11月4日、⽇本メディア向け「天猫ダブルイレブン説明会」内容概要

アリババは 11 ⽉ 4 ⽇(⽊)、天猫ダブルイレブン・ショッピングフェスティバル(以下、「天猫ダブルイレブン」)の⽇本メディア向けオンライン説明会を開催しました。本説明会では、アリババ株式会社取締役の蔣微筱(ジャン・ウェイシャオ)及びアリババグループ Tモール・グローバル アジアマーケット事業開拓責任者の趙⼽(チョウ・カ)が登壇し、今年の天猫ダブルイレブンにおける⽇本企業に向けたアリババの取り組みや中国市場の動向などについて説明しました。パネル・ディスカッションでは、中国マーケティング・コンサルタント安田加奈子さんをお招きして、日本企業が中国市場に進出あるいは事業拡大にあたって直面している課題について提起し、蔣微筱と趙⼽とディスカッションをしました。説明会の詳細についてレポートをご覧ください。

1、アリババ株式会社 取締役 蔣微筱(ジャン・ウェイシャオ)による講演

写真はアリババ日本法人・取締役のジャン・ウェイシャオ


■今年の天猫ダブルイレブン概要

アリババグループは環境保全を目指す取り組みを強化しており、今年で13回目を迎えるダブルイレブンにおいても持続可能な発展を重視した取り組みを行う。

・本年のダブルイレブンのテーマの一つは「サステナビリティ」:本年の天猫ダブルイレブンにおいて、アリババは 「サステナビリティ(持続可能な発展)」「インクルーシブ(包摂性)」をテーマに掲げた。その一例として、今年のダブルイレブンでは、特設の「グリーンダブルイレブン会場」を設けている。この特設会場において、11月1日0時から節水効果の高いトイレを販売したところ、最初の1時間で2万5,000点が購入された。また、環境負荷の小さいグリーン家電も販売されたが、そちらは9時間以内に、12万点が購入された。

・天猫ダブルイレブンは新たな消費トレンドを浸透させる機会:ダブルイレブンとは、中国における国民的なショッピングのお祭りであり、企業にとって新しい消費トレンドを生み出し、浸透させていくタイミングでもある。また当社は、デジタル化を進行させ、消費者や企業に対するサービスを進化させる総力戦ともとらえている。当社は、本年の天猫ダブルイレブンを機に、日本企業の中国市場へのアプローチについてさらにサポートしていきたいと考えている。

 

■アリババが日系企業に提供するソリューション

新型コロナウイルスの感染拡大により、国境を越えた往来が激減し、日系企業と中国の消費者の接点も減少した中でも、アリババは日系企業に対し、中国の消費者との接触機会を提供している。

・天猫ダブルイレブンを通じ、中国の消費者へのアプローチをサポート:国境を越えた人の往来ができない中で、オンラインチャネルを通じて中国の消費者へのアプローチし、日本のブランドの認知度を高め、消費に繋げることは、当社のチャレンジだ。そして、そのチャネルの内、越境ECは極めて重要なものであり、ダブルイレブンは中国の消費者にアプローチするチャンスである。アリババグループの物流ソリューション企業である「菜鳥(ツァイニャオ)」の9月から10月までのデータを見ると、中国における保税倉庫の貨物の量は、対前年比で約286%増加した。それらの貨物には、日系企業を含む海外企業がダブルイレブンに向けて用意をしている在庫も多く含まれるだろう。当社は、ダブルイレブンを迎える日系企業に対し、マーケティング、物流、サプライチェーンなど、多方面にわたるサポートを提供する。

・ライブツアーを活用した中国の消費者とのタッチポイント創出:今年の9月、日本政府観光局(JNTO)の新しい中国向けの観光プロモーション施策が開始。これは、ライブツアーとECを融合した取り組みであり、ライブツアーで日本各地の魅力や名産品を紹介しながら、商品を購入することができるというもの。この施策に関して、当社の旅行プラットフォームである「Fliggy(フリギー)」などのサービスとノウハウを提供した。こうしたソリューションにより、これまで日本に来て商品を購入していた中国の消費者も、国内にいながら日本の製品を購入できるようことになる。

 

2、アリババグループ Tモール・グローバル アジアマーケット事業開拓責任者  趙⼽(チョウ・カ)による講演

写真はTモール・グローバル アジアマーケット事業開拓責任者 趙⼽

■中国消費市場のポテンシャルと海外ブランドへの需要

日系企業を含む海外企業は、中国の消費市場の成長や可能性に対して、強い確信と自信を持っていると考えている。

・中国の輸出入総額は昨年比で大きく増加:中国税関総署が発表したデータによれば、今年の5月までの中国の輸出入の総額は、約76兆元の規模に達し、対前年比で28.2%増加している。輸入の規模については、6.7兆元であり、対前年比で約26%増加した。

