農家と消費者をダイレクトに結ぶ!デジタルで導く中国農業の産業化

解説:

EC(電子商取引)先進国として世界をリードする中国では、主戦場が都市部から農村へと拡大している。生産者と消費者をダイレクトに結びつけることで、生産者はより多くの収入が得られ、消費者はお値打ちで新鮮な食品を手にすることができる。既存の流通経路を作り替えることは決して容易な取り組みではないが、アリババグループはライブコマース(動画配信とネットショッピングの融合)「タオバオライブ」、新アプリ「タオター(タオバオの特価版)」、ニューリテール代表事業の生鮮スーパー「フーマー」など、多様な販売チャネルを総動員して、この課題に取り組んでいる。

秋です。田んぼが黄金色に輝く季節が到来しました。中国では「金九銀十」と言われますが、まさに宝物のような農作物の実りの季節の到来です。1年の苦労が報われた農民たちの顔には笑顔が浮かびます。もちろん、おいしいものには目がない美食家たちもにっこり。農民の笑顔も美食家の笑顔も、もっともっと増やしたい。そのためにアリババグループは近年、農業サプライチェーンの強化を進めています。

写真は四川省成都市蒲江県のキウイフルーツ農家

9月7日から中国農業農村部、中国商務部、中華全国供給販売合作総社などの政府省庁が共同で主催する「2021年中国農民豊収節金秋消費季」(以下、「収穫祭」と略記)が実施されています。今年で2回目となる「収穫祭」に、アリババグループはプラットフォーム企業として協力しており、デジタル化を基盤とした「新消費による富農創造」をサポートしています。

ライブ配信による販売で農民の収入が向上

既存産業とデジタル化が組み合わさって生まれたニューエコノミーが発展を続けていますが、その中で大きな役割を果たしているのが、アリババグループのC to Cマーケットプレイス「タオバオ(淘宝)」と、ライブコマース(動画配信とネットショッピングの融合)である「タオバオライブ」です。多くの雇用を生み出すとともに、農民たちにこれまでにはなかった販売チャネルを提供しています。

タオバオライブは2019年3月末に「村播計画」を発表しました。農民によるライブコマースでの配信を支援するプロジェクトです。現在までにタオバオライブで累計約11万人の農民が配信者となっています。スマートフォンでの動画配信を通じて、故郷の特産品を全中国に向けて販売する。これが新たな収入源になっているのです。

黒竜江省の李成斌(リー・チェンビン)さんもライブコマースに取り組んだ一人です。動画配信なんてまもなく50歳になる中年男性の自分とは無関係の代物だろう。最初はそう思っていました。そんな李さんが今では7万人超のフォロワーを持つインフルエンサーとなりました。月々の農産物販売額は平均1万元(約17万円*)を超えています。

写真は李成斌さん。自家栽培の米をライブコマースで販売している。

「私が住んでいるのは80世帯あまりの小さな村ですが、私の成功を見て、近所の人々も配信に取り組むようになったんです」と、李さんは村の変化を明かしました。

江西省上饒市葛源鎮に住む余文巍(ユー・ウェンウェイ)さんは1990年代生まれの若者です。他の若者たちと同じく、余さんも以前は都市に出稼ぎしていました。村に残ったのは老人と子どもだけ。

2019年、余さんは葛源鎮に戻り、タオバオでネットショップを開設、同時に村播計画に参加しました。出稼ぎをやめ、ライブコマースで故郷の農作物を売る起業の道を選んだのです。今では毎月40万元(約680万円)以上を売り上げるまでになりました。ビジネスを成功させるだけではなく、近所の人々の農作物を、手数料を取らずにライブで販促するなど、村の仲間たちを手助けできるようにもなりました。

「農民のライブ配信者は中国31省の2000以上の県に広がっています」と、村播計画責任者の唐溢は説明します。ライブコマースを学ぶと、収入は平均で以前の2~3倍まで増加したとの統計もあります。しかも、配信者だけが豊かになるのではありません。ライブコマースで成功しビジネスを拡大させると、農地の管理や農作物の発送、あるいは配信関連のテクノロジーサポートなどの雇用が生まれます。平均で農民配信者1人あたり2人の雇用が生まれています。単純計算では11万人の農民配信者の誕生によって、約20万人の雇用が生まれたわけです。

「すでに100カ所以上を開設している村播学院では、研修、実践レッスン、基本設備の支援、地方ブランドのデザイン、さらには政策支援のコンサルティングなど多方面のサポートを行っています。ライブコマースという“新たな農具”を使いこなしていただくよう、協力していきます」(唐溢)

産地と消費者を直結するタオター

さて、アリババグループの新たな販売チャネルとして急成長しているスマートフォン・アプリ「タオター」(淘特、旧称はタオバオ特価版)も、「収穫祭」のキャンペーンに参加しています。アプリのトップページに「収穫祭特設ページ」を開設し、400以上の産地から直接販売される生鮮食品を販売しています。

