ジャック・マー会長「次の30年は、女性が成功しやすい『エクスペリエンスの時代』」

アリババグループ 会長 ジャック・マーは、2019年8月28日に中国・杭州にて開催した「第3回女性とアントレプレナーシップグローバルカンファレンス」で、今後30年を「エクスペリエンスの時代」と定義し、女性の強みと、その役割の重要性を強調した。

マー会長はカンファレンス内の演説で、国連の「持続可能な開発目標アドボケート」の一員として、以下のような「メッセージ」を残した。

  • 今後30年、人類が競うのは力ではなく、知恵と体験だ。エクスペリエンスの時代において、女性はさらにパワーアップする。
  • ロボットの世界が到来したとしても、美しさや良さを定義するのは女性だ。
  • 男女平等は今世紀、人類の発展、人類の生存において、最も重要なアジェンダの一つである。
  • 将来、結婚の主導権は男性ではなく、女性に委ねられる。
  • 女性は生まれつき変化に適応しやすく、変化を好み、さらに変化を愛し、変化の創造が得意な人が多い。
  • 家を没落させる女性はいない。家庭を愛する女性しかいない、と確信している。
  • 母親が強くなければ、子どもは強くなれず、子どもが強くなければ、社会は強くなれない。

――今後30年、人類が競うのは力ではなく、知恵と体験だ。エクスペリエンスの時代において、女性はさらにパワーアップする。

マー会長は今後30年の展望を次のように示した。

「人類は、今後30年で『エクスペリエンスの時代』に突入するだろう。人類が競うのは力ではなく、知恵と体験だ。エクスペリエンスの時代においては、他者への理解、支援や援助を心得ている女性が成功を収めやすい。男性は商売をする際に数字を非常に重視するが、女性は体験にとりわけ関心を持って、他者の感じ方に心を配り、コミュニケーションができる。

例えば、みな機械や未来のロボットを恐れているかもしれない。征服されることを嫌がり、優しい機械の知能に見守られたいと願っている。したがって、90%の人工知能には女性の声が使われている」

――ロボットの世界が到来したとしても、美しさや良さを定義するのは女性だ。

今年はアリババグループの設立20周年である。マー会長は20年を振り返り、多数の創業者やリーダーと仕事をするなかで、次のことを認識したという。

「女性は意思決定がより慎重で寛容であり、直感に長けた右脳で思考する。男性は意思決定が果断だが、その果断が時として独断であることが多い。そして左脳で思考し、理性に制御されやすい。

未来のロボットの世界が、理性に偏った世界では味気ない。人類がロボットに勝つために、最も重要なのは知識ではなく、直感だ」

――男女平等は今世紀、人類の生存・発展において、最も重要なアジェンダの一つである。

また、エクスペリエンスの時代に企業が成功を収めたいならば、男女平等は必要条件であり、十分な割合の女性リーダーが必要だ、と女性リーダーの重要性を提言した。

アリババグループを例に挙げると、現在女性リーダーの割合は34%。女性スタッフの割合は33%以上でなければならず、50%、ひいては51%を実現すれば、さらに喜ばしい、とマー会長はアリババグループに要求したという。早く女性の事務総長を、と国連にも呼びかけた。

――将来、結婚の主導権は男性ではなく、女性に委ねられる。

マー会長は、将来の男女の関係性の発展について言及し、結婚の主導権は男性ではなく女性に委ねられることになる、という考えを述べた。

「中国のECサイトである淘宝(タオバオ)のデータによると、『ファンデーション・コンシーラー』、『マスカラ』の男性の購入量が倍増したという。男性も美しさや教養を身に着けなければ、女性の鋭い洞察力を持った目に留まることができない。今後『嫁ぐ』ことができるかどうかも、男性の課題の一つになるだろう」

――女性は生まれつき変化に適応しやすく、変化を好み、さらに変化を愛し、変化の創造が得意な人が多い

2015年に第1回女性とアントレプレナーシップグローバルカンファレンスを開催した際、当時の目的は世界中の女性起業家を集め、交流の場を設けて、世界に女性の力を感じてもらうことだった。

しかし近年、テクノロジーやビジネスの分野に限らず、世界の構造は非常に大きく変化している。世界が変化している時、適応に苦労する男性は多いが、女性は平気だった。女性は生まれつき変化に適応しやすく、変化を好み、さらに変化を愛し、変化の創造が得意な人が多いからだ、とマー会長は気づいたという。

――家を没落させる女性はいない。家庭を愛する女性しかいない、と確信している。

これまでアリババグループは一貫して「2つのH」、すなわち健康(Health)と幸福(Happiness)を提唱してきた。人はこの2つのために生きている、とマー会長は考える。そして最近3つ目の「H」、すなわち家庭(Home)を提唱し始めた。

「家庭を没落させる女性はおらず、家庭を愛する女性しかいない。女性は夫や子どもを優先し、自分のことは後回しだ。淘宝(タオバオ)のデータによると、半数近く、ひいては半数以上の男性服を女性が購入している。調味料の60%以上、そして子どもの生活用品と学習用品の70%以上は女性が購入している。このデータは、女性が家庭を愛しているだけでなく、家族への思いやりに溢れていることも示している」

生涯現役。起業は魂

質疑応答では、75歳の女性起業家が質問した。彼女は十数年前、その事業と功績がマー会長と同時に書籍に掲載されたことから、親しみを込めてマー会長を「弟」と呼んだ。

彼女は国有企業の上級管理職という第一線を退いたあとも生涯現役の精神を貫き、事業における「第二の青春」を始めた。彼女が創業した企業は、90%が女性スタッフで、利益の大部分を社会福祉事業や慈善団体に注ぎ込んでいるという。

退職後に起業した75歳の女性の経歴に、マー会長は感動した。
退職後に起業した75歳の女性の経歴に、マー会長は感動した。

マー会長は彼女を「お姉さん」と呼び、質問に答えた。

「生涯現役の物語に感動した。起業は魂であり、起業を辞めると老化が早まってしまう。私は今年の9月10日でアリババグループ会長職を降りるが、『今後は起業しない、これで引退だ』ということではない。アリババグループは私の夢の一つに過ぎない。好きなことをしたり、チャレンジを応援したり、世界の素晴らしさを体感したりするのを辞めるなんて、ありえない」

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