アリババグループ会長兼CEOダニエル・チャンより2022年10-12月期決算に関するメッセージ

概要:アリババグループの2022年10-12月期(2023会計年度第3四半期)決算発表後、ダニエル・チャン(張勇)会長兼CEOが、投資家向けにメッセージを発表した。新型コロナウイルス感染症対策の変更に迅速に対応するとともに、各事業のサービスや事業モデルの改善を通じて、当期も高い成長を遂げた(以下は、2月23日の決算発表におけるメッセージ全文)

アリババグループ会長兼CEOダニエル・チャン


皆さん、こんにちは。本日は当社の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

この四半期は、2022年12月の新型コロナウイルス感染症の急速な感染拡大により、当社の事業および運営は大きな困難に直面しました。そのような状況にもかかわらず、効果的な事業管理、コストの最適化、営業効率の改善により、調整後EBITAおよびフリーキャッシュフローは前年同期比で2桁の成長を達成しました。

感染がピークを超え、新型コロナウイルス感染症関連対策が撤廃され、すべてが急速に回復しつつあります。現状においては、総じて消費者マインドならびに景況感が上昇しています。物流は回復し、サプライチェーンや製造チェーン全体が活発化しています。様々な産業や部門でDX(デジタルトランスフォーメーション)が大きく加速しています。このような背景から当社の各事業は好調に推移しています。

先日、国際通貨基金(IMF)は、中国の今年の国内総生産(GDP)成長率を前年比5.2%に上方修正しました。新型コロナウイルス感染症対策の撤廃や中国の経済活動再開による景気回復が期待されることから、今年のアリババの発展の軸となる社内向けキーワードとして、「進歩」を掲げています。

当社は、マクロ環境の変化や大きな景気循環に迅速に対応する必要があります。「進歩」というキーワードは、マクロ環境トレンドのみならず、アリババ自身の発展のために適応していく必要性を表しています。

中国の新型コロナウイルス感染症収束後の経済発展において、当社の複雑なエコシステムにまたがる各事業はそれぞれの課題に直面していますが、当社は消費、クラウドコンピューティング、グローバリゼーションという3つの主要分野における戦略に自信を持ち続けています。

それでは、新型コロナウイルス感染症流行の厳しい環境下で、当四半期、当社がどのような実績を残したのか、また事業全般にわたってどのように好機を捉える予定なのかを、1月、2月の状況も踏まえてご説明します。

消費回復

当期の中国消費市場は、新型コロナウイルス感染症拡大による影響を強く受けました。タオバオ(淘宝)やTmall(天猫、Tモール)の流通総額(GMV)は前年同期比で一桁台半ばの減少となり、消費需要は大きく抑制されました。商品別では、アパレルやその他の消費財が低調だった一方、ヘルスケアやウェルネス関連商品は高い伸びを示しました。これは、中国国家統計局が発表したデータの傾向と一致しています。

今年1月から2月上旬にかけてEコマースが依然として全体的に低迷し、当社の中国コマース事業も新型コロナウイルス感染症や春節休暇中の帰省や旅行などにより、引き続き大きな影響を受けることになりました。しかし、2月で新型コロナウイルス感染症や春節旅行の影響が一段落し、仕事や生活環境が通常の状態に戻るにつれ消費が回復し始め、特にアパレルやスポーツ・アウトドアなどの商品に強い回復が見られました。また、マーチャントの皆様からも営業再開に向けた強い意気込みが感じられ、この回復傾向は今後も継続すると予測しています。

アリババグループの生鮮スーパー「フーマー(盒馬鮮生)」で買い物をする中国の消費者(写真出典:アリババグループ)

事業面では、タオバオとTmallにおけるユーザー体験と顧客価値の提案を強化し、市場リーダーシップを盤石にするため、以下のような施策を実施しています。

  • まず、ユーザーの粘着性と滞在時間を向上します。タオバオとTmallは、中国で最も多くのオンライン消費者を抱え、最も効率的な消費者向け取引プラットフォームとなっています。私たちは、競争優位性をさらに強化するために、ショート動画やライブ配信などの新しい形式で、消費関連のさまざまなコンテンツを継続的に投入し、ユーザーの粘着性、製品検索の容易さ、製品の影響力、ユーザーエンゲージメントを向上しています。
  • 第2に、価格に見合った価値提案を強化します。価格は、常に消費者の購買決定における重要な要素です。私たちは、マーケットプレイスの仕組み設計、販促マーケティング機能、タオター(淘特、旧・タオバオ特価版)の工場直送品や産地直送品のような小売モデルの革新を通じて、競争力のある価格設定に引き続き注力していきます。
  • 第3に、ローカル型Eコマースです。Taoxianda(淘鮮達)やタオツァイツァイ(淘菜菜)など、地元サプライチェーンと地元配送業者で注文に対応する近隣型Eコマースを通じて、頻繁に購入される生活必需品など、迅速さが重要な商品ニーズに応えていく予定です。

ローカルサービス事業では、ウーラマ(餓了麼)のレストラン系注文数の伸び率は、新型コロナウイルス感染症拡大による自宅消費の増加により、当期末にかけて回復しました。非レストラン系の注文量の伸び率については、レストラン系を大きく上回っています。ウーラマは平均受注額が増加したことで、売上増となりました。営業効率の継続的な改善により、マーケティングおよびロジスティクスにおける費用比率を抑えました。ウーラマのユニットエコノミクス(1受注あたりの収益性)は引き続き良好であり、今後も改善する予定です。新型コロナウイルス感染症の流行期でも、ウーラマは事業戦略を調整し、配送能力を維持し、供給の迅速な回復を支援しました。

