アリババグループ会長兼CEO ダニエル・チャンの2022会計年度および第4四半期決算発表についてのコメント
概要:アリババグループの2022会計年度および第4四半期業績発表後、ダニエル・チャン(張勇)会長兼CEOは、投資家向け説明会でコメントを発表した。中国での新型コロナウイルス感染症の再拡大や地政学的な対立など、激動の四半期となったが、アリババは、質の高い消費者基盤、高度なEコマース基盤、世界トップクラスの技術革新という3つの柱を基礎とし、着実な成長を遂げてきた。
(以下は5月26日のコメントの詳細)
皆さん、こんにちは。本日は、当社の決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。
中国での新型コロナウイルス感染症の再拡大による困難なマクロ経済や不透明な地政学的情勢を受けても、アリババは2022会計年度において堅実な業績をあげました。
2022会計年度には、中国の年間アクティブ・コンシューマー(AAC)数が1億1,300万増え、10億人という目標を達成し、グローバルでは1億7,700万人増の13億1,000万人を記録しました。また、GMV(流通総額)は8.3兆元(約158兆円)を記録し、中国国内で8兆元(約152兆円)近く、中国国外では3,410億元(約6兆4,800億円)となりました。さらに、クラウドコンピューティング事業は、中国での市場リーダーシップを維持しながら、初の通期黒字を達成しました。
“新会計年度においては、コストコントロールに一層注力し、引き続き経営効率を高めていきます。
これには、不採算事業の整理、キャッシュ・サイクルの改善、
人的資本や固定資産などへの投資効率の向上が含まれます。
当社は、不確実性が高い状況においても、高い財務流動性を維持していきます”
さて、中国での新型コロナウイルス感染症の現状について、もう少し詳しくご説明したいと思います。
皆さんご存知のように、中国では3月からオミクロン株の感染が拡大し、深圳を含む珠江デルタや上海を含む長江デルタ、また北京などの消費と製造の中心地に影響を与えています。
4月後半には、中国の80都市以上で新規感染者が確認されました。これらの都市のほとんどが経済の中心地で、このような広範囲に渡る感染拡大が、中国経済に大きな不確実性をもたらしています。3月と4月の中国国内での小売売上高は前年同月比マイナスを記録し、オンライン販売も歴史的な前年割れを記録しました。
各事業に程度の差こそあれ、新型コロナウイルス感染症の再拡大は、私たちのビジネスに影響を与えました。全体として、4月の増収率は前年同月比で1桁台前半のマイナスでした。中国小売市場におけるオンライン商品のGMV(流通総額)は、未払い分を除き、4月は前年同月比で10%台前半の減少でした。
消費者の登録住所に基づき集計したデータによると、4月に新規感染が発生した都市は、当社の中国小売事業のGMV(流通総額)の半分以上を占めています。また、これらの都市には、上海、深圳、およびその近郊都市などの主要な商圏が含まれており、サプライチェーンや物流の混乱により、広範囲に影響が及んでいます。
この間、ユーザーのトラフィックとエンゲージメントが堅調に推移する一方で、当社プラットフォームのさまざまな商品分野における消費パターンが変化しました。例えば、ファッションや電化製品の消費は減少した一方で、食品や日用消費財などの必需品を備蓄する消費者が増えたことで、食品や日用消費財の需要は大幅に増加しました。また、ヘルスケア、スポーツウェア、アウトドア製品などの新興カテゴリーも急成長しました。現地の物流能力は4月比で大きく回復しています。
安定した経営
このような状況下、経営の安定性と持続可能性はすべての企業にとって最大の関心事であると考えます。不透明な状況の中で安定なサプライチェーンや物流能力を確保することは、消費マインドを改善し、事業運営により良い環境を醸成するための最良の方法であるためです。
また、中国以外のマクロ環境も不透明な状況です。第4四半期、マレーシア、ベトナム、タイが地域平均を上回る受注成長率を達成しましたが、コロナ禍後の東南アジアでオフライン消費が徐々に回復してきたため、Lazadaの受注数は前年同期比32%増と減速しました。Trendyolは、トルコで引き続き市場を牽引し、四半期ベースで前年同期比48%増の受注を達成しました。
第4四半期のAliExpressの受注高は、主にEUの付加価値税(VAT)免税に関する政策変更の影響、コロナ禍後の現地サプライチェーンとオフライン消費の回復、および地域紛争による国際物流の混乱により、前年同期比で減少しました。
