2021年10-12月期決算発表電話会議におけるアリババグループ会長兼CEO 張勇のスピーチ
解説:アリババグループは2022年2月24日、2022会計年度第3四半期(2021年10~12月期)の四半期決算を発表した。アリババグループ会長兼CEOの張勇(ダニエル・チャン)は、電話会議で当期業績と今後の展望について説明した。
2022会計年度第3四半期(2021年10~12月、以下は当期と略記)、アリババグループは各種事業を着実に推進してきました。中国の一部地域における新型コロナウイルスの流行、マクロ経済の減速、市場競争の激化という圧力にさらされていますが、顧客の価値創造を中心に据えた長期的発展を堅持しています。新型コロナウイルス、原材料価格の上昇などの影響によって、中国経済の成長は前四半期より鈍化しています。GDP成長率は前年同期比4%象、社会消費品小売総額は3%増にまで伸び率は低下しました。
一方で消費スタイルのデジタル化、産業のデジタル化というビッグトレンドはより明確になり、加速しています。中国の大手IT企業はさまざまなスタイルで消費分野に参入しており、デジタルビジネスの形態とユーザー体験はますます豊富になっています。こうした環境とトレンドにおいて、不断に新しい需要を創造し、消費体験を革新し、クライアントの産業のデジタル化をサポートすることこそが、アリババグループが取り組む未来の重要課題であり、長期的かつ健全で、持続可能な発展を続ける最大のチャンスにして基盤であります。
年間アクティブコンシューマー10億人の目標が達成間近に
当期末時点で、全世界の年間アクティブコンシューマー(AAC、過去1年間に1回以上、アリババグループのプラットフォームから商品を購入したユーザー)は12億8,000万人に達しました。前期から4,300万人の増加です。中国国内に限定すると、9億5,300万人から9億7,900万人に増加しました。それ以外の海外市場は2億8,500万人から3億100万人に増加しました。2022会計年度内に中国国内のAAC10億人達成を目標としてきましたが、まもなく達成できる見通しです。AACの増加は、ショッピングアプリ「淘特」(タオター、旧称は「淘宝特価版」)の急成長が牽引しました。
高品質の顧客から構成されている、10億人のAAC。この数字はアリババグループが中国における購買力を持つユーザーの大半をカバーしたことを意味すると、我々は考えています。今後はユーザー数の増加ではなく、継続率やAPRU(1ユーザーあたりの平均売上)の成長が目標となります。
EC(電子商取引)を見ると、消費減速や競争激化という厳しい環境にありながらも、継続率86%(2020年に利用履歴があるユーザーが2021年に利用した比率)を達成しました。これは過去と比べても安定した数字で、我々のプラットフォームの健全なスティッキネス(ユーザーの利用頻度や利用時間)を示すものとなりました。ARPUは新興地域市場のユーザー獲得に伴い、一桁パーセントの減少となりましたが、年間消費額1万元(約18万円*)の層に限れば、なお成長が続いています。
今後は消費シーンの多様化を通じて、ユーザーのアクティブ度と利用時間を増やすことを目指します。そして、ユーザーの購入意思決定プロセスへの影響力を高め、しかも各商品ジャンルの特徴に合わせながら強化を進めます。これにより、プラットフォーム全体のAAC増加という従来の指標ではなく、商品ジャンルごとのAAC増加という新たな指標での成長を実現し、最終的には個々のユーザーの消費額に占めるアリババグループのシェアを高めてまいります。
新規ECサービスの成長と展望
この一年間、我々は淘特と、コミュニティコマース「淘菜菜」(タオツァイツァイ。ネット注文を受けると、団地など住宅地にある拠点に翌日配送する仕組みのネット販売。拠点からは顧客がピックアップして持ち帰る。生鮮食品を主に販売する)に多額の投資を続けてきました。この2つのサービスは独立したものではなく、アリババグループの中国小売事業ポートフォリオにおける重要な一部であります。
ここ数年の成長により、両サービスが持つ独自の価値は、次第に明確になりつつあります。淘特は新規ユーザーを獲得する役割を担っています。同サービスのAACは、前期から3,900万人増の2億8,000万人に達しました。注文数は倍増以上の成長です。淘特アプリのユーザーは、淘宝アプリのユーザー以上に価格に敏感です。つまり、淘特と淘宝には相補性があるわけです。また、淘特の特徴である生産地から消費者へのダイレクトな販売方式は、サイプライチェーンの効率性を高めるものとなりました。
淘菜菜は価格に敏感なユーザーによる、生鮮食品のネット購入という新たなシーンを作り出しました。淘菜菜のユーザーのうち、50%超は過去にアリババグループのプラットフォームから生鮮食品を購入した履歴がありません。
淘特と淘菜菜、二つのサービスが一定規模にまで成長しました。今後は成長の質により多くの力を注ぐ必要があります。現時点では両事業は赤字ですが、効率改善に取り組むことによって、赤字額は縮小へと向かうと予測しています。
ローカルサービス事業の現状
ローカルサービス事業では、フードデリバリーなどの「到家(家に配送する)」事業と、マップサービスや口コミサイトなどの「到目的地(目的地へ行く)」事業のAACは、合計で3億7,200万人に達しました。前期から1,700万人の増加です。注文数は前年同期比22%増となりました。