地方で生産される農作物は物流コストの高さや、商品化が進んでいないことから、売上が上がらないことが悩みでした。一方で田舎に住んでいる消費者も、購入できる商品の種類が少ないという悩みがありました。この半年間、タオターは「産地直送モデル」の開発を進め、農作物の産地とタオターが擁する1億9000万人の年間アクティブ・コンシューマー(AAC、直近1年間で1回以上購入歴があるユーザー)をマッチングすることに努めてきました。

写真はタオターで販売されているブドウ。収穫した産地から消費者の元へと直送される。

産地直送にすることで、貯蔵、物流、小売といった中間コストを大きく削減でき、「おいしくて安い」農作物を消費者に届けることができるのです。

今年の「収穫祭」ではタオターは提携する農産地の開拓を進めてきました。果物、水産物、農作物からお菓子やお酒まで、さまざまな食品をそろえることができました。また、それぞれの産地ごとに「初収穫キャンペーン」「初漁キャンペーン」などの企画を行っています。

タオター事業部食品生鮮運営の責任者である高子寒(ガオ・ズーハン)は、「収穫祭」の意義を次のようにまとめています。

「今回の「収穫祭」では、消費者に旬の美食を味わってもらうこと、そして商品カテゴリーを増やし、農作物から加工食品までとりそろえることをテーマとしてきました。そのかいがあり、秋の味覚が集結する大キャンペーンとなりました。農民の収入を増やし、地方の人に多くの美食を届けられるようになったのです」

 

物流アップグレードで伝統野菜が全国区に

甘粛省武威市民勤県名物の蒙古ネギ、湖北省の蓮帯(育つ前のレンコン)、陝西省と四川省の特産として知られる小桜桃(チェリー)……。地方の文化と特色を伝える中国各地の在来種野菜です。問題は傷みやすいこと。そのため産地の近くでしか食べられなかったのですが、今では中国の至る場所で広く販売されています。

写真は甘粛省武威市民勤県の蒙古ネギ畑。

これは農業バリューチェーンのアップグレードがもたらした成果です。アリババグループのニューリテールの代表事業である生鮮スーパー「フーマー」(盒馬鮮生)は「産地、サプライチェーン、販売」というバリューチェーンのすべてをデジタル化し、より効率的で安定した物流網を構築してきました。この蓄積によって、中国各地の特産品を多くの消費者に届けられるようになりました。

今までは知る人ぞ知る存在だった、ニッチな特産品が地方ブランドとして認知されるという広がりを見せています。今年6月、フーマーは初めて民勤県の蒙古ネギを中国全土に向けて販売しましたが、人気が爆発。店舗によっては半日で売り切れてしまいました。量が売れるようになると、物流コストを下げることができます。こうして甘粛省でしか食べられなかった幻の野菜が、全土のご家庭でおなじみの存在へと早変わりしたのです。

みずみずしいトマトはとてもおいしいですよね。ですが、輸送中に痛みやすいのが悩みのタネでした。そのため販売地域は産地の近隣にとどまっていました。こうした状況を変えるべく、フーマーは農産地から改革を試みています。江蘇省鎮江市戴庄村に「フーマー村」を作りました。みずみずしさは守りつつも、長期の輸送でも痛みにくいトマト作りに取り組んだのです。また、予測された販売量に合わせて生産計画を立ててもらうようにしました。こうして農家の皆さんに標準化された農作物を作ってもらい、フーマーは宣伝と販売を請け負います。こうした取り組みを通じて、おいしくても無名だった農作物が次第に多くの人に知られるようになったのです。

フーマーの「産地、サプライチェーン、販売」をデジタルでつなげるモデルにおいて、もっとも重要なのが中間をつなぐサプライチェーンです。フーマーは全国レベルのデジタル化サプライチェーンを構築しました。貯蔵、包装、配送という以前からある段階に加え、仮植(種まきしてから数センチに育った苗を植え替える作業)、加工、セントラルキッチンなどの多様な段階を加えました。さまざまなテクノロジーによってサプライチェーンのアップグレードを試みており、サプライチェーンに基づく多くの技術は市場テスト段階にまで発展しています。

今年7月下旬には160万平方フィートを超える大型のサプライチェーン・センターが湖北省武漢市に完成しました。来年初頭からの稼働を予定しています。さらに四川省成都市、上海市、浙江省杭州市、甘粛省西安市などでも、サプライチェーン・センターの建設が進んでいます。

*為替レートは2021年9月時点の1元=17円で計算。

 

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解説・翻訳協力:高口康太、編集:AlibabaNews 編集部

 

 

 

 

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