アリババ、AIを活用した包摂的なプラットフォームの構築を発表

スマートフォンから受講できる認知テストやリアルタイムな翻訳を提供する点字翻訳機、誰もが使いやすい配車アプリなどを展開

 アリババグループは、2022年9月9日に開幕した第6回フィランソロピーウィークにて、同社がオフラインとオンラインで展開してきた慈善活動を発表するともに、誰もが使いやすいプラットフォームの構築に向けた人工知能(AI)の導入と強化を表明しました。

 アリババは、これまでにAIを活用し、交通手段からオンラインショッピングまで生活に必要な様々なサービスを誰もが使いやすい仕様にすることで、主に高齢者や視覚障がい者のデジタル社会への参加を促進し、情報格差を解消してきました。例えば、より大きなフォント、簡素化されたナビゲーション、音声アシストなどの機能を提供しており、同社のプラットフォームはより包摂的なものになっています。

 中国信息通信研究院(CAICT、The China Academy of Information and Communications Technology)が今年発表した報告書によると、中国には約8,500万人の障がい者と、約2億6,000万人もの60歳以上の高齢者が暮らしています。また、中国発展研究基金(CDRF)によると、2050年までに中国の人口の3分の1近くが60歳以上の高齢者になると予測されています。

 これまで以上に需要が高まるとされるAIですが、当社での導入事例と最新情報について以下、ご紹介します。

事例1:点字翻訳技術の活用

 DAMOアカデミー(達摩院)では、機械学習と光学的文字認識(OCR)の組み合わせにより、点字のリアルタイム翻訳を実現する「点字の文字化技術」を試験的に導入しています。点字をスキャンし、視覚的情報を認識するAI技術の一種である「コンピュータビジョン」によって、それを点に変換します。その点を中国語のローマ字表記に変換し、さらに自然言語処理で漢字に変換していきます。一見複雑そうに見えますが、DAMOアカデミーは、このプロセス全体を1〜2秒程度で行い、ほとんど同時翻訳と同じ速さを実現しています。

 この技術は、盲学校で教師が宿題を見直すのに役立っています。重度の視覚障がい者は、手で触れることで点字を読解しますが、視力のある人は点字を目で読むため、特別な教育を受けた教師でも点字の読解は時間のかかる作業でした。

事例2:アルツハイマー病の早期検出

 医学雑誌『The Lancet』によると、2020年には980万人もの中国人が記憶や運動能力に影響を与えるアルツハイマー病に罹患すると予測されています。

 アルツハイマー病の早期発見および事前スクリーニングを広く普及にするために、DAMOアカデミーは先月、中国高齢者保健協会アルツハイマー病分会(ADC)と共同でアリペイにて認知テストのプログラムを開始しました。利用者は認知テストの質問に音声で回答し、時計描画テストを受講するよう求められます。全体の所要時間は10分程度で、音声と文章を分析するマルチモーダルAIを使ってアリペイアプリが採点を行います。その後、専門の医療専門家に採点結果が提出され、7日後に正式な診断結果を得ることができます。高リスクと診断された人については、アリペイに通知が届き、より専門的な医療支援を受けるよう推奨されます。

 初期症状に悩む多くの高齢者は、何らかの理由で病院に行くことができないか、病院で検査を受けることに抵抗を示しており、自宅でスマートフォンから簡単に受けることができるアリペイの認知テストプログラムは彼らにとって便利なものになるはずです。北京大学第一病院の主任医師であるSun Yongan氏は、この認知テストを「AIを活用してアルツハイマー病の検査を行う中国初の試み」と評価しており、医療資源不足が続く農村部や遠隔地において、さらなる活用が期待されています。

事例3:配車サービスの簡略化

 アリババのナビゲーションプラットフォームAmap(高徳地図)は、配車アプリの操作が難しいと感じる高齢者のために、昨年、中国高齢者発展基金と協力し、20都市で2,500以上の配車ポイントを展開しました。

 配車ポイントは、マンションのエントランスやバス停の近くに設置されており、利用者は、配車ポイントにある看板に記載されたQRコードをスマートフォンで読み取ることでタクシーを呼ぶというわかりやすい仕組みになっています。デジタル地図上に自動的にピンが落とされるため、利用者は、迎えの場所や目的地を入力する必要がありません。目的地とデジタル決済は任意であり、利用者は現金で支払い、目的地点を口頭で伝えることができます。

 Amapは昨年10月、5年間で中国全土に1万カ所以上の配車ポイントを設置すると発表しました。

Amapの配車ポイントでQRコードを読み取る利用者

 アリババのフィランソロピー・プラットフォームには、4,000以上の慈善団体や非営利組織が登録されており、ユーザーは隙間時間にスマートフォンから慈善活動に参加することができます。2022年3月31日に終了した会計年度では約7億8,000万件の慈善活動がアリババプラットフォームの利用者によって行われました。当社は今後も以上のような活動を通じて、誰もが生きやすい社会の実現に貢献していきます。

AI 人工知能 高齢者ユーザー向けデジタルサービス活用支援