アリババの新商品イノベーションセンターは、多種多様な業界と提携したクロスマーケティングで新市場を開拓

概要:デジタル新商品開発プラットフォームであるTmall新商品イノベーションセンター(以下TMIC)は、世界中の100以上のグループ、何千ものブランドと協力し、中国の消費者ニーズに対応する革新的な商品を生み出してきた。特に今年は、開催中の天猫618ショッピングフェスティバル(以下、天猫618)において、様々な新しいライフスタイルに適応した新製品を多数生み出し、中国の消費者から注目を集めている。

業界を横断した新商品開発、「冷食火鍋」という新トレンドを発見

TMICは冷食火鍋の新トレンドを発見し、消費者インサイトを交えることで売れる商品の特徴を見定めた。

 「那街那巷」は、飲料・即席麺大手のブランドの一つで地元ストリートフードを再現しています。同社はTMICが提供する消費者インサイトを通じて、四川の名物料理「鉢鉢雞」(冷食火鍋)が近年消費者の人気を博しているということを発見し、1500人の消費者との3回の試食を経て、ついに「鉢鉢雞」の目玉であるラー油鶏スープベースを新商品として開発、発売しました。また、同商品は「何を具材にしても美味しい鍋」という新しい流行を生み出し、様々な材料を具材としてDIYすることを勧めています。発売から2カ月、学生やホワイトカラー労働者を含む若い消費者に人気の軽食になっており、3月の発売開始以来、Tmallの冷食火鍋部門で1位を獲得しています。

 大淘宝産業発展運営センター新商品・ショッピングガイド事業部長の謝煒は下記のように述べています。「TMICは、デジタルツールを駆使した新商品インキュベーションモデルの採用し、ブランドと協力することで、美容、パーソナルケア、アパレル、家電、食品など様々な業界で、新しい消費者トレンドを牽引する数々の新商品や新カテゴリーを生み出してきました。これらのコラボレーションは、ブランドに確実な成長と利益をもたらすと同時に、組織構造やサプライチェーンのデジタル化を促しています」

 2017年に設立されたTMICのTmall新商品開発システムは、消費者動向のインサイトから消費者との協力、発売前の新製品のテストや最適化まで、ブランドと密接に連携して新商品を生み出すインキュベーター機能と知識ベースの役割を果たしています。TMICは、研究室からデザイナー、最後に消費者の手に渡るという従来の研究開発モデルを、消費者が企業に対して商品やサービスに関するインサイトを提供するC2Bモデルへと転換し、新商品の成功率と開発効率を高めています。TMICは2021年末までに、VFコーポレーション、ロレアル、エスティ ローダー、P&Gなど世界150グループ、約2,000ブランドと提携し、C2Bモデルに基づく新商品イノベーションを推進しています。

ブランドと連携し、「アイケアと美容を同時に行う」新商品を開発

 日常生活の中で電子機器を避けることは難しく、特にデジタルネイティブと呼ばれる若者は目を酷使しがちです。アイケア商品の中でいかに目立ち若い消費者の人気商品になることができるか―。マッサージ機メーカーのbreo(倍輕鬆)は2年ほど前から考え始め、TMICとの連携を決めました。TMICとの連携を通じ、breoは、若者消費者の間には、目だけでなく目の周りの肌も保護するアイケア機器に対するニーズがあることを発見しました。また、アイケア機器購入者に対し多角的なクロスマーケティング分析を行い、消費者層を整理することで、美容や健康意識が高い女性を潜在的ターゲット層として特定しました。

 天猫618前夜に販売されたこの革新的な「ナノイオン水アイケア機器(中国語:納米水離子潤眼儀)」には、ヒアルロン酸が使用されており、目の疲れやドライアイなどの悩みを解消するだけでなく、目の周りの肌コンディションもメンテナンスできます。つまり、「アイケアと美容を同時に」という需要に応じることができるのです。製品デザインについても、ターゲットとなる消費者とともに検討を重ね、メガネ型デザイン、圧迫感ゼロ、メイク崩れない、いつでもアイケアができるという画期的なデザインとなっています。

 TMICとbreoは、見逃されていた「アイケアと美容を同時に行う」という消費者ニーズを見出し、その需要に応える新しいアイケア機器を共同開発、天猫618の前夜祭で販売を開始した。

消費者との共創を可能にするオンライン消費者調査プラットフォームを構築

 TMICが昨年、若い消費者がブランドとの共創に参加する重要な場として「Tmall造物プラネット」をスタートしました。消費者が注目する話題に関してアンケート調査を行っています。このような日々の対話を通じ消費者ニーズを深く掘り下げることで、新商品開発のための創造的なひらめきを得ることができるプラットフォームとなっています。