・海外企業も成長する中国市場に期待し積極姿勢:このような中国の消費市場の成長に対して、日系企業を含む海外企業は確信を持っており、今年のダブルイレブンに対しても積極姿勢であると考えている。過去1年間において、Tモール・グローバルに新たに出店した海外ブランド数は、対前年比で120%伸びた。そして、今年の天猫ダブルイレブンについては、87か国・地域から2万9,000のブランドが参加し、約130万の新たな海外の輸入商品が提供される。

 

■中国消費市場の近年の変化

近年、中国の消費者に生じている主な変化として、以下の2点が挙げられ、Tモール・グローバルもそうした変化に対する対策を講じている。

・ユーザビリティの向上を求める声の強まり:「中国国内で手に入らない、または手に入りづらいものを買いたい」という従来からある需要のみならず、「アフターサービスもしっかりして欲しい」「短いリードタイムで物を届けてほしい」といった声が強まっている。そこでTモール・グローバルとしては、数年前から物流の構築を始めとした様々な分野に対する民間投資を行ってきた。その結果、海外の企業の消費者に対するサービスを向上させることのできる環境が整ってきた。

・市場の細分化に対応するための直送システム:また、海外製品を好む中間層に関して、自分だけに合う商品を求める傾向が強まっている。このような市場の細分化という傾向を受け、企業としては、多種類の在庫を用意する必要がある。そこで、当社は、日本の倉庫に用意した在庫を中国の消費者に直送する体制を整えた(※3)。これにより、中国の消費者の細かい需要や変化に対応することができるようになる。そして現在、商品を注文してから1週間で到着するというインフラが整備された。

 

■Tモール・グローバルにおける消費トレンド

アリババグループが運営する越境ECプラットフォーム「Tモール・グローバル」における消費トレンドとして、以下の3点が挙げられる。

・コロナ禍を経て高まった健康意識:コロナウイルスの感染拡大によって中国の消費者に生じた最も顕著な特徴は、健康に対する意識の高まりである。Tモール・グローバルにおいても、健康食品及び一般医薬品(OTC)というカテゴリが成長している。

・環境意識の高まりと中古市場の勃興:輸入製品を好む若い消費者に顕著な特徴として、環境に優しいライフスタイルに対する関心も高まっている。それによる具体的な現象として、中古品マーケットの成長が挙げられる。中国における中古品市場の規模は、2020年時点で1兆元に達している。その成長速度は極めて速く、日系企業の取り組みとしても、今年日本の中古ブランド品のEC販売大手の「RECLO」がTモール・グローバルに出店し、目覚ましい実績を残している。

・音楽教育への投資の増加及び老舗日系企業の取り組み:教育分野にも変化が見られる。中国における教育に対する関心の高さは、従来より指摘されてきたが、音楽教育への投資も増えている。Tモールのデータによれば、中国における音楽機材、楽器の規模は約500億元に達しており、これは世界の楽器市場の2割以上に相当する。こうした状況を受け、日本の老舗の楽器メーカーが中国に進出する例もある。その一例として、1887年(明治20年)創業の老舗バイオリンメーカーである鈴木バイオリンがTモール・グローバルに出店した。

 

3、パネルディスカッション

■中国国産ブランドの伸長と日系企業の対応

中国に進出する日本企業の共通の悩みとして、中国国産ブランドが伸長し、日本ブランドが売れなくなってきているという課題感がある。中国ブランドはなぜここまで伸長しているのか。また、インバウンドによる接点を持てない中で、日本ブランドはどのようにマーケティング活動を行えば良いのか。

・中国消費者が好む商品の開発力およびカスタマーサービスの向上:現在の中国消費者の関心は生産国ではなく、商品自体が持つ本質的な魅力、例えばデザイン、品質、使い勝手、カスタマーサービスなどにシフトしている。日本ブランドを含む海外ブランドの皆様は、ぜひ商品自身の本質的な価値向上に注力していただきたい。中国のターゲット消費者が好むデザイン、マーケティングの好みを理解し、そこからどのように商品を開発するか、運営していくかを考えながら、ぜひ自信を持って中国市場に挑戦していただきたい。

・アリババは販売チャネルと物流ソリューションを日本企業へ提供:アリババとしては、Eコマースの直営店舗で販売してみたり、アリババ傘下の物流プラットフォームである菜鳥の仕組みを活用いただき迅速に中国消費者に商品をお届けしたりなど、サプライチェーンの変化に柔軟に対応できるようなトライアルを日本企業の皆様と一緒に取り組んでいきたい。

