【2021 投資家大会】アリババが炭素排出削減に向けた戦略を発表、ビジネスエコシステム全体で2035年までに1.5ギガトンの炭素排出削減
アリババグループは、2021年度投資家大会において、カーボンニュートラルに関する目標と炭素排出削減に向けた戦略を発表しました。温室効果ガス(GHG)プロトコルに基づき、自社ビジネスの運営、上流と下流を含むサプライチェーン、クラウドコンピューティングなどに関する一連の目標を設定しました。アリババグループは2030年までに自社オペレーションのカーボンニュートラルを達成し、さらに、新たに提唱する「スコープ3+」に基づく目標としてグループのビジネスエコシステム全体で2035年までに1.5ギガトンの炭素排出削減を目指します。
同時に「アリババ・カーボンニュートラル・アクション・レポート(Alibaba Carbon Neutrality Action Report」)を公開し、上記の目標実現に向けた取り組みや、グリーンなビジネスエコシステムとライフスタイルの構築をサポートする事による社会全体の炭素排出削減への貢献について詳しく解説しました。
「102年(3世紀)以上続く良い企業を目指す」というビジョンを掲げるアリババグループの会長兼CEO ダニエル・チャン(張勇)は、「アリババは、社会に革新的な変化をもたらす力となることを目指しています。当社のESG戦略は、102年間存続する良い企業になるというミッションに基づいています。これは、アリババの今後の発展のための重要な基盤でもあり、新たに宣言した2035年までの炭素排出量1.5ギガトン削減という『スコープ3+』に基づく目標に向けて、プラットフォーム事業者としての独自の影響力を活かしながら、中国および世界の消費者、マーチャント、パートナーとともに活動に全力でコミットしていきます。」と述べました。
さらに、アリババは2021年度の投資者大会で、「内需」、「グローバリゼーション」、「クラウドコンピューティングをはじめとするハイテクノロジー」という三大戦略の下で、計画的な投資を通じて長期的で持続可能な発展を成し遂げていくと説明しました。
詳細はこちらの記事をご参照ください:【2021投資家大会】アリババの新規事業が台頭、持続可能な発展に期待
炭素排出削減戦略を推進、「スコープ3+」を新たに提唱
アリババグループが温室効果ガス(GHG)プロトコルのレポート「事業者の排出量算定及び報告に関する標準」が設定したスコープ1、2、3の範囲に基づき、最新の低炭素戦略と炭素排出削減目標を発表しました。具体的なスコープの定義は以下となります:
・スコープ1:組織が制御または所有する排出源から発生する直接温室効果ガス(GHG)排出量(たとえば、ボイラー、溶鉱炉、自動車での燃料燃焼にともなう排出量)
・スコープ2:組織が購入・利用する電力、蒸気、熱、冷却からの間接的なGHG排出量
・スコープ3:組織が所有または制御するものではないが、そのバリューチェーンに関連して発生する間接排出
アリババの低炭素戦略は、「責任あるテクノロジー、持続可能な未来」を中心に据え、直接的な炭素削減、クリーンエネルギーへの転換、炭素排出のオフセットと除去などで、独自の排出削減ルートを設定しています。グループ会長のダニエル・チャンは、アリババが低炭素戦略を推進するための具体的な3つの炭素排出削減の目標を表明しました。
第一の目標は、「グリーンなアリババ」を実現することです。2030年までに、自社ビジネス運営から発生する直接排出(スコープ1)、及び電気や暖房など自社運営が利用するエネルギーからの間接排出(スコープ2)のカーボンニュートラルの実現を目指します。
第二の目標は、「グリーンな産業チェーン(サプライチェーン、バリューチェーンを含む)」の強化です。2030年までにはサプライチェーン上流と下流のバリューチェーンと連携し、製品とサービスの仕入れ、製品の販売、従業員の通勤や出張などから生まれる間接排出量(スコープ3)を、2020年と比べて50%低減させることを目指します。アリババグループ全体としてスコープ1、2を実現する上で、アリババクラウドは、デジタル化の基盤としての役割を担うものであり、2030年までにスコープ3のカーボンニュートラルと「グリーンクラウド」を実現できるよう努力します。
第三の目標は、「グリーン・エコシステム」を拡大することです。アリババが新たに提唱した「スコープ3+」に関する目標の実現をプラットフォーム全体で取り組み、自社ビジネスの運営やサプライチェーンに加え、消費者や関連企業などをサポートしていきます。これにより、幅広い社会からの参画を促し、2035年までの15年間で累計1.5ギガトンの炭素排出削減を目指します。
テクノロジー主導のプラットフォームとして、社会全体における排出削減をサポート
