「世界でもっとも影響力のある100人」にアリババのダニエル・チャン会長兼CEOが選出

解説:
米誌『タイム』の名物企画「世界でもっとも影響力のある100人」が9月23日に発表された。日本人としてはジャーナリストの伊藤詩織さんとテニスの大坂なおみ選手が選ばれて話題となったが、アリババグループの張勇(ダニエル・チャン)会長兼CEOも選出された。偉大な創業者である馬雲(ジャック・マー)からバトンを受け渡されてまだ1年あまりだが、新型コロナウイルス対策でもリーダーシップを示すなど、高い評価を受けている。

アリババグループ会長兼CEOの張勇(ダニエル・チャン)が米誌『タイム』の企画「世界でもっとも影響力のある100人のリスト」2020年版に選出されました。以下は『タイム』に掲載された、アリババグループの蔡崇信(ジョセフ・ツァイ)副会長による紹介文です。

 

2007年のある雨の日、初めてダニエルに会いました。当時、彼はある上場テック企業の最高財務責任者(CFO)でした。その年、ダニエルはアリババグループにジョインしますが、われわれはちょうどC to Cマーケットプレイスのタオバオ(淘宝)の収益モデルを探しているところでした。なぜダニエルがアリババでの仕事に興味を持ったのか不思議に思っていましたが、加入から十数年が過ぎた今、ダニエルは馬雲(ジャック・マー)の後継者としてアリババグループ董事会主席を務めるまでにいたりました。

伝説的創業者の後継者となる……これはおよそ実現不可能なことだったはずです。それをダニエルは見事に成し遂げました。その過程では多くの功績を成し遂げています。誰も知らない記念日でしかなかった11月11日(独身の日)を世界最大のネットショッピング・フェスティバルに生まれ変わらせるという偉業をやってのけました。2019年のダブルイレブン(毎年11月11日の独身の日に開催されるネットセール)では、GMV(流通総額)384億ドル(約4.2兆円)の新記録を達成しました。それだけではありません。世界初となるマルチチャネルの生鮮スーパーを生み出しました。店頭であれ、自宅であれ、消費者はスマホを操作して注文することができるスーパーです。このプロジェクトはジャック・マーにすら秘密にされていました。隠しきれないほどの成功を収めてはじめてジャックは知ったのです。ダニエルの知恵とエネルギーはずば抜けていますが、それ以上に謙虚さと忍耐力からなるリーダーシップが認められています。

そして、ダニエルは勇気と創造力によって、新型コロナウイルスの流行というもっとも厳しい時期を乗り越えました。サプライチェーンの運行を止めず、中小企業を支援し、さらにAI(人工知能)による新型コロナウイルスの疑い症例の診断を支援するソリューションまで開発しました。

世界経済が広い範囲で打撃を受けたこの一年に必要だったのは、穏健なリーダーだったのでしょうか?それともイノベーションがもたらしてくれた興奮だったのでしょうか?ともあれ、ダニエルはその両者を兼ね備えていたのです。


新型コロナウイルスの流行により全世界の経済と生活が大打撃を受けました。特に体力のない中小企業にとっては厳しい経営環境です。4月7日、ダニエルは「春の闘い( Springtime Battle )」 と題した公開書簡を、アリババグループの全従業員に送り、中小企業を支援する特別アクション春雷計画2020の発動を宣言しました。過去20年間にわたり、アリババグループが蓄積してきたビジネスとテクノロジーの力を使い、サプライチェーンと消費の回復に努めることで、中小企業と手を携えて、この苦境を乗り越えようとするものです。「中小企業に活力があれば、社会経済に活力が戻る。中小企業が振興すれば、社会経済が栄える」とダニエルは明言しました。

今年8月中旬、雑誌『フォーブス中国版』は2020年フォーブス中国ベストCEOランキングを発表しましたが、ダニエルは第1位に選出されました。昨年12月にも米誌『フォーチュン』の「ビジネスパーソン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ、「結果でメッセージを伝える」人物だと評価されています。さらに今年9月の『フォーチュン』の「世界を変える企業ランキング」では、アリババグループは2位に選ばれています。2015年のランキング創設から、最高の順位を獲得しました。

 

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解説・翻訳協力:高口康太

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