お茶の国「中国」にどう広められるか。ネットとリアルの融合がカギに〜伊藤園の中国戦略〜


「14億人が住む中国の隅々にまで、我々のお茶を売っていく。」
日本を代表するお茶メーカー、伊藤園。お茶の母国とも言える中国で商品の販売を強化しているが、その志は高い。人口14億の中国の人々に伊藤園を知ってもらう、買ってもらう。そのためにはどのような取り組みが必要なのか?伊藤園国際本部長の柳友彦氏にお話をうかがった。

お茶の国・中国で日本のお茶は売れるのか?

中国はお茶の国だ。ティーやチャの語源はもともと中国語の茶(チャー)なのだという。もちろん、日本にも中国からお茶が伝来している。「もともとは遣唐使が持ち帰ったそうで、鎌倉時代にお茶を飲む文化が広がったと言います」と伊藤園の柳本部長は解説する。

今でも中国人のお茶好きは変わらない。2015年に流行語となった「爆買い」、すなわち訪日中国人観光客による日本商品の大量購入だが、その人気商品の一つとなったのが魔法瓶タイプの水筒だ。中国では多くの人が水筒に茶葉を入れて持ち歩き、一日に何度もお湯をつぎ足してお茶を飲む。中でも日本ブランドの水筒は冷めにくく、水漏れもしない、と人気なのだとか。これほどにも日々の生活にお茶が浸透し、飲み慣れている中国の人々に、果たして日本のお茶が売れるのだろうか……。

「それが意外なことに結構買って頂いています。今は入国制限で海外の観光客が少なくなりましたが、2019年には900万人も来ていただいた訪日中国人観光客の方々がドラッグストア等で、伊藤園の商品をよくご購入いただいておりまして」と柳本部長。

このインバウンド需要での売れ行きを、中国国内の販売につなげられないか。日本での「伊藤園」ブランドを、中国国内にもっと浸透させていきたい。そうした狙いから同社は今年6月末、アリババグループの越境EC(電子商取引)プラットフォームのTモールグローバルに旗艦店をオープンした。

伊藤園は2012年に現地法人を設立し、本格的に中国市場へ参入した。そして、中国国内の一般貿易として2018年8月にはTモール旗艦店をオープンし、自社直営店によるネット販売を開始した。一方、新たにオープンしたTモールグローバル旗艦店は、今まで中国市場で販売していなかった野菜飲料やペットボトルタイプ青汁など、日本のドラッグストアで販売している商品を、中国にいてもネット購入できるようにする試みだ。

「中国の方は野菜をよく食べますよね。だから今までは野菜飲料の必要性を感じておられなかったのではないでしょうか。実は以前の日本もそうでした。日本ではハンバーガーなどのファーストフードの普及に伴い、野菜を補う需要が生まれたという経緯があります。中国も食の欧米化が進んでいるので、子どもに野菜を食べさせるために!といった市場が生まれるとみています」(柳本部長)

もう一つの目玉商品である青汁もユニークだ。

「実は中国で青汁は日本の健康食品としてよく知られています。ただ、皆さんよくご存知のとおり、青汁は苦くて飲みづらい。そこで伊藤園では原料にこだわった、すっきり飲みやすいペットボトルタイプの青汁を販売しました。食事の際に一緒に飲んでいただき、健康をサポートする飲料になったらいいな、と」(柳本部長)

ネットとリアルの融合が鍵に

新型コロナウイルスの流行は全世界の人々に改めて健康の重要性を伝える出来事となった。伊藤園はまさに健康を切り口に14億人の巨大市場を攻略しようとしている。ただし、世界中の大企業が参入する巨大市場・中国での成功は容易ではない。

「Tモールグローバル旗艦店のオープンで、中国消費者のことがよくわかるようになりました。消費者がどういう検索ワードでネットショップにたどり着くのか、どういう方が何を購入されるのか、リピート率はどのぐらいあるのか。従来の小売店への卸売経由での販売では得られない情報を得ることが出来ました。このデータを分析、そして活用することが重要だと感じています」(柳本部長)

旗艦店を通じて、生の消費者データや反応を見ることで明らかになったことがある。

「今、痛感しているのは伊藤園というブランドがまだまだ中国全体に浸透していないという点です。特にECで重要なのはネットショップの訪問者をどれだけ増やせるか、そのためには各種の宣伝活動が必要です。その中でも特に力を入れているのが、KOLや網紅(キー・オピニオン・リーダー、インフルエンサーの意)※1によるライブコマース(動画配信とネット販売を融合させた販売手法)です。トップKOLの李佳琦さんに3回販売していただきましたが、その効果は絶大です。ある回の放送では1000万人の視聴者を集め、5分間の紹介で1万6000ケースが売れました。驚くべき販売力で、初めてのお客さまを獲得するチャンスになりました。今年のダブルイレブンに向けて、10月23日に実施した李佳琦さんによるライブ配信では、2,397万人の視聴者を集め、約5分間の紹介で36,000ケースを売り上げました。自社の旗艦店へのアクセス数も28万人を獲得しました。

大物KOLによるライブ配信の効果は売上だけではありません。配信後に私たちのネットショップへの認知度が向上し、配信後も継続的にアクセス数が向上します。訪問者数は李佳琦さんのライブ配信など大きなイベントがあるたびに、10人から20人へ、20人から40人へと階段式で増加していくわけです」(柳本部長)

伊藤園の中長期経営計画では、海外売上を全体の10%にすると目標を掲げている。重点的になるのが米国と中国市場。目標達成のためには中国での売上増は必須だ。

「そのためにもアリババとの協力を、EC以外でも広げていきたいと考えています。アリババは新型生鮮スーパーの盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)、大型スーパーチェーンの大潤發(RTマート)、中小零細店舗向けのB2B卸売販売チャネルの零售通(Lingshoutong、以下、LST)などオフラインの販売網も持っています。こうしたチャネルを活用していくことを考えています。

LSTには今年2月から参加しました。我々自らが三線都市、四線都市(中国では都市の規模ごとのカテゴリがある。三線都市、四線都市は地方の中核都市に分類される)と呼ばれるような地方都市まで販売網を築くことはきわめて困難ですが、LSTに商品を提供するとそうした地方都市の零細店舗にまで商品が並べることが出来て、とても魅力的に感じております。さらに商品がどの地域、店舗で売れたのか、自社商品の販売データを元に詳細がわかります。LSTで販売してみて、我々のお茶が中国の地方都市にもニーズがあるということがわかり、さらに自信につながりましたね。そしてデータを元に中国にはあまりなじみのない麦茶が売れていることがわかり、とても興味深く嬉しい驚きとなりました。」

柳本部長はこのようにアリババとの協力について振り返り、北京や上海だけではなく中国全土に伊藤園の商品を届けるという目標を語っている。

「アリババさんの協力を得て、14億人の巨大市場・中国の隅々にまで商品を届けていきたい。そう考えています。」

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