北京五輪で生まれた新興市場をつかめ!「消費者インサイト」と「サプライチェーン管理」がカギに

解説:

北京冬季五輪を起爆剤に「3億人がウインタースポーツに親しむ」ようにすること。五輪招致にあたっての中国政府の公約だ。新たな消費者の流入に伴い、今までにないマーケットが誕生している。どのような消費者が参入したのか、どのようなニーズがあるのか、何がトレンドなのか……こうした情報をいち早く収集し、消費者が求める新製品を投入できるかがビジネスの分かれ目となる。消費者インサイトの把握とサプライチェーンの効率的活用は、アリババグループの十八番だ。勃興する中国ウインタースポーツ市場に取り組む中国内外の企業をサポートしている。

 

北京冬季五輪が先日閉会しましたが、中国人に宿ったウインタースポーツ熱は消えてはいません。ウインタースポーツ・ブランドがこのビジネスチャンスをしっかりとつかめるよう、アリババグループはサポートしています。そのソリューションは販売チャネルの提供にとどまらず、新たなプロダクトの開発やサプライチェーンの開拓や管理までカバーしています。

北京冬季五輪がもたらしたビジネスチャンス

 

写真は北京市の什剎海。冬の間は凍結した水面がスケート場に変わります。冬季五輪によるウインタースポーツ人気もあって、例年以上の大にぎわいです。

北京冬季五輪で中国のスーパースターとなったのが、スキーフリースタイル女子の谷愛凌(グー・アイリン)です。ビッグエアで金、スロープスタイルで銀、ハーフパイプで金、弱冠18歳ながら3個のメダルを獲得しました。

その影響力には驚くばかりです。2月8日のビッグエアで金メダルを獲得すると、彼女が使っているスイスのスキー用品ブランド「FACTION」への注目は一気に高まりました。同社はアリババグループのB2Cマーケットプレイス「Tモール」にフラッグシップストアを出店していますが、8日の売上は前日比でほぼ倍増、前々日ではなんと7倍超という急成長を記録しました。

谷が使っていたアメリカのブランド「Oakley」のゴーグルも一気に人気アイテムとなりました。「Oakley」のTモールでのフラッグシップストアでは、谷が着用していたモデルは品切れに。2月9日の売上は、前年比7倍超となりました。

五輪人気の恩恵を受けたのは、特定のブランドだけではありません。北京五輪開催期間(2月4日~20日)のTモールにおけるスキー関連用品の売上は、前年同期比で4倍以上を記録しました。Tモールのスキー関連用品は3年前から前年比倍増ペースでの高い伸びを見せてきましたが、五輪本番の2022年はより大きな成長となったのです。

五輪グッズも大人気です。北京冬季五輪組織委員会の認可を受けたオフィシャルグッズは5,000点以上(2021年末時点の統計)に達しました。特に人気となったのがマスコットキャラクター「ビンドゥンドゥン」のグッズです。Tモールには、北京冬季五輪の公式ショップが開設されていますが、冬季五輪期間中にのべ1億人が購入しています。

写真は北京市内の五輪公式グッズショップに設置されたTモール案内機。お店で販売されていない商品でも、案内機を使ってネットショップを検索可能です。

Tモールの出店ラッシュ、ハイブランドのウインタースポーツ・コラボ

新型コロナウイルスの流行が続くなか、ネット販売を強化する戦略は世界共通です。ウインタースポーツ・ブランドもこのトレンドに応じて、中国でのオンライン出店を強化しています。

Tモールには2020年、2021年の過去2年間に、中国内外の88ものブランドがTモールに出店しました。その中にはBOGNER、FACTION、FUSALP、MACKAGE、X-Bionicなどの、著名な国際的ブランドも含まれています。

ウインタースポーツの専門ブランド以外にも、北京冬季五輪の波に乗ろうとする動きが広がりました。その象徴とも言えるのがハイブランドの新製品です。Tモール・ラグジュアリーに出店する100近いハイブランドは、スキーウェアやヘルメットなどのウインタースポーツ関連の新製品を発売しています。

