アリババグループ 会長兼CEO ダニエル・チャンの投資家に向けた手紙
投資家の皆様:
いつもアリババグループへのご関心とご支援をありがとうございます。我々は本日、香港証券取引所に上場しました。これは、20歳という若いアリババグループの新たなスタートです。
世界はデジタルエコノミーに移り変わりつつあります。私たちは変化、挑戦、チャンスに満ちた類いまれな時代を生きています。このような時代背景に対して、アリババグループはどのようにミッションを守り続け、どのように絶えず未来に向けて継続的にイノベーションを行うのか。社会、お客様、消費者、投資家のために、どのような価値を創造するのか?私たちの考え方、計画、行動方針を皆様と共有したいと思います。
102年以上続く良い企業になりたい
アリババグループはミッション、ビジョン、コアバリューによって動く会社です。アリババグループの企業文化は、私たちが人と社会のすばらしさを信じることから生まれました。我々はデジタエコノミー時代の到来に伴って、何が変えられるのか、何が変えられないのかを考え続けています。2019年9月10日に行われたアリババ20周年記念式典で、我々はアリババグループの未来に向けたミッション、ビジョン、コアバリューを全面的にアップデートしました。我々が最初の創立時に掲げた『あらゆるビジネスの可能性を広げる力になる(To make it easy to do business anywhere)』というミッションは変わらず、「102年(3世紀)以上続く企業になる」というビジョンを「102年(3世紀)以上続く良い企業になる」へアップデートしました。アリババグループは「大きな企業」、「強い企業」になることを求めず、「良い企業」になることを望んでいます。社会にポジティブなエネルギーをもたらし、より多くの社会的責任を担い、中小企業(SMEs)に貢献し、従業員と株主が満足できる、良い企業になりたいと考えています。
同時に、アリババグループの6つのコアバリューを刷新しました。アリババグループの企業文化はコアバリューに根ざしており、顧客とステークホルダーにとって最良の意思決定を行うための指針となっています。アリババグループをゼロから今日までの成功に導く原動力でもあります。世界がどのように変化しても、我々が成長し続ける唯一の方法は、ミッション、ビジョン、コアバリューに忠実であり続けることです。
- Customers First, Employees Second, Shareholders Third
客户第一,员工第二,股东第三 - Trust Makes Things Simple
因为信任,所以简单 - Change Is the Only Constant
唯一不变的是变化 - Today’s Best Performance Is Tomorrow’s Baseline
今天最好的表现是明天最低的要求 - If Not Now, When? If Not Me, Who?
此时此刻,非我莫属 - Work Happily, Live Seriously
认真生活,快乐工作
それぞれのコアバリューの詳しい説明はこちらのニュースリリースをご参照ください。
https://www.alibaba.co.jp/news/2019/09/6-1.html
デジタルエコノミー時代の、新たなビジネスの枠組み
デジタルエコノミーの特徴は、インターネットと製造業、農業、サービス業、および公共部門との、多角的かつ継続的な融合です。これにより、開放、共有、共創、Win-Winの原則に基づいた新たなビジネスの枠組みの出現を促し、従来のゼロサムビジネスモデルから脱却し、顧客の利益と価値の創造に改めて焦点を当てています。デジタル技術はよりフラットに社会全体に機会をもたらし、より持続可能な発展を推進します。アリババグループは、デジタルエコノミーの新たなビジネスの枠組みの創造に貢献することを強く望んでいます。
20年を経て、アリババグループが当初設立したEコマースの事業会社は、デジタルエコノミー時代のビジネスインフラに発展し、デジタルコマース、金融テクノロジー、スマート物流、クラウドコンピューティング、ビッグデータを含む独自のデジタルエコシステムを形成しました。このデジタルエコシステムを通じて、様々なパートナーと共に、消費者と企業の両方にサービスを提供することで、新たな消費を刺激し、作り出すと同時に、各産業のデジタルトランスフォーメーションとアップデートを支援しています。我々は多くの中小企業の成長をサポートするとともに、新たな企業の発展を支援することを望んでいます。大樹の下では、小さな苗木が育つようにすると同時に、たくさんの苗木を大樹へ成長させることも必要です。
未来に向けた目標と戦略
