AIフィットネス、手話ライブコマース等、アリババが取り組む障がい者のデジタル・ライフ
解説:
社会的弱者層の人々をデジタル技術の力でサポートする。アリババグループは一貫して続けてきた取り組みだ。中国貧困地域の農民でも使えるアリペイのフィンテック包摂的な取り組みが知られていますが、障がい者向けにも多くのサービスを生み出してきた。
今夏、大きなスポーツイベントに全世界から集まったアスリートたちの熱戦に夢中した方も多いのではないでしょうか。さて、障がい者スポーツはなにもプロのスポーツ選手だけのものではありません。多くの障がい者もスポーツを楽しみたいと思っていますが、なかなか環境が整っているケースは少ないようです。
この課題をデジタル技術で解決しようと、アリババグループは考えました。スポーツ事業部門であるアリババスポーツが開発したのが「AI無障がい運動」というミニアプリです。
このアプリはアリババグループの決済アプリ「アリペイ」上で動作し、さまざまなフィットネス・メニューについて、音声でガイドします。一方的にやり方を伝えるだけではありません。AI(人工知能)による画像識別機能を使い、ユーザーが規定の動作をちゃんと実行できたか確認し、その場でアドバイスや動作の指導を行います。
その動作を何回行ったかの回数もカウントするほか、姿勢や動きが間違っていた場合には指摘するという優れ物です。フィットネス・メニューは1平米程度の狭いスペースさえあればできるように工夫されています。また、障がいの種別によって、異なる種目を提案する機能もあります。
こうしたコーチとしての優れた機能に加えて、「AI無障がい運動」ミニアプリには、やる気を引き出す面白い機能がついています。それが「カロリー消費で寄付」という機能。指示どおりに運動を行うと消費カロリーが計算され、ポイントとなります。このポイントを目標レベルまでためて寄付ボタンを押すと、アリババ公益基金会から特別支援学校にスポーツ用品が寄付されるのです。
楽しく運動すれば、それが人助けにもなるのです。
目の不自由な人もネットショッピングを楽しめる
アリババグループの取り組みはこれだけではありません。障がい者のネットショッピングをサポートするために開発されたのが、「読光」という光学文字認識(OCR)技術です。
視覚障がい者の多くはウェブページの読み上げ機能を使ってネットショッピングを行っていますが、問題は写真です。というのも、写真の中にキャッチコピーや商品説明が埋め込まれているのは一般的です。通常の読み上げ機能では写真上の文字は読み上げられないため、大事な情報がわかりません。
そこでアリババグループの研究機関である「DAMOアカデミー」(達摩院)は、OCR(光学文字認識)技術を開発しました。写真に書かれた文字を認識し、読み上げることができます。2018年にタオバオとTモールなどのECサービスに実装され、多くの障がい者をサポートしてきました。
ライブコマースが生み出す障がい者雇用
さらに近年、流行しているライブコマース(動画配信とネットショッピングを融合した販売手法)では、視覚障がい者が配信者として働くようになりつつあります。
河南省の孫亜輝(スン・ヤーフイ)さんは2016年に事故で両腕を失いました。年老いた両親を心配させたくない、自ら稼いで家族を豊かにしたい。そう考えた孫さんはアリババグループの「タオバオ・ライブコマース」で起業することを決めました。
孫さんは2019年10月から、自らが住む農村の特産品を販売するライブコマースを始めました。ライブコマースといっても、ただカメラの前でセールストークをするだけではありません。商品情報の入力やメッセージの返信などパソコンの操作が不可欠です。孫さんは切断されて短くなった腕をうまく使ってマウスを操り、口にくわえた箸でキーボードを入力し、必死に仕事に取り組みました。
その努力は実ります。最初はたった1人しかいなかった視聴者が次第に増えていき、気づけば2万5000人ものフォロワーが集まりました。販売する商品も当初の2点から20種以上に増え、日に数百点を売れるまでになりました。
慣れないうちはカメラに向かうことすらできなかったという孫さんですが、仕事を続けるうちに自信がついたと話します。「ライブコマースは私に見えない手を与えてくれました。生活に対する希望を取り戻してくれたのです」孫さんは近隣の農民たちと提携し、自分の住む農村の農作物を、タオバオを通じてより多くの消費者に売っていきたいと考えています。仲間たちと一緒に豊かになりたい。新たな目標ができました。
手話でライブコマース
ライブコマースは起業を夢見る人々にチャンスを与えるものです。同時に、消費者にとっても新たな購入体験となります。ただ、配信者がどれだけ楽しいセールストークを展開しても、聴覚障がい者はそれを聞くことができないという課題もありました。
課題の中にチャンスがある。そう考えたのは浙江省杭州市のある企業です。彼らのライブコマースの配信者はいずれも聴覚障がい者で、手話を使って配信するのです。耳の不自由な人々でもライブコマースを楽しめる、画期的な取り組みです。
手話での配信は重労働です。一つの漢字を表現するために、手話ならばいくつもの動作が必要となります。配信では大量の商品を紹介しますが、その商品情報を暗記し、どのような手話で表現すればいいのか考え、スムーズに伝達できるように練習しなければなりません。配信が終わるともう汗だくになっているのだとか。
大変な仕事ですが、聴覚障がい者の配信者たちは新たな仕事に誇りを抱いています。聴覚障がい者の消費者もライブコマース体験が楽しめるようになる。その重要な役割を担っているからです。
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解説・翻訳協力:高口康太、編集:AlibabaNews 編集部
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