「世界20億人の消費者にサービスを届ける」ダニエル・チャンが投資家への書簡で決意表明

解説:

2020年7月10日、アリババグループ会長兼CEO(最高経営責任者)のダニエル・チャン(張勇)は投資家への書簡を発表した。新型コロナウイルスの流行という有事に見舞われたにもかかわらず、GMV(流通総額)1兆ドル(約107兆円)突破という戦略目標を実現したアリババだが、次なる目標はグローバル化だという。2036年までにアリババのサービスを世界20億人の消費者に提供するほか、1億人の雇用機会を創出し、中小企業1,000万社超の利益に貢献することを目標としている。

アリババグループ 会長兼CEOのダニエル・チャン(張勇)

下記、ダニエルからの書簡の和訳全文になります。


投資家のみなさまへ

みなさまの、長きにわたるアリババグループへの支持と信任、そして支援に感謝いたします。


これは、私がアリババグループ会長に就任して初めてとなる、投資家のみなさまへの書簡です。お手元に届くころには、早くも2020年は折り返し地点を過ぎています。この半年間に起きたことは全世界にとって、我々全員にとって、これまで経験したことがない試練であり、未来の経済と社会に深刻な影響を与えるものです。


新型コロナウイルスの世界的な流行は現在も続き、全世界に大きな不確実性をもたらしています。どんな組織、どんな市場プレーヤーも、単独でコロナに打ち勝つことはできません。全人類共通のチャレンジなのです。ただし、私たちは、高い不確実性の中でも、永遠に変わらぬ確かなことがあると確信しています。それは経済と社会生活は全般的にデジタル化に向かうという大きなトレンドです。新型コロナウイルスは、私たちと世界との関係を再考させる機会となりました。生活から仕事、教育、企業経営、社会統治などのあらゆる方面において、全く新しいデジタル化されたスタイルが生み出されています。そうです、今や全分野でデジタル化が進んでいるのです。


昨年、アリババグループは創業20周年を迎えました。アリババの20年間は中国のインターネットとデジタルエコノミーの急成長、そして社会経済の力強い発展に支えられてきました。アリババグループと社会の発展は共鳴して、同じ運命で結ばれているのです。この20年間、アリババグループはデジタルエコノミーの到来に備えてきました。今では商業、金融、物流、クラウドコンピューティングとデータテクノロジーをカバーするデジタル経済圏を構築しています。この大きな発展により、全世界の数億人の消費者、数千万のマーチャントやサービスプロバイダー、パートナー企業と立体的なエコシステムを形成しています。われわれはインターネットの中で新しいビジネスエコシステムを構築しただけではありません。実体経済の各種産業が全面的なデジタル化を推進できるよう支援し、ネットとリアルの融合というイノベーションを実現してきました。グローバルなEC(電子商取引)インフラから、各業種各企業のデジタル化を下支えするインフラへと変化しつつあるのです。

 

「インフラ」とはなにか? 新型コロナウイルスは、この問いについてアリババに深い理解を与える契機となりました。全世界で続くコロナとの闘い。アリババは各事業、金融、物流、クラウドコンピューティングなどのインフラを活用することで、世界の感染症対策、ライフサラインの維持、経済回復を目指す総力戦に加わりました。われわれはアリババのこれまでの20年の成長を支えてくださった社会と時代に深く感謝しています。その想いを示す最良の方法は、共通の社会的課題を解決すること、時代の発展のための貢献をなすことです。新型コロナ感染症がもたらす挑戦は社会に恩返しをするきっかけになるのです。これこそ私たちが担うべき責任であり、役割です。


さて、新型コロナ感染症の世界的流行という有事に見舞われたにもかかわらず、2020会計年度において、アリババグループは5年前に定めた戦略目標である、GMV(総流通額)1兆ドル(約107兆円)を達成しました。中国商務部の統計によると中国の消費財小売総額は6兆ドル(約642兆円)あまり、アリババのGMVはそのうち1兆ドルを占めたのです。これはきわめて重要なマイルストーンです。次なる目標は中国10億人の消費者にサービスを提供し、アリババ・プラットフォームで10兆元(約150兆円)の消費規模を実現すること。そして、この成功を足場に全面的なグローバル化を実現することです。私たちは次の5年間の、できるだけ早い段階でこの目標を達成したいと考えています。さらに長期の目標としては、2036年までに世界20億人の消費者にサービスを提供し、1億人の雇用を生み出し、そして1,000万社の中小企業が利益を生み出せるよう支援することです。こうした戦略目標を実現できるよう、われわれは「グローバル化、中国国内の需要拡大、クラウドコンピューティングとデータテクノロジーの活用」という三大戦略を堅持します。グローバル化は長期的な目標です。中国国内の需要こそが私たちの基盤です。そして、クラウドコンピューティングとデータテクノロジーの活用は未来を見据えた取り組みです。


