工場ライブコマースで生き残れ! 広東アパレル工場の逆襲

解説:
今、中国でブームの様相を呈しているのが、動画配信とネットショッピングを融合したライブコマースだ。インフルエンサーによる配信だけではなく販売店や企業などの参入が続くが、新たな注目を集めるのが工場ライブコマース。コロナで大打撃を負った製造業だが、消費者に直接販売できる新たな販売手法を復活の手段にしようと取り組んでいる。

新型コロナウイルス感染症は多くの企業を苦しめています。この苦境からどのように脱却するのか。アパレル工場が集まる広東省広州市番禹区南村鎮では「工場ライブコマース」を生き残りの道と考えています。20万平方フィートもの配信基地を整備し、100以上もの配信ルームを用意するなど、全力で取り組んでいます。

写真は番禹区南村鎮のアパレル工場

番禹区南村鎮は典型的な軽工業の街です。特にアパレル工場が集まっています。たとえば塘步東村には3キロ圏内に1,000社近い中小のアパレル工場が集中しています。例年どおりなら、旧正月休み明けには中国全土からバイヤーが集まり、春夏物の買い付けでにぎわいます。ところが今年は違います。もちろん、コロナの影響です。バイヤーがさっぱり来ないため、工場は材料と在庫が山のようになってしまいました。アパレル工場「広州戈諾伊服飾」のトップ、応梅瓏(イン・メイロン)さんは「春物はさっぱり売れない。夏物は生産すらできない。取引先もあわせれば、我が社の事業は2,600人の従業員の雇用を生み出しています。彼らをどうやって食べさせればいいのか、夜も眠れない日々でした」と振り返っています。

この逆境下で、応さんは新たなチャレンジに挑むことにしました。それが工場ライブコマースです。工場内のショールーム、約1,000平米を2日がかりで配信ルームに改装しました。そして毎日6時間の配信を始めたのです。するとどうでしょう、20日後には工場に積み上がっていた100万件もの在庫をすべて売り切ったのです。

「1回の配信で100万元(約1,500万円)以上が売れたこともありました。全体で見ても、売上は前年同期をやや上回る水準になりました。」

写真右は広州戈諾伊服飾のトップ・応梅瓏さん。工場ライブコマースの配信中

それまでライブコマースに懐疑的だった応さんですが、今では自らカメラの前に立ち、配信しています。最大で20万人もの視聴者を集めた配信もあります。多くの人々に「メイドイン広東」のアパレルを支持してほしいと訴えています。

 

工場ライブコマース配信基地を建設

同じく南村鎮のアパレル工場「元派服飾」の取締役・華男さんも、他社と一緒に、工場ライブコマースに取り組んでいます。「目前の危機を乗り越えるためだけの取り組みではありません。未来のデジタル化への取り組みを決定づける戦いなのです」と、華さんは言います。

そのためにライブコマース配信基地が作られることになりました。その建設は急ピッチで進み、着工から20日後には南村鎮工業エリアに20室以上もの配信ルームが完成。30日後には2万平米もの配信基地建設計画がまとまりました。4月末には100室近い配信ルームが完成しています。今後はサプライチェーン管理施設と物流施設も併設される予定で、工場ライブコマースのための完璧な拠点となります。

広東省ライブコマース協会の臥龍会長は次のように述べています。「番禹区南村鎮を含め、広東省のアパレル製品は質の高さで知られていましたが、オフラインの販売チャネルでしか売られてきませんでした。それが今年からオンラインでの販売が増えているのです。オンラインチャネルからの注文が殺到し、工場長たちはおおわらわですよ。注文がピークの時は日に2時間しか寝られないこともあります。」

アリババグループのC to Cマーケットプレイスであるタオバオのデータによると、今年3月期のライブコマースサービス「タオバオライブ」の地域別新規参入者数で、広東省は全国1位となりました。配信アカウントの数は前年からほぼ倍増しています。また、ライブコマースを導入した企業や組織の数も前年から倍近くにまで増えています。

写真は南村鎮工業園区の配信基地建設計画を練る関係者

産業帯の工場が新型コロナ流行下でいち早くオンラインに転換できるよう、タオバオライブは今年2月に誰でも参入できるよう規約を変更したほか、ライブコマースツールの無料開放、無料研修などを導入しました。こうした対策が番禹区を初めとする広東省の産業帯(産業集積拠点。同一業種の企業が集まった地域)にある企業のデジタル化を促し、工場ライブコマースが一気に飛躍する契機となったのです。

アリババグループは4月7日、中小企業支援の特別アクションプラン「春雷計画2020」を発表しました。デジタル化によって中小企業が目前の危機を乗り越えるだけではなく、未来の機会をつかむことを支援したのです。春雷計画2020の中で、デジタル化産業帯は重要な柱の一つです

アリババグループは今後、中国に売上100億元(約1,500億円)超の「デジタル産業帯ユニット」を10エリア作ることを計画しています。ですから、今後もタオバオは広東省との関わりを深め、広東省の産業帯企業に向けて、ワンストップのデジタル化ソリューション・サービスを提供していきます。そして、年間売上1億元(約15億円)を超える有力工場からなる「広東スーパー工場ユニット」の形成という目標に向かって進んでいきます。

 

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解説・翻訳協力:高口康太
編集:AlibabaNews 編集部

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