アリババグループ会長兼CEOダニエル・チャンより2022年7-9月期決算に関するメッセージ

概要:アリババグループの2022年7-9月期(2023会計年度第2四半期)決算発表後、ダニエル・チャン(張勇)会長兼CEOが、投資家向けにメッセージを発表した。不確実なマクロ環境下においても、消費者へのエンゲージメントの強化や、最も購買力のある消費者層の規模拡大、顧客満足度向上などの戦略を堅持することで、当期も質の高い成長を遂げた(以下は、11月17日の決算発表におけるメッセージ全文)

 皆さん、こんにちは。本日は当社の決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。

 当社は不確実なマクロ環境下において本四半期を堅調に終えることができました。当期は、新型コロナウイルス感染症の再流行、国際的な地政学的リスクの高まり、海外市場におけるインフレと通貨下落などの要素が重なり、企業経営に重大な影響がもたらされました。様々な不確実性がもたらす課題に直面しながらも、アリババグループは引き続き業務効率化を図り、調整後EBITAは前年同期比29%増加しました。これは当社が持続可能な質の高い成長を追求した結果であり、アリババのエコシステムの堅実性の高さを証明するものです。

 中国国内の消費市場においては、タオバオとTmallの流通総額(GMV)が前年同期比1桁台前半の減少となりました。消費者の利用は安定していたものの、消費意欲が比較的弱まっており、結果として購買頻度が減少しました。当期、新型コロナウイルス感染症が再流行し、各地の地域内物流が影響を受け、物流の停止を余儀なくされることもありました。これはマーチャントの経営と消費者の顧客体験に悪影響を及ぼしました。製品カテゴリー別では、アパレルや電子機器は前四半期と比べ、前年同期比での減少幅が縮小しています。一方で、スポーツ&アウトドア用品、ペット用品などの趣味カテゴリー、健康関連用品などの分野では前年同期比でプラス成長となりました。

 私たちは、困難な環境においても以下の戦略を堅持することで良い成果を得ています。

  1. 消費者へのエンゲージメントを強化することで、デイリーアクティブユーザー(DAU)とマンスリーアクティブユーザー(MAU)数を安定させています。タオバオとTmallは、長期的に運営してきたプラットフォームであることから、消費者にとって主要な購買ツールとして深く根付いています。検索、発見、推奨、ライブ配信などの消費者動線の設計を通じて、消費者へのエンゲージメントを向上します。動画、写真、文章などの多様なコミュニケーションを通じて、消費者の意思決定に影響を与える重要な要素を強調することで、購買意欲を刺激し、消費を促しています。
  2. 最も購買力のある消費者層の規模拡大とスティッキネス(粘着性)をさらに強化しています。2022年9月30日までの1年間で、タオバオとTmallで1万元(約20万円)以上購入した顧客数は1億2,400万人以上を維持しており、顧客維持率(リテンション率)は98%でした。当四半期末現在、88VIP会員数は2,500万人以上を維持しており、加入者数も安定しています。また、GMVにおける貢献度は引き続き拡大しています。
  3. 販売中および販売後の顧客サービス、物流に関する顧客体験、オンデマンド型配送サービスなどの分野への投資を継続し、顧客満足度向上を図っています。顧客満足度に関する最新調査では、当期の消費者の物流及びアフターサービスへの満足度(NPS)が向上していることが明らかになりました。

