外出自粛中でも楽しめる春の行楽、ライブ配信での博物館めぐりに1000万人が参加
解説:
中国消費市場のホットトレンドとなっているのが「国潮(中国らしさ)」。伝統文化の人気が高まり、そうした要素を取り入れた商品開発が進んでいる。このトレンドを支えているのがデジタル技術だ。アリババグループはライブコマース(ライブ動画配信によるネット通販)を活用した、有名博物館の配信イベント「雲春遊」を実施。デジタルの力によって、伝統文化を楽しむチャンスを広げている。
新型コロナウイルス肺炎の影響により、中国では多くの観光地が公開を中止し、人々も外出を自粛しています。この苦しい状況下であっても、文化と歴史を知りたいという熱意を止めてはならない。そうした思いから、中国8カ所の有名な博物館が2月23日に共同の動画配信イベント「雲春遊」(デジタル春旅)を実施しました。プラットフォームとなったのは、アリババグループのC to Cマーケットプレイスのタオバオです。ライブ動画配信サービスのタオバオライブでの配信に、1000万人近いユーザーが参加し、5000年の中華文明を堪能しました。
雲春遊に参加したのは中国国家博物館、敦煌莫高窟、甘粛省博物館、蘇州博物館、西安碑林博物館、良渚博物院、春光蔬菜博物館、三星堆博物館の8カ所です。中国国家博物館から順繰りに配信を行い、合計で12時間という長丁場となりました。館内と所蔵品の紹介だけではなく、多くのユニークなコンテンツが登場しました。
初のライブ動画配信に挑んだ中国国家博物館では、「雲春遊」専用の閲覧ルートを考案し、最も価値ある収蔵品をたっぷり紹介しました。約1時間の配信でしたが、国宝級の文化財が続々登場し視聴者を楽しませました。
敦煌莫高窟の配信では書道家による模写や壁画修復の実演が行われました。三星堆博物館では最近出土したばかりの国宝級文化財「祭山図玉辺璋」が公開され、出土の経緯やどんな修復措置を施しているかも説明されました。
蘇州博物館では所蔵品だけではなく、同館の建築様式もあわせて紹介。蘇州といえば中国を代表する観光地ですが、2006年にオープンした新館は蘇州ならではの伝統建築に加えて、モダン様式を組み合わせたデザインで高い評価を受けています。すばらしい建築を伝える映像によって、視聴者はまるで蘇州を旅したような感覚を覚えました。
博物館のネットショップは1000万フォロワーを獲得、若年層が過半数に
「“雲春遊”のようなライブストリーミングによる博物館紹介は、新型肺炎流行による外出自粛の時期でも展示を楽しめる。しかも平常時以上に豊富な内容に触れられるという素晴らしい試みです。」良渚博物院の周黎明院長は今回のイベントを高く評価しています。
博物館にとって「雲春遊」の成功は重要な意味を持っています。博物館のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進にとって、重要な一歩だからです。中国では積極的にDXに取り組む博物館が多く、2019年末までに20カ所以上がタオバオ、天猫(Tmall、アリババグループ傘下のB to Cマーケットプレイス)に公式ネットショップを開設しています。そのフォロワー数は合計で1000万人を超えました。しかも過半数は1990年代に生まれた若者(“90後”)で、新たなファンの掘り起こしにつながっています。
つまり、タオバオライブは中国の文化財を楽しみ、理解するための新しいチャネルになったのです。今後はさらに多くの博物館、科学館がライブ動画配信サービスに参入するでしょう。タオバオライブの主催者は「雲春遊は博物館や科学館にとってDXを推進するための新しい手法であり、最初のチャレンジは成功を収めた」とコメントしています。
タオバオライブはストリーミング動画を通じたネット通販が主軸ですが、物販だけではなく、さまざまな分野に進出しています。その一つが旅行です。アリババグループ傘下の旅行プラットフォーム「フリギー(飛猪:Fliggy)」は、旅の達人や旅行代理店によるライブ配信を、日に100回という高頻度で実施しています。現地の風景や楽しみ方をライブ動画で伝えることで、ネット上で旅行を楽しんだ気分になれる。そして実際に旅行したいという思いをかき立てるのです。タオバオライブの配信では、バンコク、東京、プーケットが人気です。
(Alibaba News編集部:松沢しゃん/解説・翻訳協力:高口康太)
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