新型コロナウイルス感染症のピーク時には、Amap(高徳地図)のユーザー規模や利用されたサービス規模に大きな影響がみられました。感染症の流行が落ち着くと、Amapの利用はすぐに回復しました。配車サービスや宿泊予約が大人気となり、Amapはあらゆる目的地向け事業を提供する新たなプラットフォームとなっています。

Fliggy(フリギー)の国内・海外旅行予約も、春節の連休中に急速に増加しました。過去2年間の継続的なサプライチェーンとサービス能力の向上の結果、Fliggyの国内航空券と宿泊予約の回復は、中国国家観光局が発表した国内旅行全体の実績よりも大幅に早く、かつ新型コロナウイルス感染症発生前の2019年の実績と比較しても上回っています。

グローバル展開

グローバルコマース事業において、各事業は着実に前進しています。Trendyolは、全体の受注量が前年同期比約50%増となり、地元の小売事業がより急速に成長するなど、力強い成長を続けています。

2月上旬にトルコで大型地震が発生した際、私たちは緊急支援物資のための組織作りと配送を積極的に行いました。現状、トルコにいる当社社員は全員無事です。Trendyolの事業運営は安定しており、災害支援のための経営資源を提供しています。

Lazadaについては、受注拡大のための最適化を継続した結果、受注損失も前年同期比で30%以上削減することができました。私たちは、Lazadaの展開地域である東南アジアへの投資を継続することを固く決意しています。

ツァイニャオ・ネットワーク(菜鳥網絡)との緊密な連携により、AliExpressは主要ルートにおける時間指定の注文配送を大幅に最適化しました。物流サービスの質が引き続き向上し、スペインやフランスでの付加価値税(VAT)や為替の影響も緩和されたため、AliExpressの注文量はプラス成長を見せ始めています。

アリババのグローバル戦略は、地域密着型の小売と越境事業の組み合わせにより、引き続き東南アジアと欧州に集中していきます。当社は、今後も持続可能な長期投資を行い、景気循環に耐えうる事業を構築していきます。

倉庫間を移動するツァイニャオのトラック(写真出典:アリババグループ)

ツァイニャオは今年で設立10周年を迎え、中国の国内物流や国際物流、ラストワンマイル、物流技術などを網羅する強固な総合事業を構築しています。また、グリーン物流や緊急対応物流の分野でも成長を続けています。

中国では、ツァイニャオはタオバオとTmallのお客様向けに玄関先への配達サービスを拡大し続けました。直近の天猫ダブルイレブン・ショッピングフェスティバルでは、ピーク時には1日1,800万点以上のタオバオとTmallの製品をお客様に届けました。この中には、戸口への直接配達のほか、住宅地のツァイニャオ・ステーション拠点を介して配達されたものも含まれています。

ツァイニャオは、ここ数年、独自の国際物流ネットワークも構築しており、当期末時点で15以上の国際仕分けセンターが稼動しています。

クラウド事業について

当四半期のクラウド事業全体の売上成長率は、前年同期比3%でした。パブリッククラウドの成長率は前年同期比で2桁でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響によるプロジェクト遅延からハイブリッドクラウドの収益が減少し、一部相殺されました。業種別売上高では、金融サービス、教育、自動車業界が成長を牽引しています。

また、昨年末に重要な組織変更を発表しました。私は、現在のアリババグループの会長兼CEOとしての役割に加え、Alibaba Cloud(アリババクラウド)の社長代行を引き受けました。この決定は、下記の検討事項に基づいたものです。

  • まず、クラウドコンピューティングはアリババの今後の中核的な戦略分野の一つです。イノベーションなどの技術は、Alibaba Cloudだけでなく、アリババグループ全体に影響を与えます。
  • 次に、Alibaba Cloudはアリババが実体経済にサービスを提供するための基盤でもあり、今後もリアルとデジタルの統合を推進することになります。
  • 最後に、クラウドコンピューティングとAIの融合において今が技術的な飛躍的進歩と発展のための重要な時期と考えています。

私たちは、世界有数のクラウドコンピューティングサービスプロバイダーとして、産業デジタル化がもたらす大きな可能性と、デジタル経済の基盤としてのクラウドコンピューティングの役割を強く信じています。

今後は、下記分野に焦点を当て、市場リーダーシップを強化し、今後の事業機会に備えたいと考えています。

  • 第1に、クラウドコンピューティングサービスの安定性と安全性を高めると同時に、テクノロジーの進化を通じてパフォーマンスの最適化とコスト管理を継続します。
  • 第2に、クラウドコンピューティングのための力強い開発者を育て、業界エコシステムを継続的に構築します。
  • 第3に、パートナー企業と協力し、さまざまな業界や分野のお客様にデータに基づく産業ソリューションを提供します。
  • 第4に、当社のオンラインワークプレイスコラボレーションプラットフォームDingTalk(釘釘)を統合した、総合的なクラウドサービス製品を推進し続けます。
  • 最後に、生成AIによって想像を超える飛躍的進歩を生み出すことが可能となったこの時代には、コンピューティングパワーが不可欠です。私たちは大規模な事前学習モデルを独自に構築し続ける一方、様々な生成AIモデルやそのアプリケーションのためのコンピューティングパワーを提供することで、市場機会を捉える準備ができています。

アリババグループは今年で創業24年目を迎えますが、これは中国の旧暦を2周したことを意味します。この間、当社は、消費者向けインターネット分野では中国におけるEコマース、産業用インターネット分野では中国におけるクラウドコンピューティングという2つの歴史的な機会を捉えました。

当社は、ビジネスや社会環境に影響を与えるテクノロジーを駆使し、今後の膨大な機会を捉えていきたいと考えています。評価が非常に難しい多くの不確定要素がありますが、アリババと中国の未来に大きな自信を持ち続けています。

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ダニエル・チャン 張勇 決算発表