中国ブランド伸長の背景

・「世界の工場」から「マーケティング成熟国」へ:中国は元々「世界の工場」であったため、良い商品を生産する能力は持っていたが、マーケティング、プラニングといった上流が弱かった。ただこの数年、市場全体が伸びたことで、その上流の能力を身に着けた中国ブランドが増えた。彼らは中国消費者に好まれるデザイン、親しまれるマーケティング手法を熟知しているため、海外ブランドからは中国国産ブランドが伸びているように見えるのだと思う。

・トレンドに合わせた迅速な商品開発サイクル:商品開発の周期は商品カテゴリによって変わるものの、海外メーカーより短い周期であることは明らか。アパレルだと、約3ヶ月という期間で商品開発、生産、販売までのサプライチェーンのサイクルを回す成熟した中国メーカーが増えてきている。一方、海外メーカーは、その商品がもともとその各国の市場に向けてその商品を開発していることが多く、そのまま中国市場に投入してしまったり、機会を逃してしまっていたりするのではないか。

 

日本企業のマーケティング活動への見解

・中国ニッチカテゴリ市場の規模とポテンシャルに着目:数年前まで、「おむつ」などベビー用品カテゴリは、海外製品がほとんどのニーズを占めていた。確かにここ最近、そのカテゴリにおいても、中国国産ブランドが台頭している。ただし現在、ベビー用品やキッズ用品のカテゴリでも、キッズコスメ、ベビーのパーソナルケアといったよりニッチな市場も拡大している。中国は人口が多いため、このようなニッチなカテゴリでも3,000万人もの市場がある。中国の消費市場の伸び代は未だ十分大きい。

・Z世代の消費の多様化および環境に優しい商品への関心の高さに着目:中国消費者のニーズは今、多様性に富んでいる。若いZ世代が消費市場で影響力を伸ばし、より環境に優しい商品や、より自分らしさ表現できるニッチな商品に注目が集まっている。例えばJNTOとの連携では、日本の観光地を紹介しながら特産品を紹介するライブ配信を行った。紹介した商品の一つに、富士山の形をしたコーヒーのフィルターがあった。当初は売れると予想していなかったものの、日本を想像させる形と、紙ではなく繰り返し使える素材を活用するという環境に優しい技術が中国の消費者に受け入れられ、購入された。

 

■プラットフォーム間の相互アクセスへの見解と対応

現在の中国で進むプラットフォーム間の相互アクセスの解禁について、アリババとしては今後、どのような考えで取り組んでいくのか。

・消費者の利益につながる取り組みはアリババのコアバリューでもある:他社サービスとの相互アクセスによって最も利益を享受できるのは消費者であり、アリババが大事にしているコアバリューの一つは「顧客第一」。よって、相互アクセスの流れは非常に歓迎しており、積極的に取り組んでいきたい。

 

4、質疑応答

■中国越境EC業界で勃興する他社サービスへの見解

最近、越境EC事業を始める中国の他社もある。アリババの元社員が他社に転職してビジネスを仕掛けているといった話も業界内で噂されているが、そういった他社サービスが越境ECに力を入れていることに対して、アリババはどのように見ているか。

・マーケット需要の創出が第一:当社だけでなく様々な人や企業が、様々な切り口から消費者の需要を満たし、満足させれば良い。消費者が満足すればさらにマーケットが広がり、良い循環を回すことができる。中国のEC業界においては当社がいち早く取り組んでいた経緯もあり、知識や経験を豊富に持つ人材は確かに最も多く有している。だからこそ、もちろん他社がEC事業を展開するにあたり、当社の人材に声をかけることは理解できる。当社の創業者であるジャック・マーも以前言っていた内容も引用すると、市場の繁栄のために常に人材を提供し続ける場であることに対して当社はポジティブに捉えている。

 

■中国のシニア市場

市場をどのように見ているか。現在の状況と今後の展望についてお伺いしたい。

・近い将来中国は世界最大のシルバーマーケットに:当社は現時点におけるシルバー市場を重視するのは勿論のこと、未来に向けた投資と準備をしている。経済発展と高齢化の進行を見れば、中国は近い将来に世界最大のシルバーマーケットとなる。確かに、現在の中国におけるシルバー族は、若年層に比して、インターネット上における消費額が相対的に低い。しかし、10~20年後には、ECの利用に慣れた層がシルバー世代となり、ネット上で盛んに消費活動を行うことが予想される。

・日本の高齢者向けビジネスにおけるノウハウの活用:日本の高齢者に対する製品やサービスは成熟し、細分化も進んでおり、先進的と言える。日本にとって、今後高齢化の進む中国におけるシルバー市場は、サービスやノウハウを売り込むチャンスに満ちている。

