企業の温室効果ガス排出に関する基準の解説

気候変動は今世紀の社会が直面する大きな課題の一つであり、経済が発展するにつれ、グリーン、低炭素、循環型経済モデルへの注力はますます強まっています。GHGプロトコルは、国際的に認められた温室効果ガスの排出量の算出や報告基準を示しています。
世界資源研究所(WRI)と持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)の「温室効果ガスプロトコル:企業の算定と報告の基準」及び「温室効果ガスプロトコル:企業バリューチェーンの算定と報告の基準」によると、企業の温室効果ガス排出に関する測定は、スコープ1、スコープ2、スコープ3に分類されます。アリババグループが発表した最新の低炭素化戦略・目標も、この3つの領域に準拠しています。
詳細はこちらの記事をご参照ください:【2021投資家大会】アリババグループ、2030年までのカーボンニュートラル目標を発表


スコープ1:直接的な温室効果ガスの排出

スコープ1は、「報告する企業が所有または管理する事業からの排出」と定義され、企業が所有するボイラー、炉、車両などからの燃焼排ガスや、企業が所有するプロセスや設備での化学生産によるGHG排出など、企業が直接所有または管理する排出源からの直接GHG排出を意味しています。

2020年におけるアリババの管理する事業の直接GHG排出量は、石油燃焼ボイラーなどの使用による固定発生源からの排出、店舗用冷凍機の使用による逸散排出源からの排出、自社の石油燃焼車両の使用による移動発生源からの排出を含め51万トンに達しています。

スコープ2:購入電力による間接的な温室効果ガス排出量

スコープ2は、「報告する企業が消費した購入電力、蒸気、暖房、冷房による排出量」と定義されています。 購入電力とは、調達などを通じて組織が使用した範囲に含まれる電力を意味しています。スコープ2の排出量を計上することで、企業は電力消費の変化や温室効果ガス排出のリスクを考慮してコストに見合った調達機会を検討することができます。

例えばアリババの場合、2020年の事業活動によるGHG排出量は371万トンとなり、この購入電力は主にクラウドコンピューティングのデータセンター、小売店、オフィスでの電力需要に使用されています。

スコープ3:企業のバリューチェーン(上流・下流企業)からの間接的な温室効果ガス排出量

スコープ3は、「スコープ2でカバーされていない上流と下流の排出量を含む、報告されたバリューチェーンに沿って発生するすべての間接排出量」と定義されています。 企業の活動全般の結果を反映したもので、購入原材料や燃料の採掘・生産、購入原材料や燃料の輸送、従業員の移動・通勤による温室効果ガス排出は、すべてスコープ3に含まれます。

アリババの場合、バリューチェーンの上流と下流で間接的に発生する温室効果ガス排出量は、2020年には約529万4,000トンと正確に測定できています。これは主に、購入した輸送・物流サービスにかかわる燃料消費、賃借をしたデータセンターでの購入電力、宅配便の梱包材、ショッピングバッグや食器の使用、リース倉庫やリースキャンパス、スタッフの通勤などから発生するものです。

スコープ1、スコープ2、スコープ3を合わせると、2020年のアリババの温室効果ガス総排出量は約951万4,000トンとなります。

アリババが新たに提唱する「スコープ3+」コンセプト:プラットフォーム・エコシステムを連携させ、炭素削減に貢献

デジタルプラットフォームの出現により、パートナーに様々な技術的・商業的イノベーションを提供したり、プラットフォーム参加者の行動や意思決定に助言するなど、企業間のシナジーの可能性がより広がってきています。しかし、この効果はGHGプロトコルで設定されている企業の温室効果ガス排出量のスコープ1、2、3には反映されていません。

アリババは、独自のプラットフォームモデルに基づき、企業によるスコープ1、2、3の炭素排出量の実現に加え、アリババのプラットフォームエコロジーへの参加者による炭素排出量にまで視野を広げ、それに応じた炭素削減の社会責任を担う「スコープ3+」という概念を新しく提唱しました。

アリババの炭素削減戦略とその道筋

アリババの排出量削減に関する戦略は、二酸化炭素の削減、クリーンエネルギーによる代替、カーボンオフセット、除去という施策の組み合わせによって達成されます。 この戦略は、大気中の温室効果ガス濃度を大幅に削減するための国際基準に沿ったものであり、パリ協定における1.5℃目標の基本原則とも一致するものです。

アリババは、スコープ1およびスコープ2の業務用カーボンニュートラルについて、1)電気化・スマート化、2)効率化、3)再生可能エネルギーの利用、4)カーボンオフセットおよび除去という4つの主な排出削減方法を通じて達成する予定です。

電気化は二酸化炭素削減のための重要な手段であり、技術の成熟に伴いガソリン車を電気自動車に置き換えることは、温室効果ガスの効果的な削減に資するものです。 例えば、Lazadaとサンアート・リテールの物流車両では、2030年までに短距離用のガソリン車両をすべて電気自動車に置き換え、長距離用の燃料車両から電気自動車への移行は、技術が成熟し次第、導入する計画です。同時に、アリババは物流・輸送ツールのスマート化も研究しています。スマート化と電気化を組み合わせることで、輸送効率を向上させ、結果として二酸化炭素排出量を削減することができます。

