【インタビュー】ゲームを通じて日本と世界の繋がりをより強く、ゲームBtoBマッチングプラットフォーム「Global Game Guild」の立ち上げ経緯とその狙いとは

 

アリババクラウドは、5月27日、新たなプラットフォーム「Global Game Guild」をリリースした。

「Global Game Guild」とは、日本と中国のゲーム会社を交流するコミュニティを形成し、情報交換やビジネスマッチングを行える取り組みのことだ。クラウドサービスにて同社が世界各国のゲーム会社と取り組んできたからこそ実現できたプログラムと言えよう。

5月からスタートし、すでに約80社が参画しているという「Global Game Guild」だが、実際のところ「Global Game Guild」でなにができるのか、そしてどんな恩恵があるのか。

 


今回Social Game Infoでは、「Global Game Guild」の運営に携わる大和田健人さん(写真左、以下、大和田)、邱さん(写真右、以下、キュウ)にインタビューを実施。その立ち上げ背景から今後の展開まで、さまざまな話を聞いてきた。

様々な地域のゲームに携わるアリババクラウド

——:まずは、大和田さんのプロフィールからお伺いしてもよろしいでしょうか?

大和田:もともと、ソニー・コンピュータエンタテインメントで、ゲームクリエイターとして働いていました。中国のPlayStation立ち上げメンバーとして中国に飛び、正規品が流通していない中国市場を健全化していきました。

その後はインドネシアでのゲーム配信プラットフォーム事業の起業などを経て、ご縁もありアリババクラウドにジョインしました。アリババクラウドの持っているテクノロジーは最先端で、これから日本のゲーム産業にもきっと役立つと思っていたので、その橋渡しとして活動するために参加した次第です。

 

——:アリババクラウドの役回りについてもお聞かせください。

大和田:私はマーケティングとリサーチの担当でして、中国で流行っているコンテンツを日本国内にお伝えしたり、日本のお客様の課題を解消できる企業をご紹介していくのが主な仕事内容です。ご案内していくなかで、具体的なソリューションが提供できる段階になりましたら、ゲーム担当のキュウがそれを引き継いでお客様に紹介していくような形態になっています。

キュウ:私たちのチームでは、紹介していただいた通り大和田が持ってきた情報をもとに、日本の企業に中国発の情報を提供することを協力しながらやっていますね。

「Global Game Guild」は、我々を含めた4人で進めています。チームのうち、ひとりは中国在住なので、現地の情報もいち早くキャッチできるようになっています。

 

——:アリババクラウドではどのようにしてゲームサービスと関わりがあるのでしょうか。

アリババクラウドはECが有名かと思いますが、ゲームの分野においても世界の様々な地域で利用して頂いています。

中国のゲーム業界においてはお取引している企業様の数はNo.1を誇ります。より多くのお客様にクラウドサービスを提供して、お役に立てるというのは我々の強みだと思いますし、東南アジアやヨーロッパなども関わっています。

その中で様々なご相談をいただくことも多いです。例えば、クラウドゲームの運用やAIの導入、中国のゲームを日本に展開したいといったものです。特に、海外進出においてはこれからも中小規模の企業様含めて増加している動きだと思います。

 

世界中の情報を知ることができる場所…「Global Game Guild」

——:お二人はさまざまな現場を見てきていると思いますが、昨今のスマートフォンゲーム市場はどのように移り変わっていくと思いますか?

大和田:直近の流れで言うと、新型コロナウィルスによって、開発現場の環境は大きく変わっていくと思っています。現状はそこまで表立って影響が出ていないように見えていますが、個人的に心配しているのは開発の遅延が発生することですね。

会社に出社できないことで開発ラインが止まってしまう状況をどうやってキャッチアップしていくのかが、今後のゲーム業界の課題になってきます。開発の遅延は会社の収益にも大きく関わってくるので、会社全体のコストダウンも必要になるはずです。そこで私たちも現場に入らせていただいて、開発現場のコストの削減させるためのサービスを提案していければと考えています。

 

——新型コロナウィルスの影響でゲーム業界の流れは変わっていくと。

大和田:はい。ただ、それ以前からの流れも非常に大きいと感じています。なかでも、中国産タイトルの日本進出ですね。『荒野行動』などをはじめ、さまざまなゲームが中国からやってきて、それが日本でもヒットしている状況にあります。

以前は中国だからという理由で手に取ってもらえないこともありましたが、いまでは日本のユーザーにも面白いと思ってもらえるような、クリエイティビティ溢れる作品も多くリリースされています。

だからこそ、日本の企業はどう立ち向かっていくのか議論していく必要性があると私は考えていまして…。たとえば、いま非常に盛り上がっている日本企業の中国進出ですが、ライセンス版号が取れなくなってきている状態です。若干解放されつつありますが、やはりなにもノウハウもなしにイチから進出をしようとなると厳しいかと思います。

開発の際にプロダクトをガッチリ組み上げてしまったあまり、中国へリリースするためのコストが莫大にかかってしまう事例を耳にしたことがあります。その結果、中国でのリリースを諦めて、欧米と日本だけのリリースになった例もよく聞きます。

中国展開を視野に入れているのならば、そのベースも中国側に通用するシステムで組んだほうがいいことを知っておかないといけないんですよ。要するに、今後も多くの海外企業が参入していく中で、世界と戦っていくにしろ、世界と協力していくにせよ、その為の情報を身につけなくてはいけません。

