アリババの医療AIで新型肺炎検査を高速化、わずか20秒で診断可能に

解説:
新型肺炎の検査は大きな課題です。日本でも使われているPCR検査には専用の機器が必要となるばかりか、医療スタッフの感染リスクがあります。それに加えて、中国では胸部CT検査が使われるようになりましたが、アリババグループの研究機関である達摩院(DAMOアカデミー)が開発した医療AIは肉眼での検査を上回る短時間と高精度を実現しています。

達摩院とアリババクラウドが共同開発した医療AIによる検査画面

新型コロナウイルス(COVID-19)による肺炎流行が続いています。感染者数の増加に伴い、感染しているかを確認する検査も膨大な数になりました。この問題を解決するべく、アリババグループは、研究機関である達摩院(DAMO Academy、以下、達摩院)とクラウドコンピューティングの開発・運用を担うアリババクラウドとの協力により、テクノロジーによる支援ソリューションを開発しました。CT画像から診断する医療AIを開発。20秒以内という短時間で、感染しているかどうかを判断します。その分析精度は96%にまで達しており、診断効率を格段に向上させています。

達摩院とアリババクラウドが開発した医療AIは、湖北省、上海市、広東省、江蘇省など16の省・直轄市にある26病院で使われています。2月16日の導入からわずか6日で3万もの症例を検査しています。また、関連技術は中国各地に設けられた100カ所以上もの新型肺炎指定病院に導入、活用されています。

なぜ、医療AIによる検査が必要になったのでしょうか。

新型肺炎流行初期には感染例が少なく診断データが不足していたことから、CT画像での診断は困難でした。そこでPCR(核酸増幅法)検査が標準的な診断基準となりました。その後、診断データが増加するにつれ、CT画像での新型肺炎の特徴が明らかになり、今ではこちらが標準的な診断基準とされています。しかし、CT画像による検査にも課題はあります。患者1人当たりのCT画像は約300枚と多く、医師による検査には5分から15分もの時間が必要だったのです。

医師による肉眼でのCT画像検査

この課題を解決するために達摩院の医療AIグループは新たなソリューションを開発しました。新型肺炎には、AIの訓練に必要なデータが不足しています。

そこで、中国国家呼吸器系疾病臨床医学研究センターの鍾南山主任のグループをはじめとする、多くの医療グループによって発表した論文群を参照したほか、浙江大学医学学院付属第一医院、万里雲、長遠佳、古珀医院など多くの医療機関と協力し、データ不足という課題を克服することができました。5000例あまりのCT画像サンプルをもとに、新型肺炎の病巣テクスチャを識別する、新たなAIが完成したのです。

この医療AIは再帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network、以下RNN)を活用したもので、畳み込みニューラルネットワークによって、新型肺炎に罹患しているかどうかをCT画像から見分けるものです。最終的には1例あたりの検査時間は20秒未満に短縮し、識別精度は96%という高い水準に達しました。また、肺全体に占める病巣部位の比率を測定することで、病状の進行を量的に示すことも可能となりました。

CT画像検査以外にも、達摩院とアリババクラウドは「診断補助アルゴリズム」を開発しています。患者の基本的な情報、症状、検査結果、疫学的記録、CT画像などの複数の情報を分析し、医師による科学的な医療プラン策定をアシストします。

達摩院のアルゴリズム開発の専門家である許敏豊は、臨床データの蓄積に伴いAIは力を発揮できるようになると話しています。
「AIはすでに医師の診断効率向上の重要な手段となっています。特にCT画像の詳細な分析では、医師による肉眼での診断以上の効率があげられます。AIは将来、多くの病気の診断で価値を発揮すると予想されます。」

新型肺炎という新たな病気の対策で力を示した医療AIですが、今後さまざまな疾病対策で幅広い応用が期待されます。

研究開発と同じく重要なのが社会実装、すなわち現場での活用です。この方面で役割を果たしたのがアリババグループ傘下のヘルスケアサービスの阿里健康(アリババヘルス、銘柄コード:00241.HK)です。同社は病院にAI診断技術を導入する支援を行っています。同技術を導入した病院では医師が検査のために費やす時間が30~70%も削減されました。

また、新型肺炎に関して、地方の中小の病院の医師は臨床経験が不足しているという問題があります。そこで阿里健康はCT画像データベースから類似の事例を選びだし、医師の診断をサポートするAIソリューションを提供しています。達摩院がAI診断のアルゴリズムを開発する科学者ならば、阿里健康は実際に病院で使えるようにする具体的なサービスを増やす提供者という役割分担をこなしたのです。

(Alibaba News編集部:松沢しゃん/解説・翻訳協力:高口康太)

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