デジタル技術とプラットフォーム革新によるカーボンニュートラル実現に向けて
解説:
アリババグループは、2030年までに自社オペレーションのカーボンニュートラルを達成し、2035年までにグループのビジネスエコシステム全体で15億トンの二酸化炭素排出を削減するという大胆な数値目標を掲げている。同グループ会長兼最高経営責任者(CEO)のダニエル・チャン氏は、カーボンニュートラル実現のために、アリババのような巨大企業は、「単に既存のガイドラインを満たすだけでなく、それ以上の貢献をしなければならない」と語る。
アリババグループ 会長兼最高経営責任者(CEO) ダニエル・チャン
カーボンニュートラル実現のために、私たちができることは無限にあります。世界中の会社や団体が温室効果ガス排出量削減に向けた最善策を計画するなか、Eコマースの最大手であるアリババは、気候危機対策にとどまらない、はるかに大きな貢献をする機会を持ち、その責務を担っています。したがって、私たちは、単に既存のガイドラインを満たすだけでなく、それ以上の貢献をしなければならないのです。
デジタルインフラストラクチャーのグローバルなプロバイダー・プラットフォーマーとして、アリババは何百万ものブランドと何十億人もの消費者を抱えています。このことから、当社の事業規模と市場での存在感に見合った強固なサステナビリティの枠組みを確立し、気候変動問題に効果的に取り組み、持続可能な未来の構築に貢献できるユニークな立場にあります。
温室効果ガス(GHG)プロトコルは、世界で最も広く使われている企業向けの温室効果ガス排出量の算定と報告の会計基準です。何千もの企業を対象に作成されたGHGプロトコルは、カーボンニュートラルに向けた行動を促進することを目的としており、独立した組織である世界資源研究所(WRI)と持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)によって作成されました。同プロトコルは、企業が温室効果ガス排出量を算出し、削減を図るための行動指針を明確に示すために、3つのスコープを定めています。
- スコープ1:企業自らによる温室効果ガスの直接排出(ボイラー、溶鉱炉、自動車、機械などによるもの)
- スコープ2:他社から購入・消費する電力などの使用に伴う間接排出
- スコープ3:スコープ1・2以外のバリューチェーン全体で発生する間接排出(資源採掘、燃料輸送、製品やサービスの利用など)
GHGプロトコルは企業が温室効果ガス削減目標を達成するための有力な枠組みを提供しますが、アリババのようなグローバルリーダーは、カーボンニュートラルという大きな目標の実現に向け、スコープ1・2・3の範囲以外においても責任ある行動を取る必要があります。
アリババは、世界の気温上昇を1.5℃までに抑えるためにSBTイニシアチブ(科学的根拠に基づく目標)への参加を表明しました。削減目標を設定するにあたり、アリババは温室効果ガス排出量の包括的な分析に着手しました。
アリババのエコシステムはEコマース、ローカルサービス、ロジスティクス、クラウドコンピューティング、エンターテインメントなど多岐にわたり、各事業の違いも大きいため、温室効果ガス排出量の分析は非常に複雑です。一方で、当社のデジタル化とプラットフォームの革新が進むなか、低炭素循環型経済への移行をより強力に推進できると考えており、自社事業だけでなくバリューチェーン全体の脱炭素化に貢献できると考えています。
私たちは、2030年までにスコープ1と2のカーボンニュートラルを達成し、スコープ3の排出量を半減させるという高い目標を掲げています。より効率化したプロセスと省エネ技術による排出量の削減などのデジタル変革、再生可能エネルギーの活用、炭素の削減・除去・オフセットという優先順位の確立を通じ、目標を達成する見通しです。
スコープ3+の目標
カーボンニュートラル実現に向けたアリババの計画は、スコープ1・2・3にとどまりません。
具体的には、2021年から2035年にかけて、デジタルプラットフォームのエコシステム全体で温室効果ガス排出量を15億トン削減するスコープ3+という独自の目標を設定しており、持続可能な消費、スマート物流、中古市場のデジタル化、低炭素な運営・管理、グリーン物流とリサイクルを優先課題に設定しています。
アリババは、今後もエコシステム全体の排出量を明確化、測定、削減するために、グローバル企業や公営企業に対して、当社、当社のパートナー企業やコミュニティとともに、スコープ3+の達成へ向けた協力を呼びかけています。
スコープ3+のような大胆な目標を達成するには、単にESG方針を吟味するだけでは足りず、企業のミッションやカルチャー、働き方など、抜本的な変革が不可欠なことを十分に理解しています。
アクセンチュアのグローバルサステナビリティサービス部門リーダー兼最高責任者のPeter Lacy氏は、次のように述べています。「スコープ3+は、企業が排出量削減のために負う一般的な責任範囲を超えており、バリューチェーン内の直接排出量だけでなく、バリューチェーン外の間接排出量の測定も試みるものです。アリババが目指しているような規模でエコシステム全体の排出量を削減し、バリューチェーン全体の変革を実現した企業は、未だかつてありません」
スコープ3+の実現可能性について始めは不安に感じるかもしれませんが、従業員、パートナー企業、お客様などすべてのステークホルダーが協力し、段階的にデジタル化に取り組むことで必ず実現できると考えています。一つひとつの行動による影響は小さいですが、下記のような行動の積み重ねと掛け算により、大きな成果を想像することができるでしょう。
- アリババのEコマースプラットフォームで、ブランドと協働し、グリーン消費や持続可能なライフスタイルを推進する専用チャネルを構築
- アリババの中古市場プラットフォーム「Idle Fish」にて、中古品の再利用を促進する循環型経済を支援
- アリババのスマート物流プラットフォーム「菜鳥」にて、リサイクル可能な包装の利用促進
- アリババの堅牢なクラウドコンピューティングインフラやコラボレーションワークプラットフォーム「DingTalk」による、職場の完全デジタル化・グリーン化を促進(例:オフィスのエネルギー消費削減、環境に優しいワークスタイル促進)
- アリババクラウドの製品および技術革新を活用して、お客様のエネルギー効率向上を支援(例:エネルギー効率の高い液体冷却で温度管理するデータセンター技術や、低消費電力で高性能を実現する製品・サービスの提供)
上記の行動はスコープ3+の目標達成に貢献するものですが、いずれもまだ初期段階にあり、試験的な試みでもあるため、単独で気候変動の危機を解決できるものではありません。アリババはスコープ3+を、2035年までに二酸化炭素排出量を15億トン削減するという目標に対する答えではなく、目標達成のための問いとして提示しているのです。
そのため、私たちは世界中のすべての主要な組織が、地球の生態系を守るために一つになり、一緒に尽力してほしいと考えています。
すべての大きな変化は、家庭などの身の回りから始まります。アリババが、スコープ3+の目標を完全に達成するには、販売会社、各種団体、従業員、消費者などすべてのパートナーと協力し、二酸化炭素排出量を削減し、ビジネスにおける大きな革新とイニシアチブを推進する必要があります。この取り組みは私たちだけのものではなく、私たちだけでは達成できません。アリババは、地球がより持続可能な未来を迎えられるよう様々な対策を支援したいと考えています。
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