菜)、紅油牛肉(牛肉の辣油ソース)、串串香(串煮込み)といった人気の料理を簡単に作れてしまうという合わせ調味料です。

写真はフーマーがパートナー企業と共同開発した合わせ調味料「1醤成菜」シリーズ。加熱した食材をつけこむだけでOKというお手軽さが売りだ。

この商品は、アリババグループの生鮮スーパー「盒馬鮮生」(フーマー・フレッシュ)が山東省の食品メーカーと共同で開発したものですが、中国ではあまりなかったタイプの商品だけに、開発にたずさわった食品メーカー・新飛達(山東)食品有限公司の崔俊良(ツゥイ・ジュンリャン)総経理は「本当に売れるのでしょうか?」と半信半疑だったとか。ところが蓋を開けると消費者の評価は上々。手応えを得てすぐに第二弾商品の開発が始まりました。というのも、「簡単ですぐに作れる」「時間はないけど、パートナーのために料理を作ってあげたい」という若い世代のニーズにぴったりだったのです。

また、フーマーの開発能力とサプライチェーンを活用し、企画開発から発売までの時間を短縮し、商機を逃さなかったことも大きなポイントです。

フーマーは今、こうした新商品の開発を積極的に進めています。2020年だけでもパートナー企業と共同開発した商品は2万点を超えました。うち6000点あまりはフーマーのPB(プライベートブランド)として販売されています。

「フーマー X アクセラレータ」の誕生

フーマーは5月末、独コンサルティング企業ローランド・ベルガーと共同で報告書「2021年ステキな生活新トレンド 中国食品業界白書」を発表しました(以下、「白書」と略記)。席上、新商品開発を支援するインキュベーションセンター「フーマーX アクセラレータ」の設立が発表されました。

フーマーは長年にわたり、オンライン・オフライン双方の消費者に関するインサイトを積み重ね、イノベーティブな商品開発能力を磨いてきました。また中国の主要都市を中心に257の店舗(2021年3月末時点の統計)を擁し、来店したお客様はもちろんのこと、オンライン注文によるデリバリーを通じた販売チャネルを構築しています。つまり、研究開発から販売までのすべてにおいて、不断の改良を積み重ねてきた良質なビジネス・エコシステムを持っているのです。

このフーマーの能力をパートナー企業に提供するのが「フーマーX アクセラレータ」です。出資・融資、商品開発、サプライチェーン支援、マーケティングなどのあらゆるリソースを提供することで、パートナー企業が新たなブランドやプロダクトを生み出すお手伝いをいたします。そして、生み出された新商品の一部を、フーマーのPB(プライベート・ブランド)商品として採用させていただき、フーマー自身のブランド経営能力もレベルアップさせる。こうした戦略を構想しています。

「フーマーX アクセラレータ」はフーマーにとって2021年で最も重要なプロジェクトの一つです。アリババグループ・フーマー事業群の侯毅(ホウ・イー)CEOはこの事業の重要性を次のように説明しています。

写真はフーマーのCEO、侯毅。4月、上海市でのフーマー新業態店「盒晴晴」のオープンセレモニーに出席した。

「消費者の理解と消費トレンドの判断こそ、過去5年のフーマーの発展において、消費者の支持を得た重要な要因です。近年、多くの新興ブランドが誕生しています。しかし、すばらしい能力を持ちながらも、消費者理解に欠けているがため、あるいは販売やマーケティングのコストによって撤退するという事例も少なくありません。フーマーのリソースをパートナー企業に解放することで、より多くの優れた商品、ユニークな商品を作り出せれば、消費者にとってはメリットとなります。」

消費者ニーズ駆動による商品開発で変わる食品業界

消費者理解を軸に商品開発を進める。この新たな手法はすでに一部の企業の間に広がっています。「白書」では近年、食料品や飲料品の開発が大きく変わりつつあると指摘しています。

かつてのやり方では、消費者リサーチやテスト販売などを通じて消費者のニーズをくみ上げようとしつつも、その効果は限定的でした。結局のところ、開発者たちは自分たちの仮説から製品を開発することが多く、なかなか既存の発想から抜け出せません。ですから新商品の成功率はきわめて低く、開発期間も長引いてしまいました。

最新のトレンドはまったく違います。あくまで消費者を中心に据え、工業化された開発プロセスとデータ活用を組み合わせることで、消費者のニーズをスピーディーかつ正確に把握し、消費者ニーズに基づいて商品の企画や販売戦略を構築することができるようになりました。以前は「B2C」(ビジネス トゥ コンシューマー)、つまり企業から消費者に一方的に製品や情報が流れていましたが、現在では「C2B2C」、つまり消費者のニーズから企業が開発を進め、販売していくという新たなチャネルが実現したのです。

この手法では異なるターゲットにあわせて商品は細分化され、カスタマイズされます。現在の消費者ニーズは多様で、しかも変化に富んでいます。ニーズ、製品、チャネルの組み合わせの複雑さは指数関数的に増加しているのです。この状況に対応し、新たな新商品を短期間で大量に作り出すイノベーションが求められています。

トップブランドは自社が擁する販売チャネルリソースと開発力を活用し、時代に合わせた新たな取り組みを続けています。ある中国の飲料品ブランドは2019年に既存の開発部門とは異なる部局を立ち上げ、従来とはまったく異なるスピード開発に取り組みました。新たな商品を次々と開発し、販売しては修正を重ねていく。代理店や小売メーカーとの協力でテスト販売を重ねることで、短期間で大量のノウハウを蓄積することができました。