今年2019年9月にアリババグループは20周年を迎え、今後5年間の戦略目標を発表しました。10億人以上の中国消費者を含む世界中の消費者にサービスを提供し、プラットフォームで10兆元以上(155兆円以上※)の消費規模を創造するという目標です。2036年までの長期的な目標は、20億人以上の世界中の消費者にサービスを提供し、1億人以上の雇用を創出し、1,000万の中小企業がプラットフォームで収益を上げられるようにすることです。今後5年間の戦略目標の達成は、2036年までの長期的な目標を実現するために必要な土台づくりとなるプロセスです。(※1中国人民元=15.5円で換算)
これらの戦略目標を実現するために、グローバル化、中国国内消費、クラウドコンピューティングを活用したビックデータ、という3大戦略を引き続き推進する必要があります。
- グローバル化はアリババグループの未来です。デジタル技術とビジネスの融合は、国境にとらわれない、これまでにない変化をもたらすと確信しています。デジタル技術は、ビジネス、金融、物流などの分野で広く応用されることで、異なる国・市場間でも貿易の効率を大幅に向上させます。まさにミッションの文字通り、”どこでも(anywhere)”簡単にビジネスを行うことを支援します。我々は引き続き、「グローバルショッピング、グローバルセールス、グローバルペイメント、グローバルロジスティクス、グローバルトラベル」といった5つのテーマに注力し、世界のデジタルエコシステムの発展と繁栄を推進していきます。
- 中国国内消費は中国経済の未来です。中国経済は、投資や輸出主導型経済から消費主導型経済へ移行しています。現在、アリババグループの中国の小売プラットフォームにおける月間モバイルアクティブユーザー数は85億人に達しています。彼らは非常にアクティブで若く、中国の将来の消費力を代表しています。
現在中国で起きている新興地域の都市化、数億人の中流階級の消費者の出現、および消費者全体のインターネットユーザーへの転換は、国内消費の大幅な成長の可能性をもたらし、デジタル技術が消費の成長に新たな可能性を提供しています。多様な商品やサービスを供給し、様々な層の消費者の多様なニーズを満たすことが望まれています。さらに、ビッグデータを通じて、供給側をイノベーション・再構築し、新たな供給を通じてマーケットと直接結びつけ、消費者の新たな需要を創造したいと考えています。 - ビッグデータとクラウドコンピューティングは、デジタル経済の燃料とエンジンです。アリババグループのデジタルエコノミーのインフラでは、継続的にデータが蓄積されるだけでなく、ビジネスのあらゆる面でデータインテリジェンスを応用することで、エコシステムの成長と繁栄を実現します。デジタルエコノミー時代では、コンピューティングの力が次世代の生産力を決めると信じています。
将来、ビッグデータがビジネスの意思決定と運用を推進し、全ての企業がインターネット企業のようになります。アリババグループが直面する大きなチャンスは、特定の産業の単なるアップデートではなく、全ての産業の変革です。そのために、我々は「アリババビジネスオペレーティングシステム」の開発に全面的に投資し、デジタル商取引、金融テクノロジー、スマート物流、クラウドコンピューティングなどのインフラをお客様とパートナーに開放し、デジタルトランスフォーメーションを成功できるよう支援します。
企業文化の継承と未来の創造
企業文化はアリババの基盤であり、イノベーションはアリババグループのDNAです。10年間の探求を経て、アリババグループは独自のパートナーシップ制度に基づいたコーポレートガバナンスモデルを確立、発展させてきました。我々は、ミッション、ビジョン、コアバリューに基づいた文化を伝承するために、パートナーシップ制度を維持しています。
今年2019年9月10日に、マネジメントチームの全面的なアップデートを完了させました。これは我々にとって、将来の発展における重要なステップです。この急速に変化する世界の中では、革新を続け、絶えず自身に挑戦し、自身を覆すことも必要です。人材の開発にも同じアプローチを使用しています。人材はアリババグループの最も貴重な資産であり、未来に向けた「未来を創り出す者(Future Shaper)」を次々に生み出す必要があります。これが、多くの若者に創造と新しい試みを促し、多くの女性に重要なポジションを担当してもらい、グローバル人材を育てることに注力している理由です。
そして香港へ
香港は世界で最も重要な金融センターの一つであり、香港の資本市場では多くの胸を躍らせる改革が常に起こっています。この継続的な変化がもたらす香港の未来の構築に、我々も貢献したいと考えています。
アリババグループの発展へのご支援およびご尽力に、改めて感謝申し上げます。アリババグループには、「信じるからこそ見える」ということわざがあり、未来は「信念を信じる」人のものです。アリババグループは、引き続き粘り強く努力します。
ダニエル・チャン
アリババグループ 会長兼CEO
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