ゴリマッチョ以外もプロテインが飲みたい……はず、明治ザバスが中国消費者市場で挑む“仮説”検証

「全国民フィットネス計画2021~2025」
今年8月に中国政府が発表したアクションプランだ。「日常的にスポーツを楽しむ国民を全国民の4割弱にまで引き上げる」「自宅から15分以内に公園など運動できる場所を整備」「中国全土のスポーツ産業市場規模を5兆元(約88兆円*)にまで拡大」といった数値目標がずらずらと並ぶ。

デジタル先進国の中国らしいのが「スポーツバンク」なる制度まで盛り込まれていること。今年2月に浙江省金華市で先駆的に導入された制度だが、デジタル決済「アリペイ」から金華市スポーツバンク・ミニアプリを立ち上げると、ウォーキングやサイクリングなどのスポーツへのチャレンジや公営体育館でのチェックインによってポイントが与えられる。貯めたポイントで、景品に交換したり、映画チケットや商品券があたる抽選に参加できたりするという。

中国とスポーツといえば、国の栄光のために競技に専念しているアスリートのイメージが強かったが、近年では一般国民へのスポーツ普及に力を入れている。目的は国民の健康向上だ。今年発表された第14期5カ年計画では2025年までに平均寿命を1歳伸ばすという野心的な目標が取りあげられている。一方で、中国メガ・セールの天猫ダブルイレブン第1弾販売期間(11月1日〜3日)の集計データによると、サーフィン・水上スキー・ウィンドサーフィン関連商品の取引額が前年同期比で99.4%増加したなど、趣味としてのスポーツへのニーズの多様化も進んでいます。

「全国民フィットネス計画が代表的ですが、中国は今、国を挙げてスポーツを通じた健康増進に取り組んでいます。それを追い風にプロテインパウダー市場の拡大は続くと考えています」

越境ECのTモールグローバルでオープンした明治海外旗艦店

 

明治・海外事業本部輸出事業部の八木澤博正(やぎさわ・ひろまさ)専任課長は、プロテインブランド「ザバス」中国進出の狙いを明かした。中国調査企業・智研諮詢の報告書によると、中国のプロテインパウダー市場は過去5年で倍増し、2020年には16億8400万元(約295億円)に達したという。

ザバスは1980年にローンチした日本の老舗ブランドとして、アスリートからアマチュアまで幅広い人々に支持されてきた。品質や味の良さ、そして均質顆粒化製法という独自手法によって粉が溶けやすくダマになりにくい点も売りだ。日本の消費者から高く評価され、なんと17年連続でプロテインパウダー市場の売上日本一という圧倒的な実績を誇る。

昨年8月、アリババグループのECプラットフォーム「Tモール」に旗艦店をオープン、中国進出を果たした。

「日本ではナンバーワンのブランドですが、中国では挑戦者という立場です。かなり苦労しました」と八木澤課長は率直に話した。

中国市場への挑戦においては、規制や法律も日本とは違うこともありパッケージのデザインや訴求ポイントを工夫して主力商品であるホエイプロテイン(乳原料)を発売し、ランナーやフィットネス層をターゲットとしたプロモーションを中心に、多くの方々に試してもらう取組を続けている。

こうして中国市場での挑戦が始まったが、メーカーである明治にとって消費者に直接販売するのは初めての経験だという。ましてや文化も習慣も違う中国ではわからないことだらけだ。

 

女性向け大豆プロテインに勝機あり

中国消費者市場を理解し、仮説を立て、検証していく。そのため、新たに越境EC(電子商取引)に取り組むことを決めた。10月11日、アリババグループの越境ECプラットフォームであるTモール・グローバルにザバス越境EC旗艦店がオープンしている。

通常の輸出と比べると、越境ECは規制のハードルが低く、発売に必要な認可を得るためのコストが低い。さまざまな商品をまずは越境ECで販売し、消費者の反応を見ながらヒットの道を探っていく戦略だ。

越境EC旗艦店で最初に発売された商品は、大豆を原料としたソイプロテインパウダー。その狙いについて、越境EC事業を担当している、明治・海外事業本部輸出事業部の中村文香さんは次のように話している。

明治・海外事業本部輸出事業部の中村文香さん

 

「ともかく筋肉を大きくしたい!という、いわゆるゴリマッチョ的な方以外にも、一般のスポーツ愛好家が健康のために利用するニーズもあるのではないか。これは日本市場でも見られたトレンドですが、同じ戦略が中国でも通用する可能性があると仮説を立てました」

健康のために手軽にタンパク質を取りたい、ランニング愛好家のためのサプリメント、健康的なイメージのある植物性タンパクだったら飲んでもいい。ウェイトトレーニングで大きな体を作りたい人、成績を向上させたい競技者以外にもマーケットがあるはずとの読みだという。

越境EC旗艦店立ち上げからまだ1カ月足らずで売上などのデータを分析するのはこれからの作業だが、すでに手応えを感じているという。

「コラーゲンを配合したザバス フォー ウーマンの反応が良いようです。ピンクのパッケージがかわいいというお客さまの声も届いています」

中国市場は世界のサプリメントメーカーがしのぎを削る激戦区。欧米の主要メーカーは軒並み進出しているが、どれも“強そう”なパッケージばかり。女性が気軽に手に取れるデザインはぽっかり空いていたという。

「中国のSNSを見ると、スムージーやパンケーキに混ぜて、SNS映えする高タンパク食を作っている方も少なくありません。その意味でも女性のニーズにはまる商品には期待しています」(中村さん)

女性向け以外のニーズも確認したいと、ザバス越境EC旗艦店は早くも2種類の新商品を投入している。一つは「ザバス ジュニアプロテイン」。ミネラルを配合したプロテインパウダーで子どもの成長サポートを狙った商品だ。そしてもう一つは「ザバス プロ」。タンパク質含有量を高めた製品で、ザバスの商品ラインナップの中でもっともハイスペックの商品だ。

「競技者や富裕層の間では、値段に関係なく高品質な製品が欲しいという需要もあるのではないでしょうか。もっとハイスペックな商品にも市場があるかもしれない。この仮説も検証したいですね」(中村さん)

ザバスにはプロテインパウダーだけではなく、小分けパック入りの飲料として販売されている「ザバス ミルクプロテイン」という商品もある。忙しい時でも手軽にタンパク質が摂取できると人気商品になった。健康への意識が急速に高まっている中国でもヒットの可能性はありそうだ。

「ザバスには、様々なラインナップがありますので、それを最大限活用し市場の可能性についてトライしていきたいと考えています」と中村さん。挑戦者として、積極姿勢で中国市場に挑んでいる。

 

*為替レートは1人民元=17.5円で計算

 

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