フードバンクにデジタル革命!オンライン申請で無料配送
解説:
「To make it easy to do business anywhere」(あらゆるビジネスの可能性を広げる力になる)とはアリババグループのミッション。デジタル技術を駆使して、商品開発、販売、物流、広告、クラウドコンピューティングなど、さまざまな分野でビジネスソリューションを展開している。そして、ビジネスだけではなく、さまざまな慈善活動をデジタル技術で改善する試みにも広がっている。マッチングはプラットフォーム企業の本質だ。「助けを求める人」と「手助けしたい人」をつなぐことで、これまでにはない新たな慈善活動が立ち上がりつつある。
中国本土で初となるフードバンク「緑州フードバンク(緑州食物銀行)」は9月16日、アリババグループが運営する中国最大のソーシャルECプラットフォーム「タオバオ」(淘宝)にネットショップ「緑州盛食社」を正式開設しました。日々の食事を確保できずに困っている人々は、タオバオのスマートフォン・アプリから申請すると、自宅に無料の食料品が配送されるというシステムです。
無料で申請できますが、身分確認が必要となるほか、申込みは1日1回までと限定しています。もっとも助けを必要としている人に、支援が届くようにとの工夫です。提供されている食品は米などの穀物とインスタント食品で、ほとんどは賞味期限切れまで約3カ月の時間が残っています。
EC(電子商取引)プラットフォームの成熟した物流システムを活用することで、これまでは拠点での分配というモデルにとどまっていたフードバンクに「デジタルの翼」を授ける新たな試みとなりました。これまで以上に多くの人々を助けられると同時に、賞味期限切れで廃棄される食料品のムダを省くことにもつながります。
フードバンク:飢餓と食料品廃棄が併存する世界を変えるために
世界初となるフードバンク「セントマリーフードバンク」は1967年、米アリゾナ州で誕生しました。余った食べ物を集め、必要な人に提供する活動を行います。
国連食糧農業機関(FAO)によると、毎年全世界の食料品の約3分の1は製造、消費の過程で廃棄されています。その一方で8億人超もの人々が飢餓で苦しんでいます。フードバンクとは食糧の浪費という環境問題と、恵まれない人々に食糧を与えるという福祉の問題とを同時に解決しようとする試みなのです。
米国から始まったフードバンクですが、今では世界各地に広がっています。中国の緑州フードバンクは、環境NGO「上海緑州公益発展センター」の一部門として2014年末に成立した、中国本土では初となるフードバンクです。誕生から7年間で230社あまりの食品メーカーと提携し、1000トン以上の賞味期限切れ間近の食品を支給してきました。支援を受けた人の数はのべ100万人を超えます。
ECモデルで突破するフードバンクの限界
緑州フードバンクには5万人を超えるボランティアが参加し、全国304カ所の支給所から食料品を配給しています。しかし、この手法には問題がありました。配給の効率が悪く労働コストがかかりすぎること、そして配給所の近くに住む人々にしか支援の手を差し伸べられないことです。
より多くの人々を支援するためにはどうすればいいのでしょうか。
アリババグループとの協力で編み出したのが、オンラインモデルです。ネットショッピングと同様に、スマートフォンから支援物資を注文することができれば、より多くの人を手助けすることができます。また、プライドがあるので配給所を訪問できないという人でも利用できます。
タオバオにオープンした支援ショップ「緑州盛食社」の責任者を務める、上海緑州公益発展センターの李冰(リー・ビン)理事長は「一個の配給所がカバーできるのはせいぜい3キロメートル圏内でしたが、ECモデルでしたら全国隅々にまで支援することができます」と期待しています。
李理事長によると、支援する食糧の多くはスーパーや一部の食品メーカーから提供されています。今後はさらに支援企業が増えることを期待しています。タオバオやTモールで食品を販売する食品企業も賞味期限切れ間近の在庫を抱えているケースは少なくありませんが、どこかに寄贈したいと思っても今まではその相手を見つけるのが難しかったのです。
緑州盛食社とアリババグループは新たに「クラウド寄付」というモデルを開発しました。寄贈したい企業と支援機関とのマッチングを、インターネットを通じて行うことで、さらに規模を拡大することが期待できます。
甘粛省定西市臨洮県でネットショップ「朧百味特産」を経営する楊立青さんは「クラウド寄付」の制度を知り、活用した一人です。寄付を申し込んだ時点では実際に食料品を輸送する必要はありません。寄付された食品は、緑州盛食社のネットショップに並べられます。注文を受けると、通常のネットショッピングで注文を受けたのと同様に、楊さんの倉庫から直接消費者に送られます。いったんフードバンクに輸送、整理するといった手間が大幅に省けるので、支援者としても気軽に協力できるのです。
無料提供するからといって、おろそかにしてはならないのは食品安全です。緑州フードバンクはトレーサービリティー・システムを整備し、寄贈から入庫、配給にいたるまでの正確な記録を残しています。食品提供にあたっても、生産経営許可証や製造日及び賞味期限の確認を行うほか、従事者の健康確認や輸送時の衛生確認を徹底してきました。オンラインでも同レベルの確認を行うといいます。
「食品そのものについて言いますと、最低基準は賞味期限が切れていないこと、またパッケージが破れているなどの問題がないことも条件です。健康と安全を守って消費者に送り届けます」(李理事長)
「期限切れ間近」が新たなトレンドに
賞味期限切れ間近の食品は大量に発生しています。たとえばおやつだと、iiMedia Researchが発表した「臨期食品」に関する2020年のデータにより、中国スナック食品業界の市場規模は年3兆元(約51兆円*)。1%が売れ残るだけで、300億元(約5100億円)もの消費期限切れ間近の食品が出ることになります。
これらがフードバンクに活用されるようになれば、多くの人が救われます。興味深いことに、最近では、若い消費者の間で値引き販売されている消費期限切れ間近の食品を積極的に購入しようというトレンドが生まれています。
今年4月、タオバオと科普中国が共同で発表した「臨期食品」の豆知識によると、年に210万人もの消費者がタオバオを通じて賞味期限切れ間近の割引き食品を購入しています。販売されているのは賞味期限が当初の期限の20%~50%残っている状態の商品です。
以前ならばこうした食品は割引されても買いたくないという人が多かったのですが、最近の若者たちは「エコにも協力できるし、味は変わらないのに値段は安い」というお得感から支持しています。
*為替レートは1元=17円で計算。
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解説・翻訳協力:高口康太、編集:AlibabaNews 編集部
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