「企業も個人も、変化を受け入れなければ未来はない」アリババグループCEOが語る

新型コロナウイルスの流行によって、世界の小売業は構造変化を迫られています。経営環境の激変に対応するべく、多くの企業はデジタル化の加速などの戦略調整に取り組んでいますが、まさしく状況に応じて変化することこそが未来に向かう前提となります。

アリババグループの会長兼CEOのダニエル・チャン(張勇)は4月28日、ワールド・リテール・コングレスが主催するオンライン小売業フォーラム「Retail Connected」に登壇し、デジタル化時代におけるプラットフォーム企業の役割、リーダーに求められること、人材開発などについて講演し、「変化を抱きしめること」こそが未来に向き合う前提だと強調しました。

新型コロナウイルスは私たちの生活を大きく変えました。この状況に対応するべきでしょうか?必要なのはデジタル化を現実社会に取り入れ、化学反応を起こして、新たな付加価値を作ること。ダニエルはそう話しています。

「瞬時に変化するニーズに対応すること。勝ち残るためには必要なことです」

変化し続けるニーズに対応するための最大の武器がデジタル化である。ダニエルは一貫してこう訴え続けてきます。昨年9月のアリババグループ・インベスターデイではアフターコロナの時代には新たな思考が必要となります。何を頼りとするべきなのか。かつてないほど不確実性が高まるなかで、容易に答えを見いだせないようにも思いますが、「不確定の中で、最大の確実性はデジタル化の進展だ」と、ダニエルは強調します。未来を見通すことは難しいとはいえ、デジタル化というトレンドは間違いなく加速していきます。

デジタル化という歴史的なトレンドは多くのビジネスチャンスをもたらします。多くの企業がこの果実を得ようと競争していますが、アリババグループは最高のポジションをつけています。なぜならば、アリババグループによる新たな道への取り組みはすでに約10年もの蓄積があるからだと、ダニエルは指摘しています。

全社会、そしてあらゆるビジネスはクラウドコンピューティングとデータ活用に向かっていく。IT産業であれ、伝統的産業であれ、違いはありません。すべてのビジネスはデジタル化へと向かうのです。アリババグループはそう確信し、この道を進んできました。

 

プラットフォームは社会的責任を担わなければならない

アリババグループは社会的責任を担うプラットフォーム企業です。

飛躍の一つの契機となったのが2008年のB2Cショッピングモール「Tモール(天猫、Tmall)」の創設です。有力ブランド企業が加盟する新たなモールは飛躍的な成長を続け、参加するブランドも売り上げを伸ばしました。

そして長年の発展に伴い、たんなるビジネスの場から社会的責任を担うプラットフォームへと変化していったとダニエルは振り返ります。アリババグループのEC(電子商取引)サービスを利用する消費者は数億人規模に達しています。多くのビジネスパートナーと一緒に共創しながら多くの消費者にサービス提供することで、アリババグループは成長してきました。ここまで成長すると、ビジネスや投資のためだけの組織ではなく、社会的責任を担うことを常に意識する必要があります。

いかに社会的責任を果たすべきか。多くの取り組みの一つが環境保護への意識です。アリババグループは2010年から売り上げの0.3%を環境保護ファンドに出資しています。啓蒙活動を通じて、社会の環境保護意識を喚起することが目的です。

 

明日のための投資がリーダーの役割だ

プラットフォーム企業の責任に続き、ダニエルは企業リーダーの役割についての考えをシェアしました。

「顧客価値にフォーカスし、クライアントの課題を創造力で解決することが創業者の役割である」「変化の中で戦略を定め、後悔せずに進むことが企業リーダーの役割である」、ダニエルは以前よりリーダーの役割をこのように説明してきました。

オンライン小売業フォーラム「Retail Connected」では、いかに新しい事業を生み出すか、その心得が披露されました。

「(各事業の)リーダーには新たなチャレンジが許される余地が必要です。今日のために働き、明日のために投資し、未来のためにインキュベートさせる。これがリーダーの役割だからです。“新動物”をインキュベートするために失敗を恐れぬチャレンジができる余地が必要なのです」

“新動物”について簡単に説明しましょう。アリババグループの各事業にはマスコットキャラクターがいます。Tモールの「猫天天」、物流ソリューション「菜鳥」(ツァイニャオ)の「菜小鳥」など動物をモチーフとしたマスコットキャラクターが多く、「アリババ動物園」と言われています。“新動物”とは新規事業のこと、今までにない事業を作るためにはチャレンジが必要だと、ダニエルは指摘したわけです。

アリババ動物園が形成されるまでに、多くの新事業が生み出されてきました。そこで得たインキュベーションのためのノウハウとはなんでしょうか?ダニエルは、新事業を生み出すリーダーは第一に我慢強いこと、第二に間違いを受け入れて修正する能力が必要だと考えています。

なぜならば、新事業が成功する可能性は低く、5、6回のチャレンジでようやく1回成功するような低確率です。失敗して当たり前、まるでベンチャー企業に投資するようなものです。こうしたチャレンジの繰り返しを続けることに加え、手持ちのリソースを適切に配分することで、軌道に乗った新事業の成長を促すことも、リーダーには求められます。また、リーダーにとっては人材開発も重要な役割です。グループを団結させ、メンバー一人一人の実力だけではなく、複数人が一緒になって化学反応を起こさせることが必要です。

「メンバーを団結させるには共同の目標が必要です。では共同の目標はどう定めるか。それは企業文化からはじめなければなりません」とダニエル。確固たる企業文化の存在がひいては人材開発にまでつながると指摘しています。

 

「不完全な決断」を学ぶ

「変化を抱きしめること」、それはダニエル個人のキャリアにとっても重要な経験でした。ダニエルはもともと財務のスペシャリストで、アリババグループ加入後のポジションはECプラットフォーム「タオバオ」の最高財務責任者(CFO)という役割でした。

その後、Tモールの立ち上げを担当し、今ではグループの会長兼CEOとしてアリババグループのトップを担っています。10年以上にわたるアリババグループでのキャリアにおいて、財務スペシャリストから経営者へと、ダニエル自らも変化することが必要でした。

この変化は決して容易なものではなかったとダニエルは言います。財務担当者と経営者ではそもそも求められる素質がまったく違うのです。

「財務担当者は間違いなく事実を確認し、結果と投資効率を評価するのが仕事です。しかし、経営者は違います。イノベーションの世界ではすべての問題を把握し、正確な評価を下すことは不可能です。完璧な理解、評価ができないなかで、どのように各事業担当者の決定をサポートするかが求められます。そう、“不完全な決断”を学ばなければなりません」

アリババグループは「新六脈神剣」と呼ばれる、6つのコアバリューを定めています。その一つが、変化し続けるアリババグループの中で「Change Is the Only Constant(和訳:唯一不変なるものは変化なり)」という一文です。デジタル化、プラットフォームの変化、経営者の役割などダニエルの講演は多岐にわたりましたが、そのすべてに通底しているのが、この価値観です。

ダニエルは経営者の人々に新たなチャレンジに取り組む重要性を訴えました。そして、変化を拒むことはできないとも付け加えています。「もし変化を拒んだとしても、他人に変化させられてしまうだけ」なのだ、と。

 

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解説・翻訳協力:高口康太、編集:AlibabaNews 編集部

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