ジャック・マーが世界人工知能大会で国際協力を呼び掛け、「思い悩むのではなく責任を果たさなければならない」

国連デジタル協力に関するハイレベルパネルの共同議長を務めるジャック・マー(馬雲)は、7月9日に開かれた「2020世界人工知能大会クラウドサミット」にて、カメラを通じて基調講演を行いました。講演の中で、ジャックは新型感染症がもたらす変革やデジタル技術の今後について自らの考えを共有しました。「今回のパンデミックによって、私たちが自らのことが分からず、住んでいる世界のことが分からず、地球について理解せず、地球を大切に守る方法が分からないために、多くの問題や災害を引き起こしてきたこと改めて認識できた。」と述べ、最も重要なことは自分たちの問題と地球上の問題を解決することで、でなければ、どの惑星に移住してもまた同じような問題を繰り返してしまうと強調しました。

国連デジタル協力に関するハイレベルパネルの共同議長を務めるジャック・マー(馬雲)


今年の世界人工知能大会クラウドサミットは「智聯世界 共同家園」をテーマとし、7月9日~11日の3日間に渡って開催されています。オンライン参加を中心に、オンライン・オフラインを連動した形で行っており、テスラのCEOであるイーロン·マスクや国際電気通信連合(ITU)の代表も登壇されました。


以下は7月9日、ジャックによる基調講演の全文です。

李強党書記、(上海市)龔正市長、ご参加の皆様、おはようございます。

私は現在雲南省におりますが、本日は皆様にお目にかかれて光栄に思います。

今回のカンファレンスはおそらく歴史に残る、非常に特別なものとなります。第1回の世界人工知能カンファレンスが上海で開催されたときには、今年このような方法で議論を続けることになるとは、誰も想像できませんでした。

昨年のカンファレンスでは、機械は人間に取って代わるのか、将来の雇用はどうなるのかという懸念の声が一部で聞かれ、討論が行われました。そして現在、私たちは多くの仕事において、今すぐ機械に人間の代わりをしてもらう必要性に迫られています。たとえば、ウイルスが蔓延している地域では、人間の代わりに機械に問題を解決させる必要があります。世界は、かつて私たちが心配していたことは確かに起こっておりませんが、私たちが心配していなかったことが繰り返し発生する場所になっています。

現在の問題は、過去の決断によって生じています。しかし私たちにとっては、昨日を変えることも、今日を変えることも難しいです。私たちの未来は、今日下した決断で決まるのです。パンデミックが世界に変化をもたらす現在、それは自然からのメッセージ、未来からのメッセージと捉えられるかもしれません。私の3つの見解を、皆様にお伝えしたいと思います。

1つ目は、人類は地球なしでは生きられませんが、地球は人類がいなくても存続できるという点です。

産業革命後、人類は地球の外に目を向ける力を身につけました。月面に着陸し、宇宙ステーションを建設し、宇宙に住もうと試みました。イーロン・マスク氏をはじめ、多くの優れた方々が既に、地球外の世界を探索するという偉業を成し遂げています。

また、デジタル革命によって、人類は内面を探索し、本当の意味で自らを知り、また地球を理解することができるようになっています。相対的に見ると、自らを理解することのほうが難しく、より重要です。

現在人類は、自らについて極めて限定的にしか理解していません。最も成果を上げている科学者ですら、人間の脳については10%足らずしか理解していません。今回のパンデミックは私たちに、私たちがいかに自らのことを知らず、また地球のことを知らないかを浮き彫りにしました。私たちは自らのことが分からず、住んでいる世界のことが分からず、地球について理解せず、地球を大切に守る方法が分からないために、多くの問題や災害を引き起こしてきました。私たちにとって最も重要なことは、自分たちの問題と、地球上の問題を解決することだと思います。さもなければ、私たちはどこへ行こうとも、どの惑星に行こうとも、こうした問題や災害に直面するでしょう。

人類は地球なしでは生きられませんが、地球は人類がいないほうが良くなるかもしれません。日本の奈良では、観光客が減少したことで、シカがおやつを食べる機会が減り、結果として消化器系の健康状態が改善しているというニュースを目にしました。イタリアのベネチアでは、封鎖後に水質が改善し、魚が見られるようになりました。地球が1つの企業であるならば、本当の社長は母なる自然です。人類は、母なる自然によって選ばれた、マネージャーすぎません。人類には力はありますが、母なる自然はいつでも私たちを解雇できるのです。

