グリーンなブランドは、持続可能な商品の浸透が進む中国に事業機会を見出す

解説:
中国では近年、持続可能な商品への需要が高まっており、グリーンなブランドにとって自社商品を訴求する好機となっている。「私たちは、より持続可能な未来を出店企業やブランドと一緒に創造する事業機会があると考えている」と話すのは、アリババグループの最高マーケティング責任者(CMO)であるクリス・トン(Chris Tung)。グリーンなブランドの出店を促進するだけでなく、アリババとしても、エコな商品であることを証明するカーボンラベルの導入や梱包材の最小化、また、ゲーム感覚で低炭素な行動を実行できる機能の導入など、消費者が自身の環境への影響を理解するきっかけづくりを進めている。

中国で急成長するエコな小売業(写真提供:Shutterstock)

 中国の消費者は、気候変動に対する意識の高まりとともに、持続可能な商品を求めてEコマースのプラットフォームに集まっており、環境に配慮したものづくりをしているブランドにとって、自社商品の持続可能性を訴求する好機となっています。

 多国籍企業のユニリーバからクリーンビューティーコスメの新興企業まで、さまざまなブランドがEコマースを活用し、環境に優しい商品を中国の消費者にとって身近なものにしています。

 Eコマースプラットフォームのアリババグループの最高マーケティング責任者であるChris Tungは、「私たちは、より持続可能な未来を出店企業やブランドと一緒に創造する事業機会があると考えています」と4月19日のウェビナーにて述べました。

 アリババは、2030年までに同社の事業運営におけるカーボンニュートラルを実現することを公約しており、事業全体の二酸化炭素排出量を抑制するとともに、何百万もの出店企業と協力し、同社のプラットフォームを利用する10億人の中国消費者により持続可能な商品を提供することを目指しています。

“私たちは、より持続可能な未来を出店企業やブランドと一緒に創造する事業機会があると考えています”
アリババ・グループ 最高マーケティング責任者クリス・トン( Chris Tung)

 新型コロナウイルス感染症の流行で中国の需要に陰りが見えてきたとはいえ、グリーンな商品市場は活況を呈しており、実際、持続可能なドリンクウェアブランドのKlean Kanteenやパリのクリーンコスメ新興企業のLa Bouche Rougeなどのブランドは、中国での事業拡大を表明しています。

 コンサルティング会社PwCの調査によると、世界全体では54%ですが、中国では72%もの消費者が持続可能性を重視する企業から商品を購入するようにしていると回答しています。

 確かに、成分表から有害物質を調べたり、サプライチェーンから二酸化炭素排出量を調べたりすることは、消費者にとってとても大変なことです。

 調査会社Coresight Researchが主催したウェビナーにおいて、「啓発が重要であり、持続可能性を受け入れる社会を創るための最大のカギです」とTungは述べました。

 

中国における持続可能な消費に関するウェビナーで、啓発が重要であると語るアリババCMOのクリス・トン(写真提供:アリババグループ)

 アリババは、消費者にとって持続可能なライフスタイルをより身近なものにし、商品研究を実社会に生かすためのさまざまなインタラクティブな機能を取り入れることによって、この知識格差を埋めようと努めています。

 「壮大な目標ですが、投資する価値があるものです。また、それは賢明な経営判断でもあります。実際、我々のブランドは、梱包が最小限であること、パラベン、硫酸塩、フタル酸塩、リン酸塩などの有害成分を含まないことが中国の消費者から評価されています」と中国でプロ用ヘアケア商品を展開するオラプレックスCEOのJuE Wong氏はウェビナーにて述べました。

知れば知るほど楽しいエコ消費

 プラットフォーム企業と出店企業は、消費者に何がグリーンで何がそうでないかを啓発する活動を世界規模で推進しています。

 透明性のある商品の二酸化炭素排出量表示、環境に優しい商品選択肢に関するライブストリーミング、より環境に優しい梱包など、すべて中国で盛り上がりを見せています。

 アリババのB2CのEコマースプラットフォームTモール(Tmall、天猫)は今月初め、消費者が購入する商品の環境に与える影響を知れるように、エコな商品であることを証明するカーボンラベルを発表しました。これまでに、数千の出店企業の30万点以上の電気製品のエネルギー効率をランク付けしており、他の商品分野にも拡大していく予定です。