経済全体の視点から見れば、企業が果たすべき炭素排出削減の責任は徐々に拡大しています。一企業として設定したスコープ3の排出量の算定は、他の企業のスコープ1、2の基準の下で行われた生産活動の影響を被ります。こういった「二重算定」は、より広範囲に及ぶ企業のコミットメントを促し、また、各企業間の相乗効果を高めることで、社会全体の排出削減にも貢献します。
デジタルプラットフォームの存在は、そういった相乗効果を生み出すための新たな可能性を提示しています。例えば、プラットフォーム企業が様々なテクノロジー及びビジネスのイノベーションを提供し、ルールの設定やエコシステム内の連携を通じてプラットフォームに関与する人々の行動や意思決定を変えることで、排出削減量の増加に貢献することができます。しかし、こういったプラットフォームが与えられる影響は、スコープ1、2、3という概念には反映されていません。
CEOのダニエル・チャンは、「テクノロジーが主導する独自のプラットフォームとして、アリババはビジネス、物流、クラウドコンピューティングなど、幅広いエコシステムに参加するパートナーを集めています。アリババは新たに『スコープ3+』の概念を提唱し、アリババエコシステムのパートナーたちと共に炭素排出に対する理解を広げ、社会全体の排出削減に貢献していきたいと考えています。」と語りました。
「スコープ3+」の概念を巡って、アリババは「1.5 Gigatons for 1.5°C」プロジェクトを開始し、専門機関と協力して厳密な測定方法を考案します。炭素削減を切り口として、消費者、企業、マーチャント及びサービスプロバイダーの力を集結し、より幅広い社会からの関心と参加を促します。アリババは2035年までに「スコープ3」の概念の下でエコシステムの幅広い関係者らを巻き込みながら、1.5ギガトンの炭素排出削減を目指しています。これは、アリババの炭素削減戦略にとって重要な目標となっています。
アリババは、プラットフォームが有するシステムの力で、消費者、企業、およびマーチャントのアクションを促進し、プラットフォーム運営側と参加側の両方の参画を促したいと考えています。例えば消費者に対して、環境にやさしいグリーン製品の購入、エコな移動手段を選ぶことなどを勧め、不用品を捨てるのではなくマーケットを通じて交換することを推奨し、製品のリサイクルを推進します。
CEOのダニエル・チャンはまた、「B2B市場全体において、アリババは、クラウドコンピューティングやグリーン物流サービスの活用、またはデジタル化オフィスやワークスタイルへの転換で、社会全体の炭素削減目標に貢献できると考えています。」と述べました。
長年の環境保護への取り組みを通じて、“グリーン”を促進する経験を蓄積
アリババはこれまでも長年にわたって、液冷技術、宅配物流、エネルギーの使用などの領域において、アリババエコシステムのパートナーたちと共に炭素排出削減に取り組んできました。
アリババクラウドのデータセンターは、「浸水式液冷」といった自社開発の省エネ技術を活用し、環境にやさしいグリーンソリューションを展開することで、データセンターの冷却に使用するエネルギー消費量を70%削減し、年間平均電力使用効率(power usage effectiveness,PUE)を1.09までに押し下げました。これは、技術力が世界トップレベルであることの証しと言えます。今年の天猫ダブルイレブン・ショッピングフェスティバル期間中、中国河北省張北にあるデータセンターが再生可能エネルギーを使用することで、二酸化炭素排出量を26,000トン以上削減しました。これは、100万本の木が1年間に吸収する二酸化炭素の総量に相当します。
2014年、物流プラットフォームの「菜鳥網絡(ツァイニャオ・ネットワーク、以下「ツァイニャオ」)」は、物流業界に先駆けて電子伝票をベースにしたデジタル荷物管理ツールを発表しました。従来の紙伝票に代わり、この電子伝票を使用することで、炭素排出量を削減しています。利用が開始された2014年から2021年までの7年間で、累計1,000億件以上の宅配荷物に電子伝票が適用され、4,000億枚の紙を節約することができました。さらに、ツァイニャオは、ビッグデータ解析を活用して段ボールのサイズを最適化し、アルゴリズムが最適な梱包方法を推奨しています。これにより、製品に合った段ボール、よりコンパクトな梱包が可能になり、梱包材の使用量を平均15%削減しました。
現在、ツァイニャオのグリーンキャンパスでは世界中に1,000万平方メートルを超える物流センターを配置しており、その中の6つの大型物流センターではキャンパス全体の屋上にソーラーパネルを設置し、従来のエネルギー供給を太陽エネルギーに置き換えるなど、グリーンエネルギーの活用を模索し始めています。今後もこういった取り組みを行う物流センターを徐々に拡大していく予定です。
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