アリババクラウド、カーボンニュートラルを自分ごと化するプラットフォームを開発

2060年までにカーボンニュートラルを目指す中国では、地域や学校におけるアリババクラウドの
個人向け二酸化炭素排出量アカウントの利用が加速

食品廃棄物削減の一環として、完食した皿の写真を専用アプリにアップロードする学生(写真提供:アリババグループ)

 アリババクラウドは、今年2月に個人の二酸化炭素排出量を計測するエネルギー・エキスパート・プラットフォーム(Energy Expert platformを立ち上げ、ユーザー自身が排出量を計測し、低炭素なライフスタイルを選択することで、メリットや特典を受け取ることができるようにしました。

 アリババクラウドは広州市の認証機関CEPREIと協力し、食事をキレイに完食すると200クレジット、地下鉄を利用すると554クレジットなど、日常生活における二酸化炭素の削減量に基づきクレジットを提供する仕組みを開発しました。

 アリババクラウドのプロダクト&ソリューション担当ゼネラルマネージャーの陳麗娟(チェン・リージュアン)は、「このプラットフォームは、低炭素なライフスタイルや、環境に責任を持った行動を奨励するよう設計されています」と述べています。環境意識の高い行動を促す鍵は、日常生活をクレジットに換算する仕組みを開発し、クレジットに基づいた低炭素ライフスタイルを推進するコミュニティを構築することです。実際、これまで1,492以上の企業やコミュニティがエネルギー・エキスパート・プラットフォームを利用し、約394,000トンもの二酸化炭素排出量を削減しました。

郊外における二酸化炭素排出量削減―広東省深セン市の古民家村・新橋世居地区の例

 アリババクラウドといち早く提携したのが、広東省深セン市南部の新橋世居地区でした。昨年末の試験運用開始以来、このコミュニティの住民589人は計37.77トンもの二酸化炭素排出量を削減しました。

 新橋世居地区の住民一人ひとりが個人用アカウントを持っており、自身の電力使用量と二酸化炭素排出量をチェックしています。また、家庭用アカウントでは、同じ家に住む全ての人の合計が集計されます。電気、水道、ガス使用による排出量は、近隣施設で発電される太陽光や風力エネルギーなどのクリーンエネルギー使用量と相殺され、合計排出量が計算されます。

新橋世居地域の俯瞰写真(写真提供:国際低炭城文化会議中心)


同プラットフォームは、エネルギー消費量を表示するだけでなく、節電のために太陽光パネルを設置することや、節水のために雨水を集めることなど、各ユーザーにカスタマイズされた提案も行います。

 環境に優しいライフスタイルを続けるには、インフラ整備以上に、人々の意識改革が重要となります。新橋世居地区での同プロジェクト設計者であるアリババクラウドの周凡珂は、「一人ひとりが自身の環境負荷を意識することで、カーボンニュートラルをより身近に自分ごととして感じられるようになります」と述べています。

エネルギー・エキスパート・プラットフォームで低炭素化キャンペーンを実施(写真提供:アリババグループ)

サステナビリティでも優秀学生を目指す―中国美術学院の例

 昨年9月、中国美術学院もエネルギー・エキスパート・プラットフォームを利用した低炭素化キャンパスプロジェクトを試験的に実施しました。学生は毎日モバイルアプリで寮における各自の電力使用量を確認でき、数週間分の電力使用量とキャンパス全体における電力使用量ランキングを示した請求書を入手できます。同請求書は、それぞれの大学寮の電力使用量を比較することもでき、競争要素を取り入れることで省エネを促す仕組みを取り入れています。

 低炭素化キャンパス・プロジェクトの責任者であるアリババクラウドの肖󠄁●(●=金偏に雷)は、「行動科学とテクノロジーを組み合わせることで、人々の認識を変え、低炭素化をかっこいいものにしようと試みています。エネルギー・エキスパート・プラットフォームは廃棄物処理による温室効果ガス排出を抑制するために、毎食後キレイに食べ終わったお皿の写真をアップするよう学生に促してもおり、参加者の選択肢を拡げ、日常生活の中で低炭素化を促す仕組みを提供しています」と述べています。

 同校で30日間の試験運用の結果、低炭素化のためのエネルギー・エキスパート・プラットフォームへのアクセス数は29,000を超え、一人当たり3.94kgの二酸化炭素排出量を削減しました。

 「住民には、低炭素化への取り組みに参加し、達成感を得てほしい」と話すのは、先述の新橋世居地区のプロジェクト設計者である周です。周は、日々、中国国内におけるエネルギー・エキスパート・プラットフォームの利用拡大に尽力しています。

 アリババは、2035年までにグループのエコシステム全体で15億トンの炭素排出量削減を実現する目標を宣言しています。また、同社は、スコープ1、2、3に含まれていない、エコシステム全体の幅広い関係者から生じる炭素排出量を示す「スコープ3+」という先駆的な概念を提唱し、自社のデジタルプラットフォームを活用することにより、グループ全体の低炭素化を促進することを約束しています。

 

関連記事
中国消費者、よりサスティナブルな買い物へ、Tモールイノベーションセンターが5つのグローバルブランドと連携
AIにデジタル・エコポイント、テックで実現するアリババの「脱炭素」
買い物を通じてより良い社会を、アリババ主催のショッピングフェスティバル「天猫ダブルイレブン」が今年も開催

Energy Expert platform アリババ アリババクラウド エネルギー・エキスパート・プラットフォーム 低炭素 炭素排出量測定 脱炭素