「独身の日」をグリーン・イノベーション推進の契機に、アリババグループCTOチェン・リー(程立)による寄稿

 

天猫ダブルイレブン・ショッピングフェスティバル(以下「ダブルイレブン」)は、世界最大のEコマースの祭典であり、また最大規模のデジタルプロジェクトの一つです。 アリババは、2014年にダブルイレブンのトランザクションシステムを支える独自のデータベース「OceanBase(オーシャンベース)」を開発し、2015年には世界最大規模のハイブリッドクラウドアーキテクチャを立ち上げました。2019年には、中核となるトランザクションシステムをクラウドに完全移行しています。そして今年のダブルイレブンは、100%パブリッククラウドで運営された初のイベントとなりました。

「グリーン」をテーマにした今年のダブルイレブンでは、 技術革新により、淘宝網(タオバオ)の注文トランザクション1万件あたりのコンピューティング処理コストを3年前に比べて30%削減しています。

クラウドベースのテクノロジーをはじめとするイノベーションは、コンピューティング基盤の処理能力を飛躍的に向上させるだけでなく、社会および環境を持続可能にするうえで大きな役割を果たせると信じています。クラウド技術は、デジタル社会にとって最も重要な機能のひとつです。クラウドコンピューティング自体が演算処理能力の大幅な効率化を可能にし、また省エネのため、二酸化炭素排出量の削減に大きく貢献します。アリババグループはダブルイレブンを契機に、グリーンなクラウド技術の開発をさらに推進し、商品取引エコシステム全体のグリーン化を視野に入れながら、技術を活用して社会と環境の両方の面でより多くの貢献ができるよう取り組んでまいります。

実際、生産、取引、流通、輸送などの一連の過程で、二酸化炭素が排出されます。 商品取引エコシステム全体における二酸化炭素排出量とカーボンコストの抑制は当社が取り組んでいる課題です。ダブルイレブンの期間中には、膨大な量の取引が発生します。そのプロセスに伴うカーボンコストを下げるには、主に以下のような方法があると考えています。

1つ目は、より環境に優しいデータセンターを実現することです。アリババは、これまでもデータセンターのエネルギー消費量の削減を最優先課題として取り組んできました。例えば、中国河北省張北県や杭州市仁和県にあるデータセンターでは、風力発電による再生可能エネルギーの利用や浸水式液冷サーバーなど、さまざまなグリーン技術を使用しています。今年のダブルイレブンを支えている張北データセンターではクリーンエネルギーを利用することで、2.6万トンの二酸化炭素削減を達成しました。

2つ目は、データセンターの稼働率の向上です。一般的にデータセンターの稼働率は低く、特に小規模なデータセンターでは10%未満のケースもあります。クラウドアーキテクチャを通じて、コンピューティング処理能力を共有し、リソースを一元的に管理して効率よく分配することで、データセンターの利用率を大幅に向上できます。今年のダブルイレブンでアリババは、すべてのサービスをクラウドに移行し、クラウドネイティブアーキテクチャを活用したことで、コンピューティングリソースのより効率的な利用を実現しました。

3つ目は、コンピューティングプロセッサの最適化やグリーン・コンピューティングにより、単位計算能力あたりのエネルギー消費量を削減することです。今年のダブルイレブンでは、アリババDAMOアカデミー(達摩院)が開発したAIプロセッサ「Hanguang 800」の推論処理機能がタオバオの検索サービスに応用され、従来のGPUと比較して、アルゴリズムの効率が約2倍に向上し、単位処理量あたりのエネルギー消費量を約58%削減しました。また、アリババが自社開発した大規模のAI事前学習モデル「M6」をダブルイレブンに適用しました。より高効率なアルゴリズムモデルを通じて、処理能力の向上と二酸化炭素排出量の削減に貢献します。例えば、Tシャツを製造する場合、M6モデルが衣服の初期デザインのサンプルを自動的に生成し、その後人間がデザインを最終化できます。さらにアリババのスマート製造「迅犀(シュンシー)」のようなデジタル工場で環境に配慮した生地を使って生産することで、従来のプロセスと比較して二酸化炭素を30%以上削減できます。

また、商品の流通や輸送も重要な要素で、先進的な技術を用いて省エネや二酸化炭素排出量の削減を推進できます。例えば、アリババでは革新的なデジタル・サプライチェーン・ソリューションを小売事業者に提供しており、取引を高精度で予測するほか、購入者の近くで在庫を確保できるようにしました。さらに、物流分野では、当社のアルゴリズムにより梱包箱のデザインを最適化し、小売事業者には最適な輸送ルートを提案できます。また、当社の物流プラットフォームである菜鳥(Cainiao、ツァイニャオ)では、より環境にやさしい梱包箱の素材を使用するとともに、スマートな取引プラットフォームの組み合わせを利用して、さらなる二酸化炭素排出量の削減を実現します。

それだけではありません。エネルギー分野でも環境気象分野でも、今後解決しなければならない課題はまだまだ多く、より積極的な技術開発が求められています。例えば、アルゴリズムを最適化し、エネルギー業界の二酸化炭素排出量の削減に貢献していきたいと考えています。再生可能エネルギーは、日射量や風力など、エネルギー生産量に直接影響する環境や気象に大きく依存しており、リアルタイムで正確な気象予測への要求はますます高くなっています。そのため、当社はAIによる近距離天気予報プラットフォームを立ち上げ、リアルタイムでより正確な天気予報サービスを提供し、エネルギー業界がより効率的に業務を運用できるように支援したいと考えています。アリババグループでは、産業界の生産コストや二酸化炭素排出量の削減を根底から支えるソリューションを提供できるよう、最先端分野の研究を進めてまいります。

今日の企業は自社の事業成長率などの経済的な要素だけでなく、長期的な持続可能性や、時代のニーズへの対応、品質の高いビジネスの発展、自社の社会価値の実現などをさらに意識していく必要があります。グリーンなコンピューティング処理リソースへの需要は爆発的に増加しており、鉄鋼・電力・石炭業界では脱炭素化・二酸化炭素排出量削減への要求が高まり、一般消費者は「グリーン・ロジスティクス」や「低炭素商品」への期待を高めています。 この動きは、クラウドコンピューティング、そしてアリババにとっても新たな機会であり、また今後さらに取り組むべき課題でもあります。

技術革新は、省エネや二酸化炭素排出量の削減を推進するにあたって強力な手段になりえます。アリババは、ダブルイレブンを機に、パートナー企業、小売事業者、お客様の協力を得ながら、持続可能な社会の実現に向けて、継続的に技術創出を推進してまいります。

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