過去1年、私たちはいくつもの重大なイベントを経験しました。アリババの中核システム全体のクラウド移行を実現し、今後到来するクラウド・ネイティブ時代の基礎を築きました。そして香港株式市場への上場を果たしました。もう一つ、アリババ技術委員会主席の王堅博士が、中国工程院院士(中国トップのサイエンティストにおくられる称号)に選ばれました。中国民間企業代表としては初となる快挙です。アリババ社員全員の誇りであり、アリババのエンジニア・技術職の信念を象徴する出来事となりました。

 

「新たなイノベーションを創る時には誰も師たりえない」と言います。アリババの20年は自らを革新し続け、新たなプロダクト・サービスを生み出し続ける20年でした。マーケットプレイスのタオバオ、決済プラットフォームのアリペイ、物流ソリューションのツァイニャオ(菜鳥)、クラウドコンピューティングのアリババクラウド、さらに近年誕生したモバイルオフィスソリューションのDingTalk(ディントーク)、ニューリテール生鮮スーパーのフーマー(盒馬鮮生)、動画とネット通販を融合したタオバオライブ……これらの新たなプロダクトの誕生はすべて、消費者により素晴らしい生活を送ってもらうため、ビジネスを進歩させるため、社会の発展に新たな原動力を加えるために生み出されました。こうしたイノベーションにより、私たちはさまざまなレベルで生活と生産経営方式を再定義してまいりました。デジタルの商業からデジタルの金融、物流、クラウドコンピューティングにいたるまでさまざまな基盤を形成し、さらに新たなプロダクト、イノベーションを生み出す土壌を作ってまいりました。


アリババの20年、それは競争の中に変化を求める20年でもありました。競争のなかでわれわれはよりよく、よりクリエイティブに、より強いトレンドを生み出すことができました。日進月歩のデジタル変革において、本当の意味でゼロからイチを生み出す、無から有を創りだす、そして顧客価値を生み出すイノベーションを持続することができました。こうした取り組みを続けることで、歴史に与えられた試練を乗り越えることができたのです。アリババのオリジナリティとは、顧客価値こそがすべてのイノベーションの原点であるとの信念を守ってきたことです。アリババの20年、それは新たなプロダクトを生み出し、顧客の支援を続け、パートナー企業が新たなプロダクトを生み出すのを支援する20年です。今後もデジタルエコノミー時代のインフラ建設という目標を堅持し、未来のための投資と新たなプロダクトの開発を続けます。アリババのイノベーションで社会をより良くするために前進します。


アリババグループ20周年の際、私たちは「102年間にわたり存続する“良い”企業」と、「良い」という言葉をわれわれの企業ビジョンに加えました。今、私たちは歴史の重要な交差点に立っています。そして、重大な使命を託されています。アリババグループの究極的な目標、それは社会のために価値を創造し、社会的課題により良いソリューションを見つけることです。そして、アリババのエコシステムで中小企業の事業発展をサポートし、社会を進歩させる力となることです。アリババの存在で社会がより良くなることを願っています。社会が良くなり、経済が良くなり、生活が良くなる。そうして初めてアリババはもっと良くなる。われわれはそう確信しているのです。

張勇(ダニエル・チャン)
アリババグループ 会長兼CEO

 

最後に、アリババグループのミッション、ビジョン、バリューについて、
創業者のジャック・マーと会長兼CEOのダニエル・チャンが自ら解説している動画をご覧ください。

 

 

 

※1人民元=15円、1米ドル=107円のレート(2020年7月現在)で換算

参考資料:

アリババグループ2020会計年度アニュアルレポート:
・英語版
https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2020/0710/2020071000013.pdf
・中国語版
https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2020/0710/2020071000014_c.pdf

 

(翻訳・解説協力:高口康太、編集:松沢)

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