マッキンゼーのシニアパートナーが解説する中国アフターコロナの消費トレンド

COVID-19の流行による影響が世界中に波及する中、新しい消費トレンドが芽生え始めている地域の先頭を走る国の一つは中国です。マッキンゼー&カンパニーのシニアパートナー兼、中国における消費者・小売業界のトップであるダニエル・ジップサー氏に、アフターコロナの消費トレンドに関する彼の見解を語っていただきました。

マッキンゼー&カンパニーのシニアパートナー兼、中華圏における消費者・小売業界セクターのトップであるダニエル・ジップサー氏

Q、中国の消費回復状況はいかがでしょうか?

A、中国の消費者が景気の先行きに自信を深めていることから、特に5月には、消費支出が大幅に回復しました。同時に、オフライン店舗の営業再開以来、企業による販促活動も活発化しており、デジタルエコシステムのプレーヤーもプロモーションを強化していることが、中国消費者の購買活動を促す要因になりました。

総じて、中国は相変わらず、世界経済の成長をけん引していくエンジンの一つであり、中国消費者はグローバルに事業を展開する企業にとってさらに重要な存在となっていくでしょう。

 

Q、COVID-19は中国の消費者行動をどのように変えましたか? 意外な領域でのデジタル変革の加速は見られましたか?

A、中国はデジタル変革の最前線にいます。デジタル・ネイティブの消費者が多く、斬新なデジタルソリューションや方法による消費活動にトライしたり、模索したりすることに熱心です。過去数か月間で、中国のデジタル変革は大幅に加速していることが窺えます。

COVID-19感染拡大の期間中、ライブコマースなどのデジタル・ライフスタイルが中国の消費者に急速に受け入れられたことから、ソーシャルメディアとビジネスの融合がより促進されました。 最も注目すべきは、ビデオ会議・オンライン会議の利用量が爆発的に増加し、職場におけるデジタルコラボレーションツールの活用が増えています。

 

Q、現在、中国で消費をけん引している消費者セグメントは? これらは感染拡大以降変化しましたか?

A、中国の中間所得層が継続的に増加し、都市化が進んできたことが消費支出の成長をけん引しています。中間所得層の世帯数は過去10年間で10倍以上増加し、昨年は1億8千万世帯を超えました。 中国の消費者は2019年と2020年に消費支出により意欲的になり、経済成長を支えているといえるでしょう。

また、初めてオンラインで買い物をするようになったシニア層を含め、一部の消費者層はよりデジタルなライフスタイルにシフトするようになっています。

感染拡大以前は、若いデジタルネイティブのセグメント、つまり「ヤング・フリー・スペンダース(消費意欲の高い若者)」が急増していました。 彼らは人口の25%にもかかわらず、総支出の60%を占めています。 彼らは自分たちの将来に自信があり、新しいテクノロジーデバイスであろうとプレミアムスキンケアであろうと、お金を使うことに、ためらうことはほとんどありません。

 

Q、現在、中国の消費者は何にお金を使っているのでしょうか。アフターコロナの消費において、彼らが最も考慮していることは何でしょうか?

A、COVID-19以前から起こっているトレンドは、感染拡大以降の過去数か月でさらに加速しています。消費者は、より高品質の製品とプレミアムなブランドを求めています。実際、私たちは危機の最中に「プレミアム化」が進み、プレミアムブランドが中国市場でシェアを獲得していることに驚きました。中国消費者はCOVID-19発生初期、消費支出を抑えていたため、ブランドの収益が下がりました。しかし、人々が再びお金を使い始めると、消費者はますます健康と安全を意識し、高品質や健康に良いプレミアムブランドにお金をかけることに意欲的になりました。食品や他のカテゴリーよりも、中国の消費者は健康への関心が高まっています。

また、中国消費者はユニークな体験を探し続けています。そのため、ブランドにとっては、オフラインとオンラインの垣根を取り除き、消費者をオムニチャネルの顧客体験に引き込むことがこれまで以上に重要になっています。

 

Q、COVID-19は中国の消費者のプレミアムブランドへの関わり方をどのように変えましたか?

A、裕福な消費者は急速に立ち直っています。 近年、中国消費者が世界ラグジュアリー市場の成長の50%をけん引しており、世界のラグジュアリーブランドに重要な影響を与えています。

特に若い中国消費者がこのカテゴリーの回復をけん引しています。 好調な店舗は、販売だけでなく、ソーシャルコマースを利用してブランドの認知向上や販促キャンペーンを行っています。 COVID-19はラグジュアリーブランドのデジタル化を加速させ、中国市場に進出したラグジュアリーブランドはオンラインで消費者と関わり合う方法をいち早く体得しました。 ブランドのオンライン化は、今や必須であると考えられています。

私たちが目にしているもう1つの大きな傾向は、国内旅行へのシフトです。これは、海外旅行が依然として厳しく制限されているために起こっている変化です。これまで、伝統的に世界的なファッション都市の旗艦店を通じて、ブランド体験を提供し、売上をけん引してきたラグジュアリーブランドにとっては非常に困難な状況でした。ラグジュアリーブランドは、中国国内の旗艦店でこのようなブランド体験を提供できるようシフトしていく必要があります。実際、今年の労働節(メーデー)のトップの旅行先は上海でした。そして多くの国内の観光客が旅行中に買い物をしました。

Q、COVID-19は中国の消費者の習慣を根本的に変えましたか?

A、昨今の中国の消費者の習慣に根本的に変化があるとは思いません。

中国の消費者がブランドに期待するもの、製品情報のリサーチ方法や購入方法など、既に起きている傾向やトレンドは、その流れを加速させ、さらに拡大しています。
中国消費者は今後も世界経済の成長をけん引する原動力となるでしょう。「次なる中国」は未だに中国なのです。

 

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