多くの課題は、人類の観点からは間違っているようには見えないかもしれませんが、母なる自然からは、重大な過ちと捉えられる可能性があります。私たちが母なる自然に対して災難をもたらし続ければ、母なる自然は必ず人類に災害をもたらすでしょう。私たちは、母なる自然と共存する方法を学ばねばなりません。人類が母なる自然に従い、尊重して初めて、私たちはこの地球上で生きられるのです。

2つ目は、経済成長は遅くなる可能性がありますが、人類は進歩し続けなければならないという点です。

今回のパンデミックにより、世界の生態系をコントロールしているのは、頂点に位置する動物ではなく、微生物であることが明らかになりました。アフリカのサバンナのようにライオンや象ではなく、微生物が環境を決定しているのです。人類は、自らが偉いと考えるべきではありません。

私は、AIを機械知能と捉えるべきだと考えています。AIを人工知能と呼ぶことは、自分たちを買いかぶりすぎています。多くの物事は人類には非常に難しく、機械にとっては極めて簡単です。動物には本能があり、機械には知能があります。私たち人類は、知恵を身につけるべきです。

数千年をかけて、人類の知識は急速に拡大し、技術は進歩しましたが、人類の知恵は増えていません。

現在、私たちはかつてない資源と富を得ており、かつてない知識と技術力も備えています。そして言うまでもなく、かつてない難問にも直面しています。私たちは、過去最高の知識、情報技術、リスク管理能力を手にしています。しかしながら極めて残念なことに、知恵が欠けているため、こうした資源、能力、知識を生かして連携や協力を強化することができない場合があり、むしろ分断が生まれ、差異が拡大しています。人類はしばしば災害に直面しますが、危機を乗り越えて成長しなければなりません。さもなければ、私たちの文明はウイルスによってではなく、私たち自身によって破壊されることになると私は確信しています。

民族も国も、同じものはありません。それはこれからも同様です。違いがあるからこそ多様な世の中があるのです。グローバルな問題の多くは、私たちがあまりに多くの違いに目を向けすぎた結果です。違いをはっきりさせたうえでそれを一旦、脇に置いて、お互いの違いを尊重し、認め合えるようになることが文明の進化の証です。

3つ目は、もし、これまではデジタルテクノロジーの導入によって私たちの暮らしがより良い方向に向かったとすれば、この先、人類がもっとうまく存続していくためにデジタルテクノロジーが役立つはずです。

パンデミックが起こっても、テクノロジー変革のトレンドは変わっていません。むしろ、最悪の事態によってイノベーションを余儀なくされたことで、デジタルテクノロジーの変革は加速しました。

医師が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)疑似症例の胸部CT画像を分析・診断するには、通常15~20分かかります。中国の技術者はCOVID-19感染者の胸部CT画像を非常に短時間で解析できるアルゴリズムを開発しました。今では機械がわずか20秒でCT画像を解析できるようになり、医師が行うよりも60倍効率が向上しています。

新型コロナ感染拡大の期間中に、人工衛星を使ったリモートセンシング技術を活用した審査プロセスを経て融資を受けた農家もあると聞きました。農家は自分のスマートフォンのアプリを使って地図上で自分の畑を識別し申告することができます。人工衛星はリモートセンシング画像技術を通じて、天候や産業動向を始めとする状況と併せて、収穫量の伸びを評価します。その後、機械による収穫量と出荷額についての予測に基づき、いくら融資できるのかが決定されます。

コロナ禍では、自分のためだけでなく、他の人たちが生活していくために、インターネット技術に活路を見出したケースが数多く見られました。最近では学校の授業、会議、買い物、医師の診察など、日常生活におけるあらゆる行動が全面的にデジタル技術に依存するようになっています。デジタル技術全体としてのトレンドに変化はないものの、完全デジタル化までの期間は30~50年ではなく、10~20年に短縮される可能性があります。これは(新型感染症がもたらす)大きな変化に続く激変だと言えます。テクノロジー変革は予想よりも早く、速度を速めてやって来ようとしています。私たちはしっかりと備えなければなりません。この状況は昨年とは全く異なっており、今年のAIカンファレンスはこの点に向き合う必要があります。

わずか1年で世界は大きく変わりました。今、すでに私たちには悩んでいる時間などありません。思い悩むのではなく責任を果たさなければならないのです。ウイルスにはパスポートなど不要で、国と国との境界もないからです。テクノロジーにも国境は不要です。今、事態は大変な状況に陥っていますが、これは始まりにすぎないかもしれません。私たちに選択の余地はありません。一刻も早く協力し、一丸となってお互いを受け入れることで、少しでも早く勝ち抜くことができるでしょう。

改めて、皆様、ありがとうございました。

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