・アクティブシニア層と健康重視層のいずれにおいても強みを発揮:中国のシルバー族を代表する層として、2つを挙げることができる。第一に、年齢を重ねても働きたいと考えるアクティブシニア。第二に、健康に対する関心の高い層。日系企業は、既に日本における2つの層に対するビジネスを展開しており、その細かなニーズを掴み、きめ細やかな商品やサービスを提供している。そうしたノウハウは、中国市場においても活かすことができるだろう。

 

■中国国外製品でトレンドの商品カテゴリ

中国国外の製品について、顕著な伸びを見せている商品カテゴリはあるか。またその要因は何か。

・本年最大のトレンドは健康志向であり、日系メーカーが先駆:健康関連分野で今年の最も大きなトレンドは健康志向。そして、この分野において、直近1年間で先陣を切っているのは、日系メーカー。日本の大手健康食品メーカーや一般用医薬品(OTC)メーカーがいち早く健康志向のニーズを捉え、ビジネスを展開した。

・カテゴリ内でのトレンドの変化、個性的で特徴的な製品が伸長:大きなカテゴリ上の変化はみられていないが、カテゴリ内におけるトレンドに変化が生じている。例えばコスメは、2年前からベビー用品を超えて最大のカテゴリとなった。当時、コスメカテゴリ内の人気製品は、基礎化粧品やスキンケアに集中していた。しかし、今年はクリーンビューティー、サロン系コスメ(ヘアケア、ボディケア)など、より個性的で、特徴的なコスメの伸びが早くなっている。

・キャンプなど趣味に対する投資が増加傾向:日常生活用品のみならず、自分の趣味に投資をする傾向が強くなっている。例えば、直近1年でキャンプがトレンドに。コロナ禍により遠出する機会は減ったが、近場への外出が増えたことが要因と考えられる。例えば、大手キャンプ用品メーカーのスノウピークの人気が高い。

 

■中国単身経済のトレンドと見通し

単身経済はどのようなトレンドがあるか。また今後の見通しは。

単身経済の背景は都市化の進行:都市化の進行につれて、婚姻率が下がり単身者が増えるのはアジア諸国の傾向の一つ。中国はもちろん、日本や韓国も見受けられる。

・日本の単身者向け便利グッズにチャンスあり:日本は、一人暮らしの効率を向上させる家事やキッチンの便利グッズ、アイデアグッズの開発が得意とされている。Tモール・グローバルに既に進出して人気を博しているブランドもある。日本は大都市の一人暮らしのライフスタイルは中国と近い部分もあるため、マーケットチャンスはあると思う。

 

■これから中国進出を検討している日系企業へのアドバイス

これから中国に進出していく企業に対して、何かアドバイスはあるか

・中長期の視点を持って軸を定める:中国消費者のニーズや購買行動は多様化している。流行している手法やニーズに飛びついてしまうと、コストや労力がかかってしまう。一つの情報を鵜呑みにせず、中長期の視点で何を主軸にしていくのかを定めて、実際の対策を調整しながら挑戦していくことが重要なのではないか。

・近年注力しているテストマーケティングのソリューションをぜひ活用してほしい:これまでTモール・グローバルは、そのプラットフォームと旗艦店(※1)のビジネスモデルを中心としてサービスを展開してきた。しかし、企業は中国消費者と直接やり取りをしなければならず、人材登用や投資のハードルが高かった。また2020年以降、コロナ禍で中国観光客が訪日できなくなり、中小ブランドが海外への販路を求めることも増えていきている。そのため当社はこの1~2年、よりハードルを下げて、初期投資を抑えながら、より簡単にテストマーケティングできる方法を模索している。例えば、Tモール・グローバルのチームが商品選定・販売・マーケティング・中国消費者への配送まで一括して運営を担当する卸売モデルのソリューションを提供している。直営モデル(※2)や海外直送モデル(※3)などが存在する。アリババのミッションは「あらゆるビジネスの可能性を広げる力になる(To make it easy to do business anywhere)」であり、創業時から中小ブランドをいかにして支援するかを重視している。そのための新たなインフラの開発は、これからも力を入れていく。

 

備考:Tモール・グローバルがブランドに提供するソリューション

※1:旗艦店モデル:ブランドが直接EC上に出店する小売モデル

※2:直営モデル(Tmall Direct Import):中国国内の保税倉庫に商品を保管する卸売モデル

※3:海外直送モデル(Tmall Overseas Fulfillment):中国国外の各ローカル地域(日本の場合は日本)の倉庫に商品を保管し、受注した場合のみ中国国内へ配送

詳細はこちら:https://www.alibaba.co.jp/service/tmall/

 

Tモールグローバル アリババジャパン インクルージョン サスティナビリティ 天猫ダブルイレブン 天猫国際 越境EC