 昨年「Tmall造物プラネット」は、上海家化グループの国内ブランドであるLiushin(六神)と共同で、「66のクリエイティブなLiushinの使い方」キャンペーンを展開し、普段は蚊よけとして使用されている同社のフローラルローションをアロマセラピーに使用するなど、他ブランドとのコラボレーションを通じた新たなLiushin商品の使い方を募集しました。また、パッケージデザインについてもアイデアを募集しました。

 このキャンペーンはネットユーザーの間で熱狂的に支持され、数万人のユーザーが様々なアイデアを共有しました。キャンペーンを通じ、消費者のお茶や飲料に関する様々なアイデアに触発され、Liushinは中国のお茶のチェーンブランドLELECHA(楽楽茶)とコラボレーションすることを決めました。また、多くの独創的なアイデアの中から、新しいデザインの蚊よけ商品も開発され、近々発売される予定です。

「Tmall造物プラネット」は、上海家化グループの国内ブランドであるLiushin(六神)と共同で、「66のクリエイティブなLiushinの使い方」キャンペーンを展開

ブランドのイノベーションと新製品開発の効率化を支援するTMICの知識ベース

 エスティ ローダー グループのコスメブランドであるM.A.Cは、TMICで知識ベースを構築することにより、「限定版」「オーダーメイド」などのキーワードを含む口紅との関連性が高い要素を整理し、ハイエンドのカスタマイズ化粧品への需要を見出しました。同社の商品は「マット」「しっとり」といった化粧効果や肌感触に関する細かな消費者の要望まで深く追求しています。

 知識ベースからの消費者インサイトをもとに、M・A・Cは従来の口紅の概念を打ち破り、今年4月にマットで潤いを演出する黒い魔法の杖型の口紅を発売しました。同製品は高評価を得ており、順調な売上を記録しています。

 昨年、パナソニックは髪を乾かしながら保湿効果を得られる新しいドライヤーを中国で発売し、大きな反響を呼びました。 パナソニックの小型家電プロダクトマーケティングディレクターである周欣栄氏は下記のように述べています。「TMICの知識ベースから、多くのユーザーが髪を乾かす間にヘアケアもしたいというニーズを持っていることや、ドライヤーのヘアケア機能が消費者の新しい買い替え需要を生んでいることがわかり、ヘアケア機能付きドライヤーを販売しました」

 パナソニックのドライヤー「ナノイー(NA0H)」は、発売後、2021年の天猫ダブルイレブンにおいて、同価格帯のドライヤーの中でトップの売上を獲得しています。「中国市場での売れ行きは当初予想を上回り、非常に驚くべき結果をもたらしています」と周氏は述べています。TMICの知識ベースは、ブランドの商品開発サイクル全体の効率を大幅に改善し、3〜4ヶ月程度までに短縮することができるとの結果も出ています。

2017年に設立されたTMICは、Tmallでの消費者インサイトとクラウドインサイトを活用し、業界の消費者ニーズを深く掘り下げる。また、TMICはデジタルツールで新商品開発や新サブブランドのインキュベーションを支援し、R&D最適化とR&Dサイクル短縮を目指す。

原材料から始まる研究開発モデル

 現在、TMICはすでにサプライチェーンの川上、川下、さらには製造業の末端までに渡って、消費者需要を反映した商品の創造を支援しています。消費者ブランドだけではなく、BASFやGivaudanなどの国際的な化学原料メーカーとも連携し、ブランドが原材料を生かした新商品を開発する支援をしています。今年TMICは知識ベースのシステムをさらにアップグレードし、サプライチェーンの川上から原材料サプライヤーまでサプライチェーン全体の知識を蓄積し、より体系的にイノベーションを加速させることに注力しています。

 天猫618の開催を前に、TMICと世界有数のランジェリーブランドであるRegina Miracle社は、戦略的パートナーシップを締結し、デジタル生産研究所を設立しました。TMICはブランドと手を組み、同社の革新的な特許や技術を新商品や製品に適用し、商品化を加速させています。

 TMICはブランドとの協業に加え、大学とも協力して研究開発を進めており、今年上半期には上海東華大学や国際的なファッションブランドのカルバン・クラインとの革新的なコラボレーションを開始しています。上海東華大学の学生たちは、同大学のアパレル素材とデザイン分野の研究とTMICのトレンドインサイトを組み合わせて、新シーズンのカルバン・クラインのダウンジャケットをデザインし、Z世代の学生たちのセンスが必要とされる若者向け新市場に対応しています。

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