物流の力で中国奥地の農村を豊かに、貧困県支援に取り組む「菜鳥」
解説:
中国では「要想富先修路」(豊かになりたいのであれば、まず道を整備せよ)をスローガンに農村道路網の整備を進められてきました。秘境とも言うべき山村にまで道路がつながりつつある。インターネット回線のカバー率も高まっている。辺境でも整備が進むインフラをいかに活用して、人々の生活水準を高めるのか。アリババグループはネット販売と物流の切り口からこの課題に取り組んでいる。
農村振興を支える重要なインフラとして、宅配ネットワークが急成長しています。中国国家郵政局の最新発表によると、毎日3億件もの宅配荷物が配送されています。うち1億件は農村宛てです。増え続ける宅配物流需要をいかにカバーするべきか。アリババグループの物流プラットフォームである「菜鳥網絡(ツァイニャオ・ネットワーク、以下「菜鳥」)」も取り組みを続けています。
現在では中国全土1000カ所以上の県城(県の行政府所在地)に物流サービスを展開するにいたりました。うち70カ所は中国政府指定の農村振興重点支援県です。今後も展開を強化し、農村宅配ネットワークをさらに充実させていく方針です。
村に収入をもたらした宅配便
中国雲南省の怒江リス族自治州の貢山トールン族ヌー族自治県は、重点支援県の一つに指定されています。中国西南部に位置する、この地域にはチベットからミャンマーまで流れる大河「怒江」が流れています。切り立った山々の間を抜ける川の両岸にへばりつくように家々が連なっています。
貢山トールン族ヌー族自治県の県城から約100キロ離れたところにあるのが独龍郷龍元村です。険しい山道を抜けて県城から村までたどりつくのには、車でも4時間はかかる道のりです。こんな過酷な環境にあるため、130世帯あまり、500人以上の村民たちは村の外と行き来することが難しく、必要な物を手に入れることも困難でした。
「村人たちはみんな猟を仕事にしていました。たいして稼げず、普段は包殻飯(トウモロコシ粉と米を炊いた中国西南部の食事)と山菜しか食べられませんでした。白米だけを食べられるのは月に一度ぐらいでした」
村民の龍志強(リュウ・ジーチャン)さんが振り返った、かつての生活です。
山村の暮らしを大きく変えたのは物流の発展でした。独龍江公路という道路の整備とともに、菜鳥による農村物流が龍元村をカバーすることになりました。村民たちはネットショップで草果(ソウカ。ショウガ科の植物で中国医学の薬品原料に使われる)を販売することで収入を増やせるようになりました。今では独龍江地域全体の草果栽培面積は7万ムー(約4670ヘクタール)を超えています。
龍さん家族は20ムー(約1.3ヘクタール)以上の畑で草果を育てています。年に2500キログラムを収穫し、それにより2万元(約34万円*)あまりの収入が得られるようになりました。他にも中国医学の薬品原料や、珍味として知られるアミガサダケを栽培しており、世帯の年収は5万元(約85万円)近くにまで増えたといいます。物流が人々の生活を変えたのです。
貢山トールン族ヌー族自治県の菜鳥公共サービスステーションの阿普生(アー・プーション)ステーション長は、物流が農村の暮らしを変えたと話しています。
「菜鳥がここに進出してから、宅配貨物の取扱量は急増しています。5年前の100倍以上です。草果などの特産品をネットショッピングで販売するようになったためですが、衣料品や化粧品、家電などの購入も増えています。物流がこんなに便利になるなんて思いも寄らなかったと、村民たちは喜んでいますよ」
同じく農村振興重点支援県の一つが、中国陝西省の商洛市柞水県です。この県でも宅配ネットワークの整備が農民の生活改善に繋がっています。現地に駐在する物流専門家によると、菜鳥が宅配企業と共同で建設した配送センターは、1日に1万件もの宅配貨物を仕分けする能力を持ちます。柞水県の特産品はキクラゲです。収穫期ともなると、2日間の発送量は平常時の10カ月分にまで急増するだけに、ピークに合わせて配送センターの処理能力を強化することが不可欠なのです。
菜鳥の農村物流は中国全土1000カ所以上の県をカバーしています。ネットショッピングで購入した商品が農村まで届くようになり、また村の農作物が全国で販売されるようになりました。
農村に付加価値を残すために
中国には160カ所の農村振興重点支援県があります。菜鳥は今後もこれらの地域をカバーすべく、取り組みを続けていきます。県、その下位に位置する郷、さらにその下位に位置する村と、より基礎レベルの自治体を含んだ配送システムを構築し、宅配サービスを充実させ、どんな農村であっても自宅にまで荷物が届けられる目標に取り込んでいます。
同時に、農業の産業化を支援することも重大な役割です。菜鳥が広西チワン族自治区、陝西省、雲南省などの地域に、農作物のネット販売をサポートする総合物流センターを開設しました。年内にも新たな物流センターを建設する予定です。生産地に近い物流センターにおいて、農作物を品質ごとに分類することによって、より高い値段で販売できるようになりますし、きちんと分類、包装することでその後の輸送における損失を防ぎ、物流コストを削減します。農村により多くの付加価値を残し、農家の収入を増やす。そのための総合物流センターです。
*1元=17円の為替レートで計算。
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解説・翻訳協力:高口康太、編集:AlibabaNews 編集部
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