世界各地のオフラインの小売店、アリババクラウド及び各地のキャンパスは、スコープ2の中で最も電力の消費量が多くなっています。 オフラインの店舗や倉庫を持つ盒馬鮮生(フーマー)、サンアート・リテール、銀泰百貨では、暖房、照明、冷凍が主な排出源となっています。より効率的な技術の採用と再生可能エネルギーの開発は、小売業の低炭素化の推進にとって重要な施策です。例えばサンアート・リテールでは、店舗照明のLED化、高効率なセントラル空調システムや排気フードの自動制御型システムの強化、その他の多くのプロジェクトにより、エネルギー消費量を削減し小売業の低炭素化の推進を図っています。アリババはキャンパスにおいて、循環型経済の原則を採用して排出量削減の方法を模索、実践しており、従業員にグリーン、低炭素、健康的な職場環境を提供するとともに、キャンパス内のグリーンテクノロジーの革新と発展を推進しています。

電力消費に占める再生可能エネルギーの比率を高めることは、スコープ1およびスコープ2のカーボンニュートラルを達成するための重要な方法となります。アリババは、電力供給における再生可能エネルギーの比率の継続的向上に、さまざまな角度から取り組んでいきます。まず、対象となる事業所・オフィスでの「分散型太陽光発電」を精力的に展開し、2030年までにすべてのツァイニャオのキャンパスで太陽光発電の設置を完了する予定です。東南アジアなど中国以外の地域では、再生可能エネルギーの調達により、2030年までにすべての電力需要をカバーすることを計画しています。

スコープ3の炭素排出量は、バリューチェーンの上流と下流の活動によって大きな影響を受けます。 具体的には、アリババのスコープ3に関する排出削減戦略には、以下のものが含まれますが、これらに限定されません。

  1. 先進的な液体冷却技術の採用、統合型の無停電電源供給装置の使用、自社開発の「Yitian 710」サーバーチップの活用など、賃借をしているデータセンターとインフラにおけるエネルギー効率と発電方法のクリーン化を継続的に改善し、エネルギー効率を向上させる。
  2. 物流・梱包サービスの戦略的な調達、電気運輸サービスやグリーン梱包を提供できるサプライヤーの優先、スマートな箱の切断や梱包におけるアルゴリズムの活用など様々な技術アプリケーションの開発により梱包使用量を削減する。
  3. 社員の相乗りや社用バスでの移動を奨励するなど、旅行や出張に伴う二酸化炭素排出量を削減するための行動を継続する。
  4. グリーンサプライヤー管理計画とグリーンサプライチェーンシステムを段階的に実施し、サプライヤーに科学的根拠に基づく長期的な排出削減目標の設定を奨励するとともに、低炭素・低コストのソリューションとインセンティブの提供によりバリューチェーンの低炭素化の加速を支援する。

スコープ3+の排出削減を推進するための優先項目

グリーン消費の促進 – デジタルプラットフォームにおけるグリーン消費の推進は、「スコープ3+」の炭素削減における重要事項であり、一般的なエネルギーの転換だけでは解決できない問題です。アリババは、消費者側とマーチャント側の双方における変革を推進し、グリーン活動の提唱、グリーン商品の供給強化、グリーン・低炭素の物流や認証などのプラットフォームサービスの強化に取り組んでいきます。 これらの取り組みを通じて、消費者の生活の質の向上と、グリーン商品の需要喚起に貢献します。2021年の天猫ダブルイレブン・ショッピングフェスティバル期間中、天猫は特設売場「グリーン会場」を設け、最先端の省エネ家電、新エネルギー車、節水製品、環境にやさしい食料品などのカテゴリーを皮切りに、グリーン商品に対する消費者の意識喚起を図りました。

アイドルエコノミーの発展 – アイドルエコノミー(使用されていないリソースを用いて、新たな経済的価値を生み出すこと)の発展とリサイクルは、二酸化炭素削減の大きな可能性を秘めており、アリババが「スコープ3+」の二酸化炭素削減を実現するための重要なチャンスでもあります。従来のオフラインの中古品市場は情報が不足しており、信用性においても課題がありました。閑魚(シェンユー)はデジタル技術と制度の革新により、買い手と売り手の双方にとって信用性の高い、公正な取引環境を提供します。そして、消費者やマーチャントが参加できる場を確立し、余剰リソースの活用機会を拡大します。

グリーンな旅行を推奨 – より多くのアクターの参加を募り、よりグリーンな旅行を増加させることが、問題解決のカギとなります。高徳地図は、スマートナビゲーション技術と環境に優しい行動をとるインセンティブの付与という両面から、旅行における二酸化炭素削減を推進しています。

グリーン物流とリサイクル – アリババは、すべての物流業者が各配送毎の二酸化炭素排出量を削減し、物流業界のグリーン化及び低炭素化の実現を促進します。上流では、アリババは、商品在庫データとスマートアルゴリズムに依拠して、持続可能な低炭素サプライチェーンソリューションを模索し、業界の加盟店と協力して、倉庫間の物流におけるカートンの使用を大幅に削減するための箱の設計の標準化と最適化を行います。下流では、ツァイニャオステーションにリサイクルボックスを導入することで、消費者が古い宅配ボックスを別の消費者の宅配便に使用することを推奨し、リサイクルを可能にします。

 

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