新型コロナで加速するデジタル変革、アリババCEOが語るアフターコロナ

解説:
5月22日、アリババグループは2020会計年度の決算を発表した。新型コロナウイルス感染症という大きなアクシデントに見舞われ、各事業に影響はあったものの、増収増益を実現。総流通額1兆ドルという大台を達成した。ダニエル・チャン会長兼CEOは決算発表の電話会議において、新型感染症がデジタル変革を加速させる契機になると強調。過去20年にわたり、デジタルエコノミーの到来に向けて準備を続けてきたアリババグループの努力が実を結ぶ時だと話している。

写真はアリババグループ 会長兼CEOのダニエル・チャン

アリババグループは5月22日、2020会計年度(2019年4月1日~2020年3月31日、以下「2020年度」)の決算及び同会計年度第4四半期決算(2020年1月ー3月期)を発表しました。以下は電話会議形式で行われた投資家向けの決算説明会における、アリババグループ 会長兼CEOの張勇(ダニエル・チャン)の発言です。

 

目次

・アリババデジタルエコノミーの成長とニューノーマル

・アリババグループ各事業の概況

・新型コロナウイルス感染症対策への支援

・デジタルエコノミー時代の到来に向けて

 

アリババデジタルエコノミーの成長とニューノーマル

みなさん、こんにちは。決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。

 

異例続きだった2020年度第4四半期、そしてすばらしい結果となった2020年度が幕を下ろしました。新型コロナウイルス感染症の影響はありましたが、5年前に発表した戦略目標を実現することができました。そうです、GMV(総流通額)1兆ドル(約107兆円)の大台を達成したのです。アリババ・デジタル・エコシステムの成長力を明確に示す数字です。アリババは一貫して大きな未来の構想と、同時に地道な前進を続けてきました。1兆ドルという戦略目標の実現は、アリババの卓越した戦略眼と強力な実行力を証明するものです。中国商務部の統計によると、2019年の中国消費財小売総額は、およそ6兆ドルでした。我々はその6分の1にまで達したわけです。これからもアリババには大きな成長の余地があると信じています。

 

新型コロナ感染症は小売業のデジタル変革を加速させ、消費者の行動と企業の運営方式を変化させる契機となりました。消費者からみれば、ネットショッピングの習慣化が加速し、今までよりも多くの品目がネットで購入されるようになりました。小売業者からみれば、リアル店舗を持っていてもオンライン販売への参入が必須となりました。新型コロナ収束後もニューノーマルとして定着するでしょう。

 

続きまして、2020年度第4四半期にアリババグループの各種事業が新型コロナの感染拡大でどのような影響を受けたのか、そしてどこまで回復したのかを振り返ります。1月23日、旧正月の前々日に武漢市のロックダウン(都市封鎖)が発表されました。その後、中国全土で自宅待機と交通規制が実施されました。これにより1月末から2月にかけて、大規模な経済停滞が起きました。中国のEC事業者も大きな影響を受けましたが、2月下旬には生産活動が徐々に再開しました。

 

3月9日、アリババグループの物流事業である菜鳥(ツァイニャオ)は湖北省以外の地域での全面回復を発表しました。4月8日に武漢市は10週間にわたる封鎖を終え、これにより中国ほぼ全ての地域で生産と生活は基本的に正常の状態に復帰しました。

 

3月からアリババグループの中国小売プラットフォームは堅調に回復しました。3月末時点の年間アクティブユーザー数は7億2,600万人に達しました。2019年12月末から1,500万人の増加です。月間アクティブユーザー(MAU)は3月に8億4600万人と、前四半期から2,200万人増加しています。アリババのC to Cマーケットプレイスである「タオバオ(Taobao)」がユーザーの強い支持を受け、ロイヤリティを獲得しているあらわれです。新たな年度が始まってから現在(5月22日)までの間に、我々の中国小売プラットフォームの取引金額の伸び率は2019会計年度第4四半期(2019年1月-3月期)のレベルにまで回復しています。