 最近開催された天猫ダブルイレブン・ショッピングフェスティバル(以下、ダブルイレブン)では、タオバオとTmallのGMVは前年同期の実績とほぼ同じでした。この結果は前述の戦略の有効性を証明しています。ダブルイレブンの参加ユーザー数は前年同期比で1桁台のプラス成長となる6億人以上でした。購入者数は前年同期比で減少したものの、1人当たりの購入額は増加しました。消費者層別では、88VIP会員の98%以上がダブルイレブン期間中に購入し、総売上における貢献度が上昇しました。製品カテゴリー別では、当四半期と同様スポーツ&アウトドア用品、ペット用品などの趣味カテゴリー、健康関連用品などは前年同期比プラス成長となっており、電子機器カテゴリーでも同様のプラス成長となっています。しかし、いくつかの不利な要素がダブルイレブンの最終的な結果に影響を与えました。1つ目は、ダブルイレブン期間中は全国的に例年より気温がかなり高く、新型コロナウイルス感染症の流行も影響したことで、冬服などに代表される非生活必需品の需要が少なくなり、衣料品カテゴリーに重大な影響をもたらしたことです。2つ目は、10月からダブルイレブン期間中に、全国の15%の物流エリアが新型コロナウイルス感染症の影響により、物流サービスの一部または全部を停止することを余儀なくされ、マーチャントによる通常配送と速達に重大な支障が出たことです。これらは最近になってようやく改善されました。3つ目は、ダブルイレブンが社会全体で消費を盛り上げる共通の期間となっていることです。特に新型コロナウイルス感染症がいつ再流行するかわからない不確実な状況において、ダブルイレブンというイベントを最大限活用するために、オンラインとオフラインを含め多くのチャネルを使い、流通販路を多様化させました。

 当期、顧客管理収入(CMR)の減少幅がプラットフォームのGMV減少幅より大きいことが明らかになりました。これには下記のような要因があります。

  1. 新型コロナウイルス感染症の影響で配送が混乱し、期日に間に合わないことによる返品が増えた。
  2. ライブ配信などの販売方法により返品率が上昇した。
  3. 当社プラットフォームにおける返品の顧客体験が向上し、より気軽に返品するようになった。

 上記3つの要因が複合的に作用し、プラットフォーム全体の返品率は高くなっています。顧客管理収入(CMR)の計算方法では返品を考慮しないため、返品を除いて計算すると、実際にはテイクレートは安定していました。また、タオバオとTmallのアルゴリズムに基づく推奨によるページビューは増加しましたが、トラフィックのマネタイズの効率が悪く、短期的にはテイクレートを低下させる結果となりました。今後は、ユーザーのトラフィック構成の変化に対応し、より優れたマネタイズソリューションを導入することで、プラットフォームのテイクレートを長期的に安定させることを目指します。

 ローカルサービス事業では、当期はウーラマ(餓了麼)が事業戦略を積極的に調整し、モバイルアプリユーザー数の増加と維持及び主要都市における事業拡大に注力しました。同時に業務効率改善も図り、ユニットエコノミクス(1受注あたりの収益性)は引き続き向上しています。これは主に平均受注金額の増加、ユーザー獲得コストと物流最適化による配送コストの削減によるものです。当期、Amap(高徳地図)は新たに3D都市地図、車線レベルのナビゲーション、信号機のスマート予測、日焼け防止ナビゲーションなどの新機能を追加し、ユーザー規模拡大とスティッキネス(粘着性)強化を続けています。国慶節の連休ではデイリーアクティブユーザー(DAU)数が2億2,000万人を超え、新記録を樹立しました。地図ナビゲーションに加え、配車サービス、ホテル、ガソリンスタンド、EV充電スタンドなどの地図情報をもとに様々な目的地型サービスを追加したことにより、地図アプリで注文するユーザー数と注文数が急速に増加しています。

 ツァイニャオ・ネットワーク(菜鳥網絡)の各種事業は急速に成長し、売上高は前年同期比36%増加し、コスト効率も大幅に改善されました。当期、ツァイニャオ・ステーションの総数は前年同期比20%増加し、170,000か所を超えました。中国全土の住宅地、大学キャンパス、農村部を幅広く網羅し、消費者にサービスを提供するための重要拠点となっています。グローバル市場では、ツァイニャオは引き続き物流ハブの建設に注力し、国際物流ネットワークによるサービス提供と効率性を強化しています。