 アリババのデリバリーサービス「ウーラマ(餓了麼、Ele.me)」は、低炭素ライフスタイルを促進するため、ユーザーの消費行動に基づくポイントシステムを4月20日に公開しました。消費者は、ウーラマでの注文の際、プラスチック製品を使わず、小さな食器を使うなど、環境に優しい習慣を取り入れるとポイントを獲得できます。

 しかし、背景説明なしに情報をただ提供するだけでは十分ではありません。サンフランシスコに拠点を置く持続可能なフットウェアブランドRothy’sなどのブランドは、自社ブランドについてライブストリーミングで語り、環境に優しいライフスタイルを採用する方法について、消費者と一緒に話し合う機会を設けています。

 「Eコマースプラットフォームは、環境負荷軽減の進捗状況を消費者に伝えていかなければなりません」とクリス・トンは述べました。

4月20日に行われたCoresight Researchのウェビナーでは、中国におけるグリーン消費に焦点を当てた

 アリババのエコシステムでは、エコな買い物で特典を得られる双方向性の体験を提供しており、例えば、環境に優しい消費行動を取るとデジタル決済「アリペイ」のアントフォレストでエネルギーポイントが貯められ、中国の最も乾燥した地域に植樹される木に交換できます。

 オラプレックスCEOのWong氏は、自社商品に二酸化炭素排出量情報を追加した後、顧客が環境への影響を測定し続けているのを見て、「ゲーム感覚になっています」と述べました。

 また、アリババの物流プラットフォーム「ツァイニャオ(菜鳥、Cainiao)」は、個人注文の処理によって排出される二酸化炭素の量を測定するシステムを開発しました。

 アプリで「宅配荷物リサイクル」と検索すると、消費者は受け取ったエコな荷物の数や、ツァイニャオ・ポストで発送したリサイクル段ボールの数を確認することができます。昨年、ユニリーバとアリババは、サプライチェーンをより環境に配慮したものにするために提携しました。

小売革命

 昨年から今年初めにかけて提供された上記のような取り組みは、6月に開催されるアリババの販促キャンペーン「6.18ショッピング・フェスティバル」にて紹介される予定です。

 毎年恒例の当該キャンペーン(昨年は5月24日から6月20日まで開催)では、何十万もの出店企業が、10億人を超える世界中の年間アクティブユーザーに対して特別なプロモーションを実施します。

 「今年は、これまで以上に環境に配慮したイベントになります。環境に優しい商品により焦点を当て、そのような商品をより多く提供できるようにすることが私たちの使命です」とクリス・トンはウェビナーで述べました。

 昨年の大型キャンペーン「天猫ダブルイレブン・ショッピング・フェスティバル」で発表されたエコ商品を紹介する専門サイトも登場する予定です。また、オラプレックスは商品の温室効果ガスのより詳細な情報を提供し、QRコードで購入可能な梱包用の箱を使用しない商品も用意しました。

 美容・パーソナルケア業界は、海洋汚染をはじめとする環境汚染の元凶である使い捨てプラスチックの大量消費で悪名高く、業界にとって、環境に配慮した商品を提供することは重要な取り組みです。

 「購入後にお客様が最初にすることのひとつは箱を捨てることだと分かっていますので、箱なし商品を提供することは、会社の姿勢を伝える非常に強いメッセージなのです」とWong氏は述べています。

 投資家もグリーン消費の分野に注目しています。世界のESG投資額の統計を集計している国際団体Global Sustainable Investment Allianceの調査によると、世界中の持続可能な投資は35兆3千億ドルに膨れ上がり、世界の5大市場では全資産の3分の1を超えています。

 「消費者、出店企業、投資家も、私たちがすべてのステークホルダーに大きな価値を生み出すことを知っています。グリーンなブランドになることは、重要な事業機会なのです」とTungは述べました。

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