AIアルゴリズムにより風力発電所の発電量の予測精度が向上、新エネルギー業界の「風の制御術」の習得をサポート

アリババDAMOアカデミーはAIアルゴリズムの開発に成功し、風力発電所の発電量の予測精度を向上させた

 アリババグループのグローバル研究機関であるアリババDAMOアカデミー(中国語:達摩院)はこの度、風力発電所の風速と発電電力量を高い精度で予測できるAIアルゴリズムの開発に成功しました。このアルゴリズムは、平野、山地、海岸などのさまざまな地形の風速や、エリア内の風力発電所の発電量を予測でき、電力スケジューリングのためのデータを通じたサポートを提供し、風力発電の消費率を改善します。複雑な山岳エリアの風力発電所では、DAMOアカデミーのAIを使用することで予測精度を20%向上できます。現在このアルゴリズムは、中国国内の多くの風力発電所で使用されています。

 風力発電は、最も急速に成長している再生可能エネルギーの1つです。中国国家エネルギー局のデータによると、2021年だけでも、中国の風力発電量は前年比40.5%増の6,526 億 kWhに達しています。しかしながら、風力はランダムで断続的に生じるという特徴があり、特に山岳の風力発電所は山谷風の循環の影響を受け、局地的な微気候が生じる可能性が高いです。このため、通常の天気予報では風力発電所のエリア内の風速を正確に予測できず、風力発電による発電量の予測精度が低下し、電力システムが不安定になる等の問題がありました。

 この問題に対し、DAMOアカデミーの地球科学クラウドプラットフォームAI Earthチームは高精度グリッド気象・電力予測モデルを開発しました。このモデルには物理方程式が組み込まれており、物理的制約を踏まえた上で結果を算定するため、予測結果はさらに実際の状況に近くなります。このモデルは地理空間情報を効率的に抽出し、天気予報の精度を100mレベルに向上させ、複雑な地形における風速差の問題を解決し、より正確に風速と電力を予測できるようにします。

 現在、DAMOアカデミーは、内モンゴル東潤能源会社と提携して、中国国内にある多数の風力発電所に洗練された気象サービスを提供しています。データによると、山岳エリアの風力発電所では、DAMOアカデミーのAIによる予測精度の向上が顕著になっています。湖南省の山岳地帯のある風力発電所では、過去の二乗平均平方根誤差(RMSE)が約4.75であったのに対し、DAMOアカデミーのAIアルゴリズムを実装した後、誤差は3.02にまで大幅に減少し、風力発電量の予測精度が20%以上向上しました。

従来の方法に比べてDAMOアカデミーAIアルゴリズムの予測結果は実際の状況により近くなっています

アリババDAMOアカデミー・AI Earthチーム責任者 李昊(リー・ハオ)のコメント

 「私たちは風の不安定さという特徴を変えることはできませんが、AIと従来の数値モデルを組み合わせることで、風の変化を効率的に捉え、新エネルギー業界が「風の制御術」を習得できるようにサポートします。」

 2020年9月、DAMOアカデミーはAI Earthプラットフォームをリリースしました。このプラットフォームは、ドローンや監視カメラなどによるリアルタイムの映像、気象観測設備による気象データ、IoTデータ等多数な情報源から得たデータを融合し、統合分析を行います。昨年末、江蘇省気象観測所とDAMOアカデミーが共同で、AI Earthのテクノロジーにより短時間強風AI予測アルゴリズム、3Dレーダーエコー外挿などの技術の研究を実施することで、強風の予測精度が低いという難題を解決し、強風災害警報と新エネルギーの電力調整のための高効率なサービスを提供しています。現在、AI Earthに関連する技術は中国水利部、国家気象センター、中国生態環境部などに適用されており、関連する短時間天気予報アルゴリズムの研究成果は、国際的に認められている地理学の学術雑誌であるRemote sensing(リモートセンシング)に掲載されています。

 

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