新興ブランドにも注目すべき取り組みがあります。消費者を細分化したターゲット群を設定し、革新的な商品と正確なマーケティングでビジネスチャンスをつかもうとしています。ある新興企業は販促キャンペーンを基軸とし、キャンペーンを通じてブランドイメージを構築していくビジネスモデルを展開しました。

また、他のブランドとは大きく差別化した商品を打ち出して、ごく一部の限定されたターゲットにしぼりこむことで、ニッチなファンから圧倒的な支持を得たブランドもあります。無糖、加熱機能付き容器などのすごい機能やハイテクを売りとしたブランドもあります。多くの新興ブランドは異なる手法で、まだ発掘されていないニーズを探り当てようとしています。彼らのチャレンジによって、中国の食品飲料品市場はますます多様化しつつあるのです。

フーマーの店頭

中国の食品トレンド・ビッグ5

では、中国食品飲料品市場ではどのようなニーズがあるのでしょうか?「白書」では5つのビッグトレンドを指摘しています。

1:高品質の消費:食品安全や新鮮さ、舌触りなどで要求水準が高まった。

2:健康的な生活:どんな健康的な成分が含まれているかに敏感で、低糖質低脂肪を歓迎。また添加物の多寡も注目される。

3:エコな理念:低炭素、有機食品、エコロジカルといったライフスタイルを支持。

4:珍しい体験:より珍しい製品、地域ごとの特徴を組み合わせたイノベーティブな商品、海外の美食が好まれる。

5:簡単な調理:ちゃんとした自炊、レストランのデリバリー、そのどちらとも違う、簡単に調理できる製品にニーズがある。

新鮮さを尊ぶのは世界の消費者に共通しています。しかし、どんなにおいしい食品でも、長期輸送によって、味が損なわれることはよくある話です。中国ではレストラン・チェーンの全国カバー率が向上するに伴い、食品加工の技術やコールドチェーン(低温物流体系)が成熟しつつあります。これに加えてサプライチェーンの整備と、消費者がより高品質の商品を求める消費アップグレードを追い風として、中国全土で新鮮かつ多様な食品が食べられるようになってきました。

こうした取り組みはまず卵や牛乳から始まり、さらに難度が高い肉類、野菜、果物へと拡大しています。毎日、新鮮な食品を売り場に並べるのは容易なことではありません。生産業者と小売店の正確な需要予測とリアルタイムの商品管理、販売管理などさまざまな能力の改善が必要でした。

商品の新鮮さを保つために、採用が増えているのが「産地直送」です。卸などの中間業者を経由せず、産地から直接届けることで、新鮮さを保たれるのです。また、産地直送モデルの普及に伴い、農家などの生産事業者は標準化、大規模化に取り組むモチベーションにつながっています。

さて、伝統的な食品メーカーでは賞味期限を延ばすために、添加物や防腐剤を使うことは至極当然の手法でした。しかし、消費者のニーズを見ると、賞味期限の長さに対する要望は次第に低下していることがわかっています。賞味期限が短くなっても、防腐剤を使わない健康的な製品が求められているのです。

フーマーの生鮮食品売り場。鮮度重視の産地直送商品が人気だ。

新たなビジネスチャンスを逃さないためのヒントとは

激変期にある食品業界の企業は、新たなビジネスの方向性についてアンテナを張っておく必要があります。白書では次のようなポイントを指摘しています。

1:新たな消費者群に注目せよ

Z世代(1990年代後半から2000年代前半生まれの世代)、そしてDINKs(共働きで子どもを持たない夫婦)などの2人世帯など、これまでにはなかった消費者群が出現しています。彼らのニーズを理解するとともに、彼らに新たなライフスタイルや価値を提案することが求められています。

2:販売チャネルのイノベーション

販売チャネルが変われば、消費者も一変します。オンラインとオフラインの融合であるニューリテールという新たな販売チャネルが出現した今は激変期であり、新興ブランドにとっては千載一遇のチャンスです。一方でリアル店舗にも新たな役割が生まれています。続々と誕生する新ブランドは消費者の目に触れる場所、テスト販売ができる場所を求めているのです。

3:工業化ノウハウによって潜在力を解放せよ

中小の民間食品・飲料企業にも優れた製品は数多くありますが、職人の経験と勘に頼っている、あるいはレガシーな製造方法のままとどまっているケースも少なくありません。レシピの標準化、製造工程の改革、サプライチェーンの改善といった工業化のノウハウを導入することによって、優れた民間企業の持つ潜在能力を高めることができます。

4:販売チャネル駆動から消費者駆動へ

新たなニーズをつかむためには新製品の開発ペースを速め、しかも成功率を高める必要があります。そのためにはメーカーだけではなく、小売事業者、サプライチェーンとより緊密に協力する必要があります。また、開発のあらゆる工程において、消費者のニーズを反映させる努力が必要です。系統化された消費者インサイトを通じてニーズをくみ上げる。つまり、消費者ニーズを開発に反映させる「C2B」のサイクルを構築する必要があります。

変革期を迎えた中国食品業界ですが、ここで取りあげたポイントを抑えることによって、企業は成長のチャンスをつかむ可能性が大いに高まるでしょう。

 

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解説・翻訳協力:高口康太、編集:AlibabaNews 編集部

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