ユーザー参加型のリアル植林活動ゲーム「アントフォレスト」。日本法人・取締役の蔣微筱がハフポスト日本版の音声番組で解説【連載・第2回】
解説:
脱炭素を含めたSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みについて、アリババ株式会社・取締役の蔣微筱(ジャン・ウェイシャオ)が、ハフポスト日本版の記者・高橋史弥さんが主催しているポッドキャスト「ハフちゃいな」に出演して対談した連載企画。第二回では、第一回のインタビューで言及したアリペイの植林ミニアプリ「アントフォレスト」について深掘りしながら、なぜ6億人のユーザーの参加を引き寄せることができたかについて、実況しました。
アントフォレストは、アリババの原点「ささやかな力をなるべく合わせて、社会に少しでも良い変化を起こそう」から始まった取り組みで、仮想空間で木を育てるという“ゲーム”です。実は、仮想空間だけでなく、本当にリアルの世界でも木を植えるのですが、”プレイ”経験がないとなかなかイメージしにくい取り組みだと思います。そこで、アリババ株式会社・取締役の蔣微筱(ジャン・ウェイシャオ)が、実際にアプリをお見せしながら解説させていただきました。以下、対談の音声から蔣の話を抜粋してご紹介いたします。
ゲーム感覚で環境に優しい活動を積み重ねることで、実際に植林までできる
―― ジャンさんが今、手に持っているスマートフォンで開いている決済アプリが「アリペイ(Alipay)」ですね。もう中国では現金で支払いするというより、QRコードをスマホでスキャンして決済することが非常に一般的になっています。アリペイは、本来はそのためのアプリですよね。
そうですね。元々は支払いのためのアプリでしたが、実店舗、Eコマース、オンラインチケットなど様々な支払いに対応するうちに、どんどん新たな機能やサービスが加わりました。このアリペイというアプリの中で動く「ミニアプリ」の形で、2016年にアントフォレストが始まりました。
―― 早速、アントフォレストのミニアプリを見せていただけますでしょうか?
アリペイアプリのトップページに「森林」というマークがあります。ここをクリックすると、アントフォレストのミニアプリが開き、ゲームのような画面が出てきます。画面内にはバーチャルの木のCGが表示されています。
このバーチャルの木の周囲に、緑色のシャボン玉が浮かんでいますね。この中に、1日の行動に応じて、「環境に優しい行動へのポイント」がどのぐらい付与されたかが示されています。それを収穫していくと、木のポイントが貯まります。
「環境に優しい行動へのポイント」は、環境に配慮した生活行動をアリペイユーザーが行うで付与されます。例えば、水道代や電気代などをオンラインで支払う、徒歩で通勤する、車に乗らずに1週間を過ごすなどの活動が対象です。紙のレシート削減、排ガスやCO2抑制など、さまざまな「環境に優しい行動」に所定のポイントが付与されます。
ポイントがどんどん貯まると、バーチャルだけでなくリアルの世界に木を植えることができます。アプリ画面の上の「木を植える」というボタンを押してみてください。たくさんの木の種類が出てくると思います。この中から木を選び、砂漠化が進行している地域などに植林できるのです。自分が実際に植えた木の一覧をアプリから見ることもできます。
アプリ上の手続きだけでは、「本当に環境保護活動に貢献できているのか?」と疑問に思うユーザーもいらっしゃると思います。アントフォレストでは、実際に木が植えられたかどうかをミニアプリから確認することもできます。植林エリアは自然保護区となっていて、入り口に「アントフォレスト何号林」という看板があり、木のIDまで割り当てられます。
ユーザー参加型の環境保護活動が、NGO、企業、そして国連まで波及
―― 現状のユーザー数や、外部からの評価などを教えてください。
今年(2021年)8月でちょうど5周年を迎え、既に6億人のアリペイユーザーが参加しています。合計で約3億本が実際に植林されています。このプロジェクトは有り難いことに、2019年に国連でも表彰されました。宇宙から撮影した画像の中に、アントフォレストの活動を通じて形成された森の緑も確認できます。
開始当初は、ユーザーみんなで木を植えましょうという取り組みでしたが、最近の中国では、企業も環境に優しい活動をしようという意識が高まってきました。私たちはプラットフォームとして仕組みを提供することで、企業の皆様も自身の消費者に参加を働きかけ、一緒に木を植える活動を始めています。中国のスターバックスなど、大手企業も参加しています。
また、実際の植林を行う多くの団体にもご協力いただいています。もともと、中国国内にはさまざまなNGOや政府の保護区があり、それぞれが環境保全の活動をされていました。私たちはそれらの団体に、このアントフォレストというスキームを提供することで、こういった関係各所を結びつけることができました。また、実際に植林した木のメンテナンス費用と、その木を収穫することによって得られる収益があり、そのサイクルを回すことで費用的にも持続可能なプロジェクトにしています。
友だちと楽しく競い合う仕組みにより、6億人にまで浸透
―― 6億人が参加しているというのは記録的な数字だと思います。どのようにしてここまで広がったのでしょうか?
消費者が参加しやすい仕組みを作ったことが一番のポイントだと思います。少しでもゲーム性(ゲーミフィケーション)や楽しさを意識したこと、それがユーザーの「世の中にいい事をしている」という貢献感を持てるような仕組みに繋がったことで、ここまで広がったのではないかと思います。
実は私も以前、「本当に続けられるのかな?」と感じたことがあります。実際アントフォレストをプレイしてみたら、「緊張感」をもった植林活動でした。
―― 緊張感?!「緊張感のある植林活動」とは、どういうことでしょうか?
実は、自分が毎日ウォーキングなどして貯めたポイントは、決まった時間に”収穫”しないと、友だちに奪われてしまうのです(笑)。その友だちは、自身のポイントと奪ったポイントでバーチャルの木を育てる。さらにどんどん実際の木を植えていく。そうすると証書までもらえる。証書には「2020年あなたは5本の植えました」と書いてあり、友だちから自慢されてしまうんです。だから友だちに負けないように、みんながたくさん地球に優しい活動をして、ポイントを定期的に収穫して貯めていくことで、たくさんの木が植えられる結果になりました。やはりゲーム性が良いスパイスになったのではないかと思います。
また、アントフォレストでは植林活動だけでなく、自然保護区の保護にポイントを寄付することもできます。保護区の中で生息している野生動物や植物をゲームの中で確認することもできるため、木を植えるだけでなく気候変動によって危機に直面している植物や動物に関心を持つ方もいるでしょう。また、ウォーキングによって得られるポイントを可視化することで、環境だけでなく自身の健康へのモチベーションを上げる方もいるでしょう。14億人と人口の多い中国であっても、多種多様な興味を持つ方が、それぞれ自分の興味関心のある分野に惹き付けられて、自然と環境保護活動に参加しているのではないでしょうか。
※ジャンさんを取材いただいたポッドキャスト『ハフちゃいな』第94回はこちらをクリックしてご視聴いただけます。
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出典:ハフポスト日本版「ハフちゃいな」第94回「6億人が没頭、アリババ製『脱炭素ゲーム』を実況してみた(ゲスト:蔣微筱さん)」
記事編集:アリババニュース編集部
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