地政学的な対立や不確実性はあるものの、グローバル化戦略の展開に向けた努力を継続していきます。アリババは、越境Eコマースと事業を展開する各国と地域のEコマースを組み合わせたビジネスモデルで中国国外の消費者にサービスを提供し、国外でのEコマースのインフラ構築の一環として、世界中の物流ネットワークに積極的に投資していきます。
地政学やマクロ経済における不確実性に直面し、多くの企業がコスト削減や損失削減を行いながら、質の高い成長を目指すようになりました。アリババも質の高い成長を原則としており、特に今回のコロナ禍では、当社が時間をかけて構築した3つの強固な基盤—質の高い消費者基盤、高度なEコマースインフラ、世界トップクラスの技術革新―がもたらすメリットを実感しています。以下、詳しく説明します。
質の高い消費者基盤:
激しい競争の中でも消費者のマインドシェアとウォレットシェアを獲得
私たちは、タオバオとTmallを通じて、中国で最大かつ最も質の高い消費者層にサービスを提供しています。アリババが抱える中国の年間アクティブ・コンシューマー10億人のうち、1億2,400万人の消費者がタオバオとTmallで年間1万元以上を消費し、これらの消費者の98%が翌年もアクティブ・コンシューマーとして残っています。
今後も、パーソナライズ化した価値提案を提供する包括的なコンシューマー向けアプリのポートフォリオを強化し、最もアクティブなユーザーを中心に、消費力や消費者マインドに基づき多様なニーズに応えていきます。
具体的には、購入前の段階においては、消費者マインドを明確に分析し、パーソナライズ化したコンテンツを紹介することで、滞在時間を増やし、商品に対する興味を喚起することで、消費者の意思決定に影響を与えることを意味します。購入後の段階では、フルフィルメントとカスタマーサービスを充実させることです。
これこそが、激しい競争の中で消費者のマインドシェアとウォレットシェアを獲得するための勝利の方程式だと信じています。
高度なEコマースインフラ:
コロナ禍における迅速な支援を実現
アリババは長年にわたり、都市間と都市内のフルフィルメントを組み合わせたハイブリッドモデルに基づいて、Eコマースにおける包括的なインフラを構築してきました。
ユーザーへの支援、商品やサービスの効果的な供給体制、都市やコミュニティを網羅するフルフィルメントサービスを通じて、当社のインフラは、コロナ禍で消費者が生活必需品を入手するための重要な手段となりました。特にここ2~3年は、既存のビジネスモデルの上に、サプライチェーンやフルフィルメントなどの中核機能、オンライン・オフラインを統合した流通ネットワークを構築し、位置情報に基づくEコマースを創出しています。
当社のデータによると、位置情報にもとづく当社のEコマース事業の3月と4月の平均受注額は、コロナ禍の買いだめを受け大幅に増加しました。その結果、コロナ禍でフルフィルメント能力の不足による受注減少があったものの、これらの位置情報にもとづくEコマース事業のGMV(流通総額)は、前年同期比で堅調に推移しています。
ウーラマ(餓了麼)のフードデリバリー事業が大きな影響を受けている一方で、小売分野のデリバリー事業が急成長しています。特に、食料品や医薬品の分野が非常に好調で、前年同期比100%以上の伸びを示しています。ウーラマ(餓了麼)は引き続きオペレーションの強化と物流費(単価)の引き下げを行ったことで、第4四半期の注文当たりの採算性も大幅に改善し、赤字から黒字に転換する勢いでした。
当社のインフラは、コロナ禍で重要な役割を担っています。例えば、フーマー(盒馬鮮生)、淘鮮達(Taoxianda)、天猫スーパー(Tmall Supermarket)、ウーラマ(餓了麼)など、当社のさまざまな事業が、中国でコロナ禍の影響を受ける都市に必要物資を提供しています。アリババは、Eコマースとテクノロジーを活用した取り組みを通してビジネスで社会的責任を果たし、コロナ禍における地域社会への必需品の供給支援に取り組んできました。
具体例として、次のようなものがあります。
- サンアート・リテール、フーマー(盒馬鮮生)などの事業部は、中国各地から上海に数千人の宅配業者や現場作業員を派遣し、住民への生活必需品の供給と配送を支援しました。
- ウーラマ(餓了麼)は2022年4月だけで250万件以上の医薬品の注文に対応し、上海の家庭に配送しました。また、市内の社会的弱者向けの緊急配送サービスも開始し、同月中に7万件近くの緊急依頼に対応しました。
- ツァイニャオ・ネットワーク(菜鳥網絡)は、有事に対応できるように、災害対策管理、緊急輸送、中継、配送を包括した緊急物流システムを構築しました。