また、安踏、李寧など中国大手スポーツブランドも、新たにウインタースポーツ用品を展開するようになったほか、多くの新興ブランドが誕生しています。2021年に誕生したウインタースポーツ・ブランドの数は前年比200%増となりました。

アリババのサプライチェーン支援

「Tモールが提供するのは販売チャネルだけではありません。消費者インサイトという産業の川上から、サプライチェーンの拡大や管理という川下にいたるまで支援しています」

これはTモール・スキー業界チームの王小源(ワン・シャオユエン)の言葉です。消費者をより深く理解し、そのニーズに応じたプロダクトをいち早く販売すること。消費者インサイトとサプライチェーン管理による製品投入サイクルの短縮は、ブランド運営にとって何よりも重要です。

写真は北京冬季五輪のマスコットキャラクター、ビンドゥンドゥンとシュエホワロン。後ろには「北京五輪公式パートナー・Tモール」と書かれている。

アリババグループの力を積極的に活用しているのが、中国新興スキー用品ブランド「南恩」(NANDN)です。一口にスキー用品といっても、スキー板、ゴーグル、ヘルメット、シューズ、スティックなどとさまざまなジャンルがあります。開発は一般的なアパレル以上に難度が高く、一筋縄ではいきません。南恩はアリババグループの力を借りつつ、サプライチェーンを拡大してきました。そのプロダクトは当初、一部の製品ジャンルに限られていましたが、今ではスキー用品全体をカバーするまでに拡大しています。

開発にあたっては消費者ニーズを理解することが必要ですが、ここでもアリババグループの力を活用しています。Tモールは、購入者が企業をどのように理解しているかという消費者インサイトを提供しています。それによって、南恩は「若者向け、トレンドと機能性を兼ね備えたスキー用品」と評価されていることがわかりました。南恩を評価する消費者にあう形で、新たな商品の開発を進めていきました。

創業者・耿紹峰(ゲン・シャオフォン)は自社の取り組みに手応えを感じています。「プロダクトこそがもっとも重要です。今後も新製品の設計と開発に力を注ぎます」と意欲を示しています。

製品投入サイクルを高速化

ブランドの製品開発サイクルを加速させるために、アリババグループはTモール・イノベーションセンター(TMIC)を設立しています。TMICを活用すれば、消費者インサイトや新たなトレンドを読み解き、またサプライチェーンの活用効率を引き上げることで、新製品開発のサイクルを短縮することが可能です。

TMICはこれまで化粧品やスキンケアなどの業界で経験を積んできました。新製品開発の期間を平均で18カ月から6カ月にまで短縮するという、驚異的な成果をあげてきました。

そして、このたびウインタースポーツという新たな業界でも新製品開発支援にチャレンジしています。消費者インサイトに基づく開発だけではなく、サプライチェーンの拡大や管理、さらには注文数に応じた少量生産を実現するアリババのスマートファクトリー事業である犀牛智造などもウインタースポーツ・ビジネスに対応しています。

もともとウインタースポーツ人気があまり高くなかった中国ですが、北京冬季五輪という起爆剤によって状況は大きく変化しています。この新トレンドをいち早く読み解くことが必要なのです。

調査企業の清渠数智がTモールと共同で発表した報告書「2022 Tモール・スキー市場トレンドレポート」は、中国スキー市場の新トレンドを紹介しています。

第一にスキーシーズンの延長、通年化です。近年、中国には続々と大型室内スキー場が誕生しています。冬だけではなく、真夏であってもスキーを楽しめるようになったわけです。実際、アリババの旅行予約プラットフォーム「フリギー」では、2021年夏のスキー関連の予約は前年比130%を達成しました。90後(1990年代生まれ)の若者たちが主な消費者となっています。

第二のトレンドは、青少年市場の発展です。スキーは大人たちの遊びでしたが、最近では子ども向けのスキー用品の購入数が急増しています。いまや、大人向けに接近するほどの規模になりました。新たな成長市場として、見過ごせないジャンルです。

 

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