 グローバル市場では、米ドルに対して他通貨が下落したことと、インフレによる物流コスト高騰の影響により、当社のグローバル小売事業であるAliExpressの注文数は前年同期比で12%減少しました。東南アジアでは、新型コロナウイルス感染症に対する規制緩和など、オフライン消費の制約要因が一部和らぐなか、Lazadaの当期注文数は前年同期比6%減少となりました。TrendyolのEコマース事業の継続的な成長と急成長するローカルサービスに牽引され、Trendyolの注文数は前年同期比で65%以上の増加となりました。AliExpressとLazadaに関しては、単なる事業規模の拡大ではなく、顧客価値の創造へ注力するという戦略転換を積極的に行う一方で物流とサプライチェーン機能を引き続き強化しました。これらのインフラ投資は、グローバル市場における持続可能な発展に有益であると確信しています。

 クラウド事業では、当期のAlibaba Cloud(アリババクラウド)の売上高は前年同期比4%増となりました。過去数四半期にわたる構造調整を経て、Alibaba Cloudの収益構造はより健全で持続可能なものとなりました。当期、パブリッククラウド売上高は前年同期比2桁台のプラス成長となり、ハイブリッドクラウド売上高は前年同期比マイナスでした。より質の高い成長を追求するため、市場でコモディティ化したホスティングインフラの再販のみを行う事業を積極的に抑制しています。業界別売上高をみると、非IT業界からの売上高は前年同期比28%増加となり、同業界がAlibaba Cloudの総売上高において占める割合は前四半期の53%から58%に増加しました。成長率が最も高い業界は金融サービス、自動車、通信、公共サービスなどです。今後、Alibaba Cloudは独自のクラウドコンピューティング能力とビッグデータ処理能力を活用し、中国の産業デジタル化推進のために関連パートナー企業と共に多様な業界ソリューションを提供する予定です。11月に開催された雲栖大会(Apsara Conference 2022)では、クラウドインフラプロセッシングユニット(CIPU)、Model-as-a-ServiceのオープンソースプラットフォームのModel Scope(モデルスコープ)など、数多くの重要な技術成果が発表されました。これらはAlibaba Cloudの今後の発展において重要な役割を果たします。

 不確実なマクロ環境下で、コスト削減と効率化のために講じた対策は、タオター(淘特、旧・タオバオ特価版)、タオツァイツァイ(Taocaicai)、ウーラマ、Amap、Lazada、ヨウク(Youku)などの事業における損失を縮小しました。当社は経営の質を高めるための改善を続け、短期的な事業成長やユーザー数の増加ではなく、消費者に本質的な価値を提供する投資を継続します。中国が質の高い発展を遂げる時代に入り、当社も質の高い経営段階へと突入しました。

 2014年のアリババの米国IPOから8年間で、事業の質と規模は大きく向上しました。アリババの当期売上高は2014年同四半期の12倍、調整後EBITAは4.5倍、フリーキャッシュフローは2014年の4倍となりました。また、中国のGDPは、2013年の59兆元(約1,180兆円)から2021年には114兆元(約2,280兆円)まで増加し、この8年間でほぼ倍増しています。当社は将来の見通しに対して自信を持っており、引き続き自社株買いを続けます。11月16日現在、250 億ドルの自社株買い計画のもと、約180億米ドル相当の自社株買いを実施しました。当取締役会は株主還元を強化するため、自社株買い規模をさらに150億米ドル拡大することを承認しています。

 経済の浮き沈みに関係なく、私たちは自社の発展に対して確固たる自信を持っており、将来に対してはさらに強い自信を持っています。私たちは中国経済と社会が大きく発展すること、アリババの目標と中国の長期的な目標に高い整合性があること、そして、中国と世界のデジタル化においてアリババが重要な役割を果たすことを信じています。私たちは国の新型コロナウイルス感染症関連の政策に関する最新の動向、規制当局によるデジタル経済促進とプラットフォーム企業の質の高い成長に関する前向きな姿勢に注目しています。新型コロナウイルス感染症の流行が終息し、社会や経済が正常に戻り、世界第2位の経済大国としての中国の大きな可能性がさらに解き放たれていくと信じています。また同様に、プラットフォーム経済は、中小企業への支援、雇用創出、より良い生活の創造などに独自の貢献ができると信じています。

関連記事:

アリババグループ、2022年7-9月期の決算を発表

アリババグループ ダニエル・チャン 張勇 決算発表