- 地図ナビゲーションツールAmap(高徳地図)は、5月中旬までに中国国内350都市以上を網羅する、PCR検査場マップの提供を開始しました。ユーザーは、近くの検査場や営業時間などを簡単に検索することができます。
- タオバオとTmallは、上海のマーチャントおよび6月18日のショッピングフェスティバルに参加するマーチャントが、最大限にキャッシュフローを維持し、運営コストを削減し、仕事と生産の再開を早められるよう、一連の重点的救済策を打ち出しました。
世界トップクラスの技術革新:
高い潜在成長性を持つクラウド市場を牽引
Alibaba Cloud(アリババクラウド)の競争優位性は、複雑で要求水準が非常に高いアリババグループ全体の事業を支える一方で、世界中の多業種のお客様にサービスを提供している世界トップクラスの技術と製品です。
2022会計年度、Alibaba Cloudは中国における市場シェア1位を維持し、初めて通期の黒字を達成しました。GAAPベースの売上高は前年度比23%増の746億元(約1兆4,200億円)に達し、事業間取引控除前の売上高は1,000億元(約1兆9,000億円)を超えました。
第4四半期、Alibaba Cloudの売上高は前年同期比12%増でした。成長の減速は、コロナ禍の規制による企業活動の低下やプロジェクトの遅延、インターネット業界の顧客の成長鈍化、中国以外のパブリッククラウドサービスの上位顧客による段階的な契約解除など、いくつかの要因が重なったことによるものです。
これらの影響は一時的なものであると考えています。中国のインターネット業界全体でユーザーのトラフィックと利用時間の限界点に近づいているという課題に直面しているため、クラウドサービスの需要が減速していますが、他の業界のデジタル化は始まったばかりで、多くの機会があると見ています。クラウドコンピューティングとデータインテリジェンスサービスは、デジタルトランスフォーメーションが進むあらゆる業界の事業基盤となるものです。
業界予測によると、中国のクラウド市場規模は2025年までに1兆元(約19兆円)に達すると言われています。Alibaba Cloudは、今後も中核のテクノロジーと製品を向上させ、高い潜在成長性を持つクラウド市場を牽引していく予定です。
“アリババの長年にわたる確固たる経営と事業運営が、
質の高い顧客基盤、高度なEコマースインフラ、世界トップクラスの技術革新を生み出しました”
また、当社は、マルチエンジン成長戦略、強固な財務基盤、収益性の高い事業、潤沢なキャッシュフローを有しています。これらは、不確実なマクロ環境が続くなかで重要な保証となるばかりではなく、将来にわたって健全で持続可能な発展を追求し続ける自信の源となります。
2023会計年度について
2023会計年度においては、コスト抑制に一層注力し、引き続き経営効率の向上を図ります。これには不採算事業の整理、キャッシュ・サイクルの改善、人的資本や固定資産などへの投資効率の向上、不確実性が高いなかでも財務流動性を維持することなどが含まれます。
中国政府は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、経済と雇用市場の安定化に注力するという重要な政策を発表しました。また、健全な規制環境でインターネットプラットフォーム経済の発展を促進することについても、声明を発表しています。
昨日、国務院は全国会議を開催し、複数の経済政策の実施に向けて動員をかけました。アリババは、中国のインターネットプラットフォーム経済を代表する民間企業の一つとして、技術と商業における革新で、中国の発展を支援することに尽力しています。
アリババは、中国の消費者のより良い生活の追求だけでなく、さまざまな業界のデジタルトランスフォーメーションのニーズにも対応していきます。また、新型コロナウイルス感染症との戦いの最前線に立ち、食糧やその他の生活必需品を必要としている地域社会への供給支援も引き続き行います。
インターネットプラットフォーム企業が、市場安定化、雇用創出、質の高い中国経済の発展により貢献できるような政策の導入と実施を楽しみにしています。
経済発展の歴史には、常に紆余曲折がありました。長い目で見れば、私たちは中国経済の回復力と潜在成長力を強く信じています。
このような時期だからこそ、経営基盤を強化し、イノベーションと顧客価値の創造に注力し、アリババの長期的な成長への投資と計画を継続していきます。
皆様、お忙しい中、お時間を頂きありがとうございました。
原文:Alibaba’s CEO Daniel Zhang on Q4 Earnings
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