コロナショックに苦しむ製造業、デジタルで消費者とつながるC2M戦略が復活の鍵に
解説:
産業帯とは同一業種の企業が一個所に集まった産業集積拠点を意味する。従業員の独立や競合企業の登場によって、無数の企業が集まった産業帯が中国各地に散在している。産業帯に属する企業は伝統的な製造業が多いが、アリババグループはマーケットインサイト、EC(電子商取引)プラットフォーム、ライブコマースなどのマーケティングチャネルや、インターネット金融など各種サービスを提供することで、製造業が直接消費者に販売する新たなモデル「C2M」の構築をサポートしている。
中小企業は中国経済の「毛細血管」に相当すると言われてきました。新型コロナウイルス感染症で大きな打撃を受けた中小企業ですが、産業帯の生産回復に伴いようやく復活のきざしを見せています。
第一財経ビジネスデータセンターの報告書『2020中国産業帯デジタル化発展報告』(以下、『報告』と略記)によると、加工、製造、貿易を手がける伝統的な中小工場でも、インターネットを通じて消費者に直接販売する企業が増えつつあります。「アフターコロナ」ではデジタル化こそが産業帯企業の回復を助け、成長をサポートする原動力となるでしょう。
アリババグループのC to Cマーケットプレイスであるタオバオ(淘宝)は今年3月末に「C2M(Consumer to Manufacture、消費者と工場の直結)戦略を発表し、デジタル化によって中国の伝統的製造業、工場、産業帯のアップグレードを支援すると発表しました。タオバオのデジタル化スマート製造システム「デジタル智造」は、伝統的製造業によるマーケットインサイト獲得と生産プランの改善を支援します。また、長らく準備してきたアプリ「タオバオ特価版」が3月末に正式リリースされました。優良なC2Mプロダクトを持つ企業専属のEC(電子商取引)プラットフォームとして、消費者の選択肢をさらに豊かにしました。
『報告』によると、ローンチ後1カ月で10万社もの産業帯企業が参入しています。産業帯企業から、淘宝特価版がコロナショックを乗りきる活路になると考えていただけたからこその数字ではないでしょうか。4月26日時点で淘宝特価版に参入した企業は120万社を超えていますが、そのうち工場直営ショップは41%にあたる約50万社に達しています。
* 2020中国産業帯デジタル化発展報告( 詳細 ◆ )
輸出向け製造業のコロナショック、山積みの課題とは
コロナショックは輸出向け製造業に甚大な被害を与えています。世界的な流行により海外の需要が急減するばかりか、航空便の減少により国際物流も滞っています。他にも従業員の確保、資金調達、原材料調達といった課題もありますし、工場でクラスター感染を起こさないための感染対策も必要です。苦しい状況に直面する中、多くの工場が生き残りのために転進を探っています。
その活路として注目を集めるのが淘宝特価版です。『報告』によると、淘宝特価版に参入した120万社以上の企業のうち、輸出向け製造業は28万社を数えます。4月だけで2万社が新たにショップを開設しました。
すでに成功例も現れています。広東省肇慶市の企業・好順歐迪斯は驚くべき成功を収めました。同社はカークリーニング用品を主力製品としていますが、コロナによって中国国内のサプライチェーンが断裂し、海外からの注文が延期されるという二重の打撃を受けました。国内も国外も厳しいとあってはまさに四面楚歌ですが、同社は前年を上回る業績を上げ、従業員を200人も増員する好業績をあげています。
その原動力になったのは、タオバオC2Mグループとの協力で開発された消毒用アルコールスプレーです。企画、開発、製造、販売の全工程においてタオバオC2Mグループが指導し、好順歐迪斯は着手からわずか3日で新製品の販売に成功しています。2月10日からの15日間で100万本以上を売り上げる大ヒットを記録し、タオバオの消毒用品カテゴリで売上第1位を獲得しました。好順歐迪斯の曲維総経理は、コロナショックという逆風の最中にもかかわらず、売上(1月から3月半ば)は前年比23%増という好業績を達成できたと語っています。
売れ筋商品を即座に把握、陶磁器工場の躍進
コロナショックでほとんどの小売店は一時閉鎖されました。店頭販売は今、どんな商品が求められているかを理解するための重要な情報収集チャネルでもあります。お店の閉鎖は売上のみならず、消費者ニーズの理解ができないという意味でも問題をもたらすのです。
この問題は特に陶磁器工場にとって深刻だと、福建省泉州市徳化県の名産品である徳化陶磁を製造する企業、青勝家居の担当者は言います。陶磁器は窯で焼いて作るのですが、一回に1万点もの大量の製品を作ります。もし消費者ニーズを理解できずに、売れない商品を量産してしまったら……。「完成した、大量の製品は在庫となって、経営を圧迫します」と担当者は嘆いています。
いかにして正確な消費者ニーズを把握するかが課題だったのですが、青勝家居はタオバオC2Mグループの支援により、計画中の新商品について、より正確な販売予測ができるようになりました。タオバオの分析により、シンプルな商品にニーズが移っていることを発見したと担当者は言います。
さらに発売直後の売れ行きからさらに正確な販売予測が可能です。「(より早く販売予測ができれば)デザイン変更のタイミングも早められます。ヒット商品の追加生産も可能です」と担当者は、タオバオのマーケットインサイトの効力を伝えています。こうした取り組みを通じて青勝家居は新型肺炎流行期間に、全売上の80%をオンラインが占めるようになり、逆境下での成功を遂げています。
アリババグループは4月7日、中小企業支援の特別アクションプラン「春雷計画2020」を発表しました。同計画の柱の一つが輸出向け製造業と中小企業の転換であり、淘宝特価版がその要です。
アリババグループ副総裁、タオバオC2M事業部総経理の汪海はかつて次のように話しています。タオバオC2M戦略の目標は、今後3年間で1,000の、売上1億元(約15億円)以上のスーパー工場を作ることであり、そして産業帯の企業に100億件もの新規発注をもたらすこと、そして中国全土に10つの、生産額100億元(約1,500億円)超のデジタル化産業帯クラスターを作ることだ、と。
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