 

アリババグループ各事業の概況

新型コロナ感染症との戦いにおいて、アリババグループが過去数年間にわたり大きく注力し続けてきたニューリテール戦略、それの代表的な事業である新型生鮮スーパーのフーマー(盒馬鮮生)と生鮮品ECサービスの淘鮮達(Taoxianda)は、市民の生活を守るうえで重要な役割を果たし、消費者に広く認知されました。2020年度第4四半期、両サービスの成長率はいずれも前年同期比で100%以上もの高成長を記録しています。フーマーの販売額は60%がネット注文です。前年比10ポイントの上昇となりました。4月には新型コロナの流行は抑え込まれましたが、両サービスは依然として消費者に高い人気を誇り、強い成長を見せています。

 

新型コロナ感染症の終息後も、スマホで食品や生活必需品を購入することは習慣として継続されていくと確信しています。オンラインとオフラインの融合はニューリテール戦略を新たなステージへと引き上げるものとなりました。我々の長年にわたりニューリテールのインフラ構築に投資を続けてきたことで、アリババがニューリテール事業のリーディングカンパニーという地位をさらに強化できたと考えております。

 

新型コロナの感染拡大により海外旅行にいけなくなりました。天猫国際は中国最大の越境ECプラットフォームとして、消費者にとって海外製品を入手する重要なルートとなりました。中国以外の市場では、東南アジアのECプラットフォーム「ラザダ(Lazada)」、そして主に中国から世界へ商品を輸出するアリエクスプレス(AliExpress)の年間アクティブユーザーの総数は、2020年度末に1億8,000万人に達しました。ラザダは2020年度に受注数が100%を超える成長を見せました。新型コロナ感染症の影響を受けた第4四半期ですら、高成長が続いています。アリエクスプレスは物流や国際的サプライチェーンの打撃により、2月、3月の流通総額には負の影響が出ています。4月以降、海外主要市場の一部は回復傾向を見せていますが、なお多くの不確実性があることは事実です。

 

同じく影響を受けたローカルサービスの売上は第4四半期に8%のマイナスとなりました。フードデリバリーサービス「ウーラマ(Ele.me)」の受注数は前年同期比マイナス30%です。新型肺炎による制限が緩和されるにつれ、飲食店の営業再開が進んでいます。2021会計年度(2020年4月以降)に入り受注数は回復が進んでおり、流通総額は前年同期比プラスに転じました。

 

アリババクラウドは高成長を続けています。2020年度の売上は前年度比62%増の400億元(約6,000億円)に達しました。国際的な調査企業であるガートナーが2020年4月に発表した最新統計によると、アリババクラウドはアジア太平洋地域で最大のクラウドコンピューティング・プロバイダーです(IaaS、SaaSのマーケットシェアに基づく)。

 

自宅待機の期間中はビデオコンテンツ視聴、在宅ワーク、オンライン教育が広く活用され、パブリッククラウド事業は急成長を遂げました。生産活動再開において、クラウドコンピューティングとビッグデータの活用はきわめて重要なサポートです。新型感染症は企業の全面的なデジタル経営を加速させる契機となりました。クラウド活用は都市の公共サービスから各業界にいたるまで、共通の選択となったのです。

 

オンラインコミュニケーション基盤のDingTalk(ディントーク)は新型コロナ対策に大きな力を発揮しました。数百万社がディントークを通じてリモートワークを実現したのです。また教育分野でも力を発揮しています。3月のオンライン授業視聴回数は1日に100万回を超えました。多くの学校にとってオンライン学習のための重要なプラットフォームとなったのです。平日の日次アクティブユーザー(DAU)は1億5500万人に達しました。新年度に入ってから全面的な学校再開が進んでいることから、ディントークのDAUは減少しましたが、それでも1億人以上を保っています。

 