そういった海外進出のノウハウも「Global Game Guild」では提供できますし、今後はゲーム業界同士のミートアップを通じていろんな場所にコンテンツをお届けできればと考えています。

また、東京ゲームショウのオフライン開催も中止になり、世界的なトレードイベントが少なくなっています。そんな時に我々としてできないかと考えて立ち上がったのが、「Global Game Guild」になります。

——:「Global Game Guild」について概要をお聞かせください。

大和田:海外進出をするときに注意すべき点やマーケティングの仕方をお伝えしたりですとか、お客様の海外展開の支援を主に行っております。「Global Game Guild」は「Grobal Game Guild for japan」と「Grobal Game Guild for china」に分かれており、それぞれで取り組んでいます。

 

 

ほかにも独自でセミナーを行っていまして。ここでは、新しい情報のインプットと、新たな人との出会いをしてもらうべく開催しています。日本の企業で中国にあまり縁がない方や、中国の企業で日本でもっとビジネスを広げていきたい方などに企業の紹介もしていますね。

 

オンラインセミナーの様子。参画企業は自由に視聴ができ、LTによる企業紹介も可能だ。

 

——具体的にはどのようなやりとりがあるのでしょうか。

大和田:「Global Game Guild」ではDingTalkをコミュニーケーションツールとして活用しています。DingTalkではAIの自動翻訳が入っているので、あちらが日本語を分からなくても日本語で送れば勝手に翻訳してくれるので便利です。言葉の障壁を越えて、ゲーム業界の人たちの関係を持てるので誰でも手軽に会話ができる体制にしています。

 

 

DingTalk内「Global Game Guild」の様子。AIによる自動翻訳にて言語に関わらず気軽にコミュニーケーションがとれる。

 

また、DingTalkはファイル共有も可能なので、グループを作っておけばそこに送っておけば楽にファイル送信もできます。そういう便利なサービスをみなさんに活用してもらいながら、ゲームビジネスの推進に役立ててもらえればと思っています。

 

——:言語の壁もなくして交流をしやすくしているのですね。参画する際はどういった手順になるのでしょうか?

大和田:「Global Game Guild」のサイトから利用申し込みをしていただいたあとは、DingTalkをインストールしていただくだけです。ただ、企業のセンシティブな話も取り扱いますので、個人でゲームを開発しているかたなどにはご遠慮いただいています。

 

 

——:では、会社に所属しているかたならば、誰でも使えるということでしょうか?

キュウ:ゲームに関わる方であれば誰でも利用可能です。実際に、「Global Game Guild」のサービスを発表したあとに、ゲーム会社専門の弁護士のかたからも連絡をいただいたりしています。日本でゲーム産業の活性化に繋がるかたでしたら、会社の規模を問わず歓迎です。

 

日本と世界の繋がりがゲームを通じてより強くなる試みを

——:すでに参画している企業からの反響はいかがでしょうか?

大和田:参画してくださっている企業様からは、今後もビジネスの機会を得るためにアドバイスを受けていきたいとのお話をいただいております。

私たちアリババクラウドはインフラストラクチャーだけに携わっていると思われがちですが、様々な面でお客様へのサポートもしています。そこではアドバイスだけではなく、よりよい環境で開発してもらうために気になったことはズバズバと聞いていきます。そこでの回答によっては、別の優れたサービスを提供できる可能性があるからです。

なぜそこまでのことをするのかというと、アリババクラウドは自分だけが儲けるのではなくて、みんなで儲けようというのをモットーに取り組んでいるからです。最終的にお客様が成長しなければ、業界も盛り上がらないですし意味がないじゃないですか。だから、手伝える範囲内でしたらいくらでも助力しようと動いています。

 

——:今後の展開についてお聞かせください。

キュウ:現在、「Global Game Guild」には80ほどの企業様に入っていただいています。今後の目標としましては、1年以内に参加企業様を300〜400社まで増やしたいですね。あとは日本と中国だけではなく、東南アジアでのグローバル化も図っていく予定です。また、ヨーロッパ地域からも問い合わせを受けており、いずれは全世界の地域と交流できるサービスを目指していきたいです。

大和田:いろんな施策を取り入れながら、参加企業様がカバーできるエリアも増やしていきたいです。それ以外の課題ですと、コンテンツをキャッチするためのルートの確立ですね。日本にいると中国のゲームの情報や、中国のゲームに関する技術の話はなかなか得られないので、この「Global Game Guild」を通じてみなさんに情報を発信していければと考えています。

 

——:最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

大和田:僕は日本のゲームを海外で取り扱ってきたので、そこでどれだけそのゲームたちに救われてきた人がいたのかを目の当たりにしてきました。まだまだ日本には海外のユーザーを感動させられるコンテンツがたくさんあると感じているので、それを多くの人に伝える仕事をしていきたいですね。

これからゲーム業界のみなさんのお手伝いをさせていただいたコンテンツで、世界中がハッピーになればいいなという想いがあります。

キュウ:私も日本にかれこれ10年ほど滞在していますが、こちらに来た当時は海外のゲームは全然流行っていなかったんですよ。でも今では、たくさんの人が海外のゲームを遊んでくださっているじゃないですか。だから、ゲームには国境がないと思っています。今後、日本と世界の繋がりがゲームを通じてより強くなるよう、「Global Game Guild」での取り組みも頑張っていきます。


——:ありがとうございました。

 

出所:この記事はSocial Game Info から転載いたしました(https://gamebiz.jp/?p=270366)

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