不確実性に備えるカギは「デジタル化」。日本法人・取締役の蔣微筱がハフポスト日本版の音声番組で解説【連載・第3回】
解説:
脱炭素を含めたSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みについて、アリババ株式会社・取締役の蔣微筱(ジャン・ウェイシャオ)が、ハフポスト日本版の記者・高橋史弥さんが主催しているポッドキャスト「ハフちゃいな」に出演して対談した連載企画。第3回は、アリババジャパンのこれからのビジョンがテーマです。コロナ禍など外部環境が大きく変化する中で、今後の持続的な発展のために、アリババ日本は今後何を重視して取り組んでいくのか。過去10年のインバウンドビジネスの変遷も振り返りながら、未来の姿を紐解いていきます。
入社当初の悔しさをバネに越境ECの立ち上げに携わる。時代は「爆買い」へ
私が入社した時は、ちょうど今の越境ECの前身にあたるビジネスがスタートした頃でした。中国の方の可処分所得が増え、海外の商品を買いたいというニーズがどんどん高まり始めた頃です。
日本にはいろんな商品があるので、良いサービス、良い商品を中国の消費者に知ってもらおうと、私たちは最初中国の個人消費者向けの越境ECサイトを立ち上げました。ただ、まだ物流や個人輸入の法制度が全く整っていなかったこともあり、実はそのビジネスは失敗してしまったんです。消費者のニーズがあるからどうにかしよう、というところで、売る場は立ち上がったのですが、その後ろの仕組みが整っていなかったがために途中で止まってしまいました。
最初に入社した時のビジネスが失敗してしまって、結構落ち込んでいたのですが、これが後の糧になりました。その3年後に、本格的な越境ECをスタートしました。もしかしたら皆さんもどこかで聞いたことのある、天猫国際(Tモール・グローバル)です。
中国の消費者のニーズがあり、今度は日本企業が非常に売りたいという気持ちが強い時代でした。どうしたらいいのか考え、3年ぐらいかけて仕組みの整備を推進し、天猫国際(Tモール・グローバル)を立ち上げることができました。
2014年~2015年頃に世の中が大きく変わりました。2015年1月、中国で訪日ビザの発給要件が緩和されて、多くの人が日本へ観光しに来るようになりました。まず東京に行き、大阪を巡って帰るというルートが人気でしたね。「爆買い」ということばが2015年の流行語大賞に選ばれたぐらいの盛り上がりで、やっぱり越境ECでも、日本のものを買いたいという中国の方が多かったです。
当時、越境ECで買いたいものは、わりと盲目的だったんです。なんとなく、こんなものが流行っているんだろうな、買いたいな、という選び方でした。実際にたくさんの人が日本に遊びにきて、実はこれだけじゃなかったんだ、もっとあらゆる選択肢があるんだ、と気づき、どんどん日本のことを知ることによって、越境ECで扱われる品目もどんどん増えていったんです。
「実はこういう使い方がある」「こういうところが良かった」といったように、日本を訪れた一人ひとりがKOL的な伝え方をしてくれたことによって、どんどん日本の商品が広まっていったんじゃないかなと思います。
多忙なインバウンド対応から、戦略とインフラ整備に注力するフェーズへ
爆買いのトレンドに乗って「とりあえず売りたいものを売る」になってしまっていたフェーズから、図らずも、「どのような商品を、どのような方法で売っていくか」についてじっくり膝を突き合わせて話すフェーズになった、というふうに感じております。プラス、もしアフターコロナで海外の消費者が来たときに、どういうふうに自分たちが商品やサービスを提供するか、実は皆さん、そのインフラを整えようとしています。今までは忙殺されて着手できていなかった部分ですね。そういった中で、私たちが今できることとして、中国あるいは他の海外の消費者のニーズを集めて、こういった企業さんに提供しています。
もう一つは、忘却防止です。日本を忘れないように、ライブ配信で日本のいろんなところを紹介する取り組みをしています。日本の商品を紹介することもあれば、いろんな地方の景色、名物を中国の消費者にライブで見てもらうこともあります。そのライブ配信を見ると、「コロナが落ち着いたらぜひ日本に行きたい」という声を絶対見かけるんですね。忘却防止をしながら、消費者が何を求めているか、その間に立ってコミュニケーションを手伝う。これが今、私たちが取り組んでいることですね。
今まで忙しくて越境ECに取り組めなかった企業さんも、コロナ後に来るお客さんが、オフラインの店舗でも買えて、帰国してからオンラインでも買えるような、O2O的な(オンラインストアとオフラインの実店舗を融合した)取り組みを結構考え始めています。インバウンドで忙殺されていた担当の方が、社内でEC担当の方と連携をとって、日本に観光客が帰ってきた時、店舗に来て商品を買っていただいて、帰ってからもオンラインの売り場で買えるような仕組みを作り始めているんです。今だと例えば、ミニアプリ(モバイル決済アプリ「アリペイ」上で動作する簡易アプリ)で販売できる仕組み作りですね。デジタル化がこのインバウンドビジネスの中でも進んでいる証拠だなと思います。
お客様やパートナーとのWin-Winな取り組みこそが、本質的な価値を生む
1企業としては、やはり、いかに我々のお客様やパートナーとWin-Winなことに取り組めるかが重要だと思っています。コロナ禍の逆境の中でも、諦めずに頑張っている日本企業に対して、私たちはさまざまなノウハウを提供しています。あるいは、さきほど申し上げたような、日本企業を忘れないでね、コロナが終わったら日本に戻ってきてね、という忘却防止の取り組みをしております。そういうところで、やはり私たちは、お客様から評価いただいていますし、それが逆風の中でも誇りを持ってできることだと思いますので、あまり意識することはないですね。
不確実性がどんどん深まっていくこれからの世界では、それに伴う、デジタル化もどんどん進化していくと思います。不確実性に打ち勝つには、デジタル化というのはやはり一番の武器です。デジタル化によって、日本企業が海外の消費者にアプローチしやすくなる。その点は、マクロ環境が変わっても、恐らく変化はないのではないでしょうか。
日本の社会から尊敬されるような会社を目指したい
私たちが日本法人を立ち上げた時、創業者のジャック・マーからは、日本の社会から尊敬されるような会社になっていきなさいと言われました。それをモットーに、少しでも良き会社であることを目標に、努力していきたいなと思います。
※ジャンさんを取材いただいたポッドキャスト『ハフちゃいな』第93回はこちらをクリックしてご視聴いただけます。
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出典:ハフポスト日本版「ハフちゃいな」第93回「中国政府の規制強化で不安も…アリババ、今後大丈夫?」
取材:ハフポスト日本版ニュースエディター・高橋 史弥
記事編集:アリババニュース
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