またビデオコンテンツ消費の増加に伴い、アリババグループのデジタルメディア・エンターテイメント事業の有料ユーザー数、視聴時間数は順調な成長を続けています。動画配信プラットフォームのヨウク(Youku・優酷)はオリジナルコンテンツの制作、独自コンテンツの確保に努めています。2020年度のコスト削減効率向上の方針を継続し、全体的な運営レベルの向上を目指します。

 

新型コロナ感染症対策への支援

また第4四半期には、アリババグループの関連企業であるアントグループと協力し、デジタル・エコノミー・エコシステムの技術力及びその他リソースを活用して、中国及び世界各国で新型コロナ感染拡大の影響を受けた人々への支援に取り組みました。資金提供を始めビジネスのサポートを通じて、マーチャントやパートナー企業が直面したチャレンジを乗り越えられるよう支援を行なっています。3月31日時点でアリババグループとアントグループによる支援の総額は33.56億元(約503億円)に達しました。

 

その具体的な取り組みを一部ご紹介します。

・ネットショップのサービス料や手数料の減免、物流費の支援
・アントグループ及びその他のパートナー企業と協力して、ネットショップへの売掛金の支払いの前倒し、低金利による1年期限のビジネスローンの提供
・1月に設立した10億元(約150億円)の特別ファンドによる医療物資、その他必要物資の買い付けと新型コロナ流行地域への寄付
・菜鳥(ツァイニャオ)による世界各国とのグリーンルート開通。寄贈された医療物資の無料配送。
・全国200超のフーマー生鮮スーパー直営店舗に資金を供給。「営業を止めない、価格を上げない、品切れさせない」の約束を掲げた。
・中国の550を超える病院に、アリババグループの研究機関である達摩院(DAMOアカデミー)が開発したCT画像分析技術を提供。胸部CT画像分析技術の導入によって医療現場における新型コロナ感染症疑い症例の診断効率を向上させた。
・アリババ公益基金会はジャック・マー公益基金会、蔡崇信(ジョセフ・ツァイ)公益基金会と共同で2億件の感染症対策物資を世界150以上の国、地域、国際機関に寄贈した。

 

また、アリババグループは4月に「春雷計画2020」を開始し、中国国内の中小企業をサポートしています。

・タオバオ、天猫などのEC(電子商取引)プラットフォームを通じて、中小輸出企業の国内市場開拓をサポート。
・アリババドットコム、アリエクスプレスなどの海外向けECプラットフォームを通じて海外市場開拓をサポート。
・産業集積地の転換、アップグレードを支援
・デジタル技術による農業支援
・アントグループ及びその他パートナー企業との協力で中小企業の資金難をサポート

 

デジタルエコノミー時代の到来に向けて

新型コロナ感染症はまだ終息していません。中国国内の対策によって、生産活動と生活は正常状態に回帰しました。しかし、世界範囲ではまだ流行が続いている国もあります。今後の動向にも大きな不確実性があります。さらに米中関係の緊張の高まりも、アフターコロナの世界に不確実性を増すものとなっています。

 

今後のマクロ経済、地政学は不確実性が高まっていますが、経済と生活の全面的なデジタル化というトレンドは変化しない、不確実性の中にあっても高度な確実性を備えた方向性である。我々はそう確信しています。

 

過去20年間、アリババグループはデジタルエコノミー時代の到来に備えて準備を続け、デジタル技術によるビジネス、金融、物流、クラウドコンピューティング、ビッグデータというインフラを整備してきました。こうしたインフラはより重要な役割を担うことになります。さまざまな業界の全面的なデジタル化経営を進め、消費者のデジタルライフを進化させ、世界の中小企業が中国及びその他の消費市場に進出する支援者となり、そして新たな雇用の創造につながる。そう確信しています。デジタルエコノミー時代に向けた準備は「To make it easy to do business anywhere(あらゆるビジネスの可能性を広げる力になる)」というアリババグループのミッションを達成するために不可欠な努力であり、アリババグループがさらなる発展を遂げることを約束するものなのです。

 

*1元=15円、1ドル=107円のレート(5月現在)で換算。日本円は参考値です。

 

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