デリバリーサービスの「餓了麽」(ウーラマ)はコア・マーケットへの集中に取り組み、新規ユーザー獲得と物流コストの改善に取り組みました。その結果、コミュニティ毎の利益は大きく改善しました。マップサービスの「高徳地図」(エーマップ)は国慶節期間のDAU(日間アクティブユーザー)が2億人突破という大台に乗りました。四半期別のサービス購入者数も増加しており、たんなる地図サービスから目的地到着後の各種サービス利用の窓口というローカルサービス・プラットフォームへの変化をますます明確なものとしました。
グローバルコマース事業及び物流
海外消費市場に目を向けますと、当期末のAACは1,600万人増の3億100万人に達しました。注文数は前年同期比25%増です。そのうち、東南アジアのECプラットフォーム「Lazada」(ラザダ)は52%、トルコのECプラットフォーム「Trendyol」(トレンドヨル)は49%増と好調です。「AliExpress」(アリエクスプレス)は、欧州のVAT(付加価値税)政策の変化に伴い、伸び率が低下しています。将来的に海外消費市場の開拓は、現地からの配送と越境配送とを組み合わせるべきだと考えています。中国発の越境配送の優位性と、現地配送の組織化とをどう組み合わせるかは、長期的な課題の一つです。
物流ネットワークの構築は、グローバル戦略における優先項目です。越境と現地発という二つの商流は最終的に統合され、消費者への高品質かつ高効率なサービスの提供を実現します。
ラザダ、アリエクスプレス、トレンドヨルなどの事業を通じて、アリババグループの物流ソリューション事業である「菜鳥」(ツァイニャオ)は、東南アジアと欧州の物流ネットワーク構築を続けています。今後も、グローバル戦略の重点分野である物流への投資を続けて参ります。さらに、クラウドコンピューティングの国際化もまた、グローバル戦略の重要な基盤です。アリババクラウドは当期において、海外インフラへの投資を強化し、アジア太平洋地域において、韓国とタイにデータセンターを増設しました。現在、世界25地域でクラウドコンピューティング・サービスを提供しています。
五輪を支えたクラウド
アリババクラウドの売上は、前年同期比20%増を記録しました。金融業界、通信業界のニーズが特に強く、IT業界の需要鈍化の影響が現れています。中国のクラウドコンピューティング市場は、2020年の2,000億元から、2025年には1兆元(約18兆円)市場に達すると予想されています。産業のデジタル化は、まだ始まったばかりです。アリババクラウドは今後、長期にわたり実体経済へのサポートを続け、各産業のデジタル化を支援します。
先日閉会した北京2022オリンピック冬季競技大会に関して、そのコアシステムはすべてアリババクラウドで運用されました。伝統的なITシステムではなく、クラウドコンピューティングが五輪の組織と運営を担ったのは史上初の出来事です。過去の五輪では、サーバーシステムを構築し、五輪閉会後には撤去するということが繰り返されてきました。クラウドコンピューティングの導入によってインフラ構築に必要なコストは大幅に削減され、しかもアプリケーション開発の期間も短縮されました。五輪と同様、今後多くの業界がデジタル化されることになりますが、そこには大きなビジネスチャンスが眠っています。NEV(新エネルギー自動車)、金融、医療などの業界はいずれも、潜在的な強力なコンピューティング・パワーを必要とする業界です。アリババクラウドは自主開発の技術という優位性を生かし、各業界に適したソリューションを提供していきます。
カーボンニュートラルと社会的責任
また、中国は2030年までの二酸化炭素排出量ピークアウト、2060年までのカーボンニュートラル実現を政策目標としています。多くの企業がデジタル化において、専門性と同時に、エコな技術サービスを必要としています。アリババクラウドは技術的優位性を生かし、電力消費量削減、効率向上、エコなエネルギー源の活用を達成していきます。一例をあげると、液冷データセンターです。PUE(電力利用効率)は1.09と業界最先端の水準です。同時に独自開発の機器とプロダクトの投入により、より強力なコンピューティング・パワーを、より少ない電力消費で実現しています。
昨年12月に開催した投資家大会において、私たちは「アリババグループのカーボンニュートラル行動目標 」を発表しました。アリババ・クラウドは2030年までにスコープ1、スコープ2、スコープ3のいずれのカテゴリにおいてもカーボンニュートラルを実現します。アリババグループ全体ではスコープ1、スコープ2でのカーボンニュートラル実現、スコープ3では温室効果ガス排出量を2020年比で半減させます。また、アリババグループは独自にスコープ3+という概念を提案しています。これは、プラットフォームに参加しているパートナー企業を含む、すなわちアリババ・エコシステム全体での温室効果ガス排出量を指すものですが、2035年までに2020年比で累計1.5ギガトンの温室効果ガス削減を目標としています。
さて、中国政府はプラットフォーム・エコノミーについて、健全なガバナンスを構築し、健全で持続可能な発展を促進するとの方向を示しました。この政府方針は、アリババグループのビジネス理念や社会的責任に対する目標と一致するものだと確信しています。人々の生活、中小企業を中心とした多くのクライアント企業、産業のデジタル化、実体経済に貢献し、社会を幸福にし、健全かつ持続可能な発展という未来を切り開くこと。アリババグループは今後もこの方向を堅持して参ります。
*為替レートは1人民元=18円で計算。
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