ほぼ日手帳、中国で大きな人気を誇る、消費者の美意識の多様化に日本企業の商機拡大

「株式会社ほぼ日」(以下、ほぼ日)が手掛ける手帳が中国の若者の間で大きな人気を集めている。デジタル化が加速する中国社会では、消費者のニーズの多様化も進んでいる。その細分化された美意識に応えていくことが、日本企業にとっての商機だと、ほぼ日の代表取締役社長である糸井重里氏が捉えているようだ。

ほぼ日手帳が中国の若者に人気な秘密を明かす

2018年、ほぼ日は中国市場に進出するために、中国語版の手帳を新たに作ったという。そして翌2019年8月に、アリババの越境ECプラットフォーム・天猫国際(Tmall Global)に中国初の公式オンラインストアを開設した。新手帳の発売初日にわずか5分間で100万元を超える注文が殺到し、天猫国際での輸入文房具1位にも輝いた。

なぜ、デジタル化が急速に進む中国社会で、アナログな手帳が人気なのでしょうか。

「中国の若者は、デジタルの効率化と、立ち止まってよく考えるアナログの時間との間で、バランスを求めているのではないか。そして多様性に対するニーズもある。例えば、気に入るタイプの洋服はあるが、さらに細い道に入った美意識にぴったり合うデザインは、まだ中国では足りない。そこには、中国の方からの日本への期待を感じている」と、糸井社長がこのようにほぼ日手帳の支持を集めている理由を分析した。

天猫国際限定の手帳カバー。独自の世界観で、グラフィックやテキスタイル、プロダクトデザインなど多岐にわたって活躍中の渡邉良重さんが手がけた。

「具体的に、中国版手帳にはおまけで付けている特集ページの内容も、実際に中国のファンの声を反映して、犬と猫の付き合い方や、防災グッズのチェックリストなどを入れている」と、中国事業を担当する木村様が、ほぼ日のものづくりへの思いを解明してくれた。

 

量より質、ファンとの交流を円滑化、ユーザー理解を立体的に

中国市場でEC事業を手がけるネット企業が数多くあり、数社の中から、ほぼ日は、中国初の公式オンラインストアを天猫国際で開くことにした。その意思決定の背景を伺ってみると、圧倒的なユーザー数も魅力的だが、ファンや潜在的消費者をよく理解するためのデータをアリババが持っている、それを読み取って、次にどうアプローチするかを考えられる利点を重視していたという。

これまで、中国の消費者が並行輸入などのルートを通じて、ほぼ日手帳を入手してきたが、今回、ほぼ日が自ら中国向けの販売チャネルを天猫国際に一本化したことで、中国消費者の特徴やニーズを可視化し、その全貌を俯瞰できるようになったのが、事業運営における大きな変革だったと言える。

天猫(TMALL)輸出入事業部でアジア企業誘致を担当している責任者の趙戈は、「中国市場では、心を満たすためのカルチャー商品が好まれ始めており、そうした分野では日本企業はより進んでいる。われわれのデータテクノロジーを活用し、さらに中国消費者のニーズに沿った商品開発ができればいい」と次の試みについて意気込んでいる。

 

中小企業との付き合い方や理念に共感してアリババとの協力を決意

2019年10月、ほぼ日の糸井社長一同が、アリババの本社所在地・杭州を訪れた。アリババへの初印象について、このように語ってくれた。

「やはり、規模感ではなく、どのような人がどんな考え方を持っているかをよく知った上で、アリババとの協力を決めた。例えば、(アリババの)中小企業に提供している無担保ビジネスローンのサービス、あれはアリペイアプリを通じて3分で申請できて、1秒ぐらいで審査結果がわかる、そして人の介在はゼロ。僕たちも中小企業なので、このような中小企業との付き合い方はすごく意味が大きいと思う。」

糸井社長はアリババの創業当初から大切にしてきた理念にも共感してくれたようだ。

一方的に大きく強くなることを追求するのではなく、アリババは102年(3世紀以上)続く良い企業を目指している。2036年までに、1,000万の中小企業を支援しともに収益を生み出し、20億人にサービスを提供する、そしてそれによって1億人の雇用を創出する、という長期的な目標を掲げている。糸井社長への取材を終えて、改めてわれわれの初心に立ち戻ることができた。

 

 

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