アリババ総研:ECサービスのタオバオでシニアユーザーの利用が急増、シニア向けサービスの改善が必須に
アリババグループのシンクタンクであるアリババ総研は、『アフターコロナ時代の高齢者のデジタルライフ』(以下「当レポート」)を発表し、デジタル経済の急速な発展と新型コロナウイルス感染症の流行の中で、タオバオのシニアユーザーの利用が他の年齢層よりも大幅に増加していると報告しました。また、消費者の購買意欲が飛躍的に高まっているとはいえ、今後は高齢者がより一層デジタルライフを受け入られるようサポートすることが求められており、高齢者の身体特性や行動特性を考慮した「シニア向け」デジタルサービスを充実させるべきであると提唱しています。
「年を重ねながら、裕福になる」――中国の経済情勢と人口構造の変化
アリババ研究所は、国家統計局、中国国勢調査、国際比較プログラム(ICP)などからの統計をまとめた結果、2020年に中国の60歳以上の人口の割合が総人口の17.4%に達すると予測しており、2000年の10.3%と比べて大幅に増加すると指摘しています。また2000年にはまだ30歳であった中国の中位年齢(=0歳時から順にならべてちょうど中心となる人の年齢)も2020年には38.4歳に達すると予測しています。 上記の数字は共に、高齢化によってデジタルサービス利用時のストレスがさらに大きくなる可能性を示唆しています。
同時に、2000年にはわずか7,942米ドルであった中国の1人当たりGDPは、2019年には10,276米ドルに達し、10,000米ドルを超えました。この数字を上記のデータと組み合わせて分析すると、中国の経済情勢と人口構造はデジタル経済時代への移行と並行して、「年を重ねながら、裕福になる」という構造になっていることが明らかになっています。
当レポートの分析によると、新型コロナウイルス感染症の出現は、シニア世代がデジタルライフを急速に受け入れるきっかけとなりました。例えば、2020年の7月から9月の期間、シニア世代(60歳以上)の携帯電話におけるタオバオの月間アクティブユーザーの前年比伸び率は他の年齢層をはるかに上回り、全体の平均成長率よりも29.7ポイント高くなっていることが明らかになっています。
また、シニア世代(60歳以上)の消費意欲が高まっており、2017年から2019年までの消費金額の年平均成長率(CAGR)の伸び率は20.9%に達しました。他の世代のユーザーと比較して、シニア世代(60歳以上)のユーザーの消費支出は主に孫の養育、ヘルスケア、医療、レジャーサービス、飲食や生活空間の質の向上などに当てられており、具体的には赤ちゃんの歩行器、健康食品、マッサージ機器、中国特有の広場ダンス関連のグッズ等が挙げられています。
しかし、モバイルインターネットの普及が進む中で、依然として一定割合のシニアユーザーが情報格差(デジタル・デバイド)に直面しています。アリババグループ内の消費者体験事業グループの考察に基づき、アリババ研究所は、タオバオにおけるアクティブなシニアユーザーは増加傾向にあるが、消費額は若い世代のグループよりも大幅に低いと述べました。
シニア世代のデジタルライフへの移行を、タオバオとアリペイが一緒にサポート
現代社会においてはデジタル技術が生活のあらゆる面に行き届いているとはいえ、相当数のシニア世代が技術開発の進化のスピードに追いついていないのが現状です。シニア世代がデジタル技術の発展の恩恵を受けられるようにすることは、家族、企業、社会の責任でもあります。
2018年2月、タオバオは「家族アカウント」を立ち上げ、家族同士でアカウントを共有し、若いユーザーがシニアユーザーの使用方法のサポートをすることで、便利な支払いサービスを利用できるようにしました。2020年の6月の時点で、「家族アカウント」の口座に登録されているシニアユーザー数は2,000万人を超えています。また、タオバオの画像検索機能「ペリタオ」(Pailitao)により、シニアユーザーは画像検索でお気に入りの衣類を探し、類似商品の画像検索機能を使用し、より安い価格で提供しているショップを見つけることができます。
2019年6月にはアリペイで「シニア版」が利用できるようになりました。これによりQRコードのスキャン、日常の買い物と光熱費の支払い、医療機関への予約など、シニアユーザーが頻繁に使用する機能が統合され、さらにフォント拡大機能が利用できるようになりました。2019年12月、アリペイは「シニア大学」を設立し、スマートフォンの基本操作と使用方法、デジタルライフの楽しみ方や、オンライン形式とオフライン形式におけるスマートフォンの使用方法のレクチャーを実施するようになりました。
2020年上半期には、シニアユーザーのために開設したアリペイの「シニア版」へのアクセス数が、2019年上半期と比較して6.6倍に増加しました。
アリババ総研は、シニア世代向けのデジタルサービスを提供することを最優先事項としていると述べています。さらにタオバオの家族アカウントを活用して若い世代がシニア世代の代わりに支払ったりするなど、社会はあらゆる側面から安全且つ便利に共有できるデジタル環境を探求し、確立するべきであると明言しています。
アリババ総研はまた、シニア世代の理想的なデジタルライフの実現には「より安全に」、「より便利に」、「より健康的に」、そして「よりアットホームに」という4つのキーワ―ドが不可欠であるとしています。さらに、年齢に応じたデジタルサービスの実現に向けて社会的協力を呼びかけ、シニア世代が安心して利用できるデジタルライフを構築し、また社会がシニア世代を支援するためのリソースをつなぐことで、高齢化社会に立ち向かうべきであると述べています。
